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ベトナム人経営者のレベルアップは着々と

先週、ベトナムで行われた経営塾10周年記念式典に担当講師として出席してきました。この経営塾は以前からブログで紹介していますが、JICAのODAにおける技術援助の一つとして10年前から続けられている経営人材の育成塾の取組みです。

ODAには円借款や無償供与などを通じてインフラ整備事業への貢献の他に、技術援助分野におけるボランティア人材や、専門家の派遣などソフト面のノウハウ支援も大きな柱となっております。特に、発展途上国においては人材育成協力が重要であり、いくら道路、港湾、鉄道、エネルギーなどのインフラ整備支援を行っても、それらの運営を現地で続けていくためのノウハウ移転とともに人材育成が欠かせません。産業発展の貢献のためには、エンジニア育成を含めた技術移転だけでなく経営人材の育成が成功のカギとなります。

日本にとってのODA支援ではベトナムは最大の援助国となっています。いくらODA支援をおこなっても感謝どころか、そんな支援があったことを一切国民に知らせず、常に歴史問題で金をせびり取とろうとする国もあるのですが、ベトナム人は感謝の気持ちを表現するのがストレートで、かつ表彰や式典などセレモニーを通じて相手側との関係性を発展させることに非常に長けているともいえます。一方、日本人は感謝をされるとまた何かしてあげたいと思う国民性があります。そう感情を表に出さない日本人ですが、ベトナムが大好きになる人が多いのも頷ける点でもあります。

10年続く経営人材育成支援は着実に経営力を発展させている

私自身は、縁あって前職を早期退職してコンサルティング事業を立ち上げてすぐに、この経営塾の講師をさせていただくようになり、既に今年で6年目になります。この経営塾はベトナムに赴任した年から始まり、当時から現地進出の日本企業として協力してきたため、立ち上がり時期からずっと関わっていたものです。

当初は1年に二十数名の塾生を募集して細々とスタートしたのですが、ベトナムのローカル企業の経営者層に対する日本式経営のノウハウを伝えていくという主旨で、経営理念の実践から経営戦略、人事戦略、マーケティング、財務会計、生産管理、ビジネスプランをそれぞれ1セッションを一週間単位でほぼ月一回集合研修を行い、その後日本研修での企業訪問とビジネスマッチングまで組まれ、全体でほぼ10か月間にわたるものとなっています。

その後経営者人材の育成実践の成功評価が徐々に高まるとともに、ベトナム国内での塾生応募増とともにクラス数も増え、ベトナムでは現在ハノイ2クラス、ホーチミン1クラス、ハイフォン1クラスの4つのクラスが平行して進められています。

この成功が評判になり、同様の経営人材育成ニーズが周辺国でも求められ、実際ラオスやミャンマーなどでも経営塾に近いODAプロジェクトが実施されるようになりました。

ベトナムの経営塾卒業生は既に600名を超え、経営者としての基礎を学んだ彼らは、率先してコミュニティの拡大に取り組み、経営力の強化実践活動をベトナム全国に広げています。その結果、経営塾卒業生企業間で新たなビジネス連携が広がったり、継続的な経営の学びを実践するなど、ベトナム企業の経営レベルアップへの成果につながっています。

担当講師としても、現行クラスでの授業を行うだけでなく、卒業生に対するフォローアップセミナーなどを求められる機会が増えてきました。今後はますますベトナム国外に打ってでる企業戦略の実践や、日本企業とのマッチングに向けた期待がさらに高まってくるものと思われます。

この10周年記念式典は、支援を継続してきたJICAや主体実施部門であるVJCC(ベトナム日本人材協力センター)などの関係先、講師に対する感謝を表す盛大なセレモニーとなり、今後も支援継続を期待されているのがヒシヒシと伝わってきました。ただ、やはりいずれはこのプロジェクトも卒業していくべきであるとの思いも持ちました。出口のないODAというものはありえないと思います。散々巨額なODAを実施してきた中国も既に終わっています(感謝されているのかどうかは別にして)。経営者人材も育ち、産業として立派に独り立ちできるゴールはもうすぐ視野に入ってくると思いますし、日本国民の貴重な税金を海外発展途上国の援助に使う限りは、そのリターンが目に見えるものにするべきです。幸いにもベトナムへのODAは成果と効果という点では世界の中では突出していると思います。しかし、いくら感謝されこそすれ、続けることだけを目的化するべきではありません。

いずれベトナムの企業自身が自立し、発展途上国に経営を支援できる役割を果たしてもらえるようになる姿を夢見ています。