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優秀人材の定義とは

ベトナムの企業経営者と交流を続けておりますと共通した経営課題が浮かんできます。もちろん商品の顧客価値の優位性や販売マーケティング実践、生産性を最大化するマネジメントの優劣が競争力差別化につながっているのは当然ではありますが、共通した課題というのが、経営者や従業員等人材の能力と実践力をいかに高めていくかということです。発展途上にあり人材採用競争が激しくなっている昨今、退職率が高い状況の中でいかにして人材確保と育成を進めていくべきかについて共通して悩んでいる経営者が多いのです。

どんな企業であれ優秀な人材を採用して経営力強化につなげたいと考えているのは当然です。経営資源の源泉であるヒト、モノ、カネ、ノウハウのうち、ヒト以外はある程度数字面で評価することができ、原因と結果の関連性は想定外となることは稀です。

しかしヒトに関しては、どんなに高学歴で優秀(と思われる)人材を面接でふるいにかけて採用したとしても、その人材が期待された成果を出すとは必ずしも保証されていません。高い給料とパフォーマンスは必ずしも連動していません。高学歴でない社員でも会社にとってなくてはならない人材がたくさんいます。その意味で会社にとって、どう優秀な人材を採用して、さらに育成してより高いレベルの仕事で結果を出す人材を確保できるかという人事マネジメントは最重要の経営課題です。

さらに人材の能力とパフォーマンスは会社の組織力にも直結する差別優位性の根幹になります。特に中間マネジメント層の確保・育成に失敗すると、人材が流出することで組織全体が弱体化していきます。まして物価の上昇に伴い給与レベルが上がっていくということは、人材の流動性が高まることを意味します。人材が短期間で退職が相次ぐと、補充のための採用コストが上がりますし、教育訓練のコストも高まるだけでなく、組織全体の生産性が落ちていくのは間違いありません。退職した人材の補充をしても同じ人件費で能力のレベルを維持することは至難の業です。

できる限り優秀な人材を確保し、育成して高レベルの業務遂行能力を高め、極力長期間でそう高くない給与で雇用し続け、次世代の人材育成に貢献してもらうということが理想的ですが、実際にはそういった人材はどこからも引く手あまたになる時代になってきたように思います。

スキルの高い人材の要件

一般にスキルの高い人材とはどのように定義されるでしょうか。優秀な人材とは、単に知識レベルが高いとか学歴や資格といった、いわゆる「スキル」として可視化できる部分だけでは定義することはできません。

学校でオール5でテストで満点ばかり取って有名進学校に合格する生徒は、一般には頭の良い優秀な子として見られます。しかし実業の世界での「スキル」とは直結していません。私はこの知識レベルの「スキル」は、知識の「幅」と「深さ」で定義されると考えています。中にはどんな専門分野のことでもものすごく深い知識を有している人もいないわけではありません。

一般には高いスキルをもって使える人材というのは、特定分野で他人より深い専門知識を有する人材であることが普通です。何でもある程度物知りであったとしても知識の底が浅い人材というのは決して優秀とは見なされることはないでしょう。

このように知識レベルのスキルは「幅」と「深さ」の2軸である程度定量化できて「深さ」の方がよりスキルを評価されるのですが、実際にはここに「時間軸」の要素が加わります。いくら2軸で高スキルを持っていても、実際のパフォーマンスの生産性、つまり単位時間で実践できる量と質のレベルが問われます。いわゆる「スピード」の時間軸は、「幅」や「深さ」といった知識スキルよりも重要な評価軸と言えると思います。これら三次元のスキルでのアウトプット能力を持っていて、「スピード」>「深さ」>「幅」でどれだけ高いレベルの仕事をこなせるかが高スキル人材の要件だと思っています。

高いスキルだけでは優秀な人材とはいえない

3軸による高スキルは、「幅」X「深さ」X「スピード」による掛け算で求められる三次元体積を60点なり85点や100点など絶対値で数値化によって評価できます。しかし人材が優秀かどうかの価値は数値化されたスキルと同じではないのが厄介なところです。

投資した設備や製造した商品の価値は、ほぼ見通し通りの結果が期待できます。ところが人というのはいくら100点のスキル人材であったとしても、実際の人材の価値を算出するには、そのスキル点数に「モチベーション係数」を掛ける必要があります。

100のスキルを持っている人材が100のアウトプットを出すことができるときのモチベーションを1の掛け算係数とします。しかし、実際に仕事の結果として、50のスキルしかない人でもモチベーションが高いと、100や150の実績を達成することが往々にしてあります。モチベーション係数が普通の社員より2倍や3倍となることはよくあることです。

逆に0.5であったり0という低いモチベーションによって、100のスキルがあるのに50や0の結果しか残せない人も多くいくわけです。もちろん結果が高い実績ほど優秀な人材ということになります。

また、モチベーション係数は0が最低というのではありません。最大の問題はマイナス係数のモチベーションの場合には、その人が組織内にいるだけで、組織全体のパフォーマンスをマイナスに引きずり落とす危険性があります。

したがって人を採用、育成するときに、最も重要なのは本人のやる気、つまりモチベーションであるということを強く理解しておく必要があります。まして周囲に害を及ぼすマイナスのモチベーションを持った人材は決して採用してはならないことが重要です。

モチベーションは動機付け次第

したがって、優秀人材を採用育成するには、「知識の幅」>「知識の深さ」>「スピード」>「モチベーション」という公式が浮かんできますが、モチベーションが最も重要としても、間違ってはいけないのは、モチベーションは決して本人に元々備わった能力ではないといことです。

モチベーションは周囲からの影響によって、マイナスからプラスまで変化する係数であり、この係数は周囲からの動機付けが要因となるのであって、その周囲からの動機付けが自分化された動機付けになって初めて高いモチベーションをもった優秀人材として成長していくものだと考えるのです。

経営には人が最も重要だというのは誰もが気づいています。しかし優秀な人材を確保するにあたって、最も効果的な方法は組織としての従業員一人ひとりに対する動機付けをいかにして行うかにかかっているのではないでしょうか。

動機付けなしにモチベーションを高く持たせるのはまず無理です。そしてモチベーションが高くならなくては、どんなスキルの高い人材でも実績を上げることは不可能です。

昨今のビッグなんちゃらという中古車販売事業経営者の不正を見て改めて思い返しています。