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中国リスクが企業存亡の危機に陥る自覚を

「日本と中国は切っても切れない関係」・・言い古された言葉です。経済界においても日中友好による経済関係のさらなる発展こそが国益と企業経営に資すると信じて疑わない親中意識の塊のような経営者がまだまだ多いと思います。しかし中国は今や制御不能な「ドラえもんのジャイアン」どころか「進撃の巨人」に変貌してしまい、グローバル世界の最大の不安定要因になったという認識が必要です。

私は独立以前の会社勤務時代には中国事業にも深く関わっていました。中国に事業会社をどんどん展開し、製造・販売で事業拡大することで中国の産業発展に寄与していたという実感がありました。ところが外資との合弁事業で取り込んだ外資の技術や経営ノウハウを武器に、自国の経済発展とともに世界への影響で自信を持ち始めたのが2000年に入ってからで、さらに日本のGDPを抜き去って米国に次いで2位になった2010年ごろから一気に態度が傲慢になってきたように感じます。

まさに2010年あたりが良い意味でも悪い意味でも、世界の政治経済情勢における中国の存在価値が激変するターニングポイントであったように思います。尖閣での中国漁船衝突事件があったのが2010年であり、その後尖閣諸島の国有化をきっかけに中国で反日暴動が起きたのが2012年でした。

当初世界の工場として猫も杓子も中国に進出していた日本企業でしたが、反日暴動を機に中国リスクが認識されるようになりました。かつ中国の人件費が急上昇する段階となり、採算性の点でも中国一辺倒では危ないという認識が広がっていきました。その結果、「チャイナプラスワン」の動きが出始めました。当時も今も中国から法人を撤退することは大変困難です。よって戦略の一つとして中国での事業を徐々に中国国内市場向けの生産販売にシフトさせ、日本持ち帰りや欧米への輸出のために新たに東南アジアでもう一拠点設立するという動きが「チャイナプラスワン」でした。

中国リスクが顕著となったサプライチェーン

チャイナプラスワンの動きによって、ベトナムやタイ、インドネシア、マレーシア等の東南アジアでの事業展開が加速を始めます。中国リスクは日本企業のみに影響が出たというものではありません。中国政府の態度はあらゆる諸外国にも居丈高になっていきました。中国に進出している外国企業に対する締め付けも露骨になり、それだけにとどまらず中国IT地場企業の首まで締め上げてしまうとうように、極めて政治的目的で経済活動を左右するようになりました。

国の発展に自信を持つのは結構なのですが、全て自分たちが世界政治や経済を牛耳る意図を隠さない国で事業を行うリスクは危険な領域になってきたと思います。

さらに米中対立とコロナの影響によって、明白となったサプライチェーンにおけるリスクに真剣に向き合う中国事業戦略の見直しは今や待ったなしの状況と言えます。特に製造業においては、原材料の調達から商品企画設計、部品加工、製品組み立て、物流、販売チャネルまで、一つの企業で自己完結できる企業は全く存在しません。さらに一か国の事業展開で全て完結できることもありません。

たとえ顧客が日本国内のみを対象にした事業であったとしても、海外のサプライチェーンと関係なしに成立する事業はありえません。しかもいくらデカップリングで脱中国でリスクを軽減しようとしても、中国が一切関与しないサプライチェーンも現実的とはいえないところです。

実際、西側諸国が半導体等で中国に圧力をかけていくと、中国産比率の高いレアアースの輸出規制で報復をかけてくるという政治的リスクはさらに先鋭化しつつあります。

中国リスクに真剣に向き合う覚悟と海外事業経営の方向性

既に日本の大企業の中にはリスク対応のために中国事業から撤退する動きが出てきています。また、日本政府も「サプライチェーンの強靭化」という政策を進める名目で、国内生産回帰に補助金を支給するようになっています。表向きには明言していませんが、「サプライチェーンの強靭化」というのは「脱中国化」と同義語です。

つまり日本政府も企業に対して「早く中国から撤退して日本に戻ってこい!」「マスクの問題のように中国生産に依存した事業を見直し、日本生産か中国以外に分散最適化せよ!」と要望しているのです。

昨年、日本の複合機メーカーを対象に、中国での事業は製造だけでなく技術開発機能まで中国で行うことを義務化すると要求してきました。複合機は中国メーカーと比べて技術的にも市場占有率的にも日本企業が優位であり、ここに組み込まれている技術は喉から手が出るほどほしいのです。技術をパクるために中国市場で儲けたいなら技術開発を中国で行うよう露骨な要求をするのが中国政府の意図です。

そこで日本企業がどう対応するかですが、既にCANONやリコー、京セラ、富士フィルム系の企業は相次いで中国から撤退し東南アジア拠点への移管を決めています。

重要技術流出を阻止しないとますます競争力は落ちますし、巨大な中国市場を餌に技術を手に入れようとする卑劣な手段はもはや通用しなくなっています。複合機だけでなく光学分野のカメラ関連事業でもSONYやNIKONも中国から撤退する方向ですし、エアコンのダイキンや住設建材のTOTO、自動車のスズキなども大手を中心に中国に見切りをつけている傾向が伺えます。

このような状況にあっても、今だ中国で最先端技術を移管して事業をやろうとする恥ずかしい大手企業がいることは大変残念です。この中国リスクは台湾や尖閣等政治経済的な問題だけではなく、改正反スパイ法の施行によって、駐在員や出張者が理由もなく拘束されることが現実的リスクとなっています。不動産の不良債権や銀行経営の破綻懸念から中国国内の経済が崩壊する懸念もある中で、日本企業として何のリスク分析と対策を立てることなく、相も変わらず中国にのめり込む日本人経営者がいること自体が信じられないのです。