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オンラインで変わった研修の進め方

 

海外展開支援をメインの事業としているにもかかわらず、この2年ほどコロナの影響で全く海外に出張できていません。海外と日本企業をつなぎ、人と人との信頼関係からお役立ちを提供する立場としては大変苦しい状況です。

この2年でコミュニケーションのあり方も大きく変化しました。フェイス・トウ・フェイスの対面を通じてやり取りすることから、交わす言葉だけでなく、雰囲気や場の空気感から相手の気持ちを察したコミュニケーションから、オンラインを通じていかに双方向の関係性を作り上げることができるかに力点が変わりました。

そこで求められるスキルも自ずから変わります。ZOOMオンラインでセミナーや講義を行う場合、基本的なITスキルが必要なのは言うまでもありませんが、リアルのコミュニケーションのやり方では通用しないことも多々あります。

今まで営業社員としてトップセールスの成績を上げていたとしても、この2年間コロナの感染リスクを避けるために、顧客からは不要不急の営業の訪問は断られ、全く売上を上げられないお荷物の営業社員になってしまった例をたくさんあります。一方、今までうだつの上がらない営業社員が、リモートの環境に変わった途端、的確な情報をタイムリーに発信し、SNSを活用して多くの潜在顧客と双方向の関係性を作り上げたということも聞きます。その結果どんどん指名で情報を求められる存在として信頼感が高まり、営業成績がダントツになったというのはよくある事例です。

つまりリモートが当たり前の時代に変化し、営業に求められる能力もコミュニケーションのあり方も根底から変わってしまったのです。

オンライン研修で試行錯誤

独立開業して7年以上になりますが、中小企業の海外展開支援に加えてベトナム企業の経営者を対象とした経営研修講師の仕事も継続しています。ただ、この2年は事実上海外に業務出張ができないため、やむを得ずほとんどをオンライン講座に対応しなければなりませんでした。

ある程度のオンライン対応のスキルがあることから、Zoomオンライン対応も問題なく導入はしました。でも、やはり違うのです。進め方を変えていかないといけません。対面型研修と同じスタンスで対応すると満足度は下がってしまいます。

いろいろと試行錯誤し苦労した点を振り返ることで、オンライン時代の研修講師のコツというものが見えてきました。

日本での企業研修もそうですが、大学の講義のような知識付与型の講義スタイルでは成果には結びつきません。ある程度の形式知化されたノウハウを伝え、それを個人ワークやグループワークを通じて体験からの気づきを得て、それを繰り返すことで暗黙知のスキルとしてDNA化できるところまで完結するやり方が一番効果が出るように思います。

ところがオンラインではこのやり方がなかなか通用しません。

まず海外とのオンライン研修には二通りのやり方があって、講師はZOOMで接続して講義を行い、現地の受講者側は教室で集団受講するというやり方が一つ。これは講師が渡航できない制約に対応する方法です。もう一つのやり方は完全ZOOMのオンライン、つまり受講者側も全員一人ずつ個別にオンライン接続するやり方です。これはバーチャル集合研修としてサイバーでグループディスカッションを行う必要があります。

最初の受講者側が集合しているケースですが、講師として一番苦労するのは受講者側の雰囲気がわからないことです。だいたい一つのカメラでロングで全体を引いて写しているので、講師にとっては一人一人の表情がわかりません。資料を共有しているときは、なおさらビデオは小さい画面になるのでほとんど読み取れません。生の講義であれば、説明がわからなかったり疑問に感じたときには、受講者の表情を見るだけで臨機応変に補足説明をしたり、逆質問を投げかけたりすることで双方向のやり取りが成立します。ところがオンラインではこれが大変難しいのです。受講者側が外国人であるとなおさらです。

ブレイクアウトルームの機能を使ってグループディスカッションをしてもらうときなどは、受講側でテーブルごとにZOOMをつなぐと、ハウリングがどうしても起きてしまいます。講師が各グループの議論に入っていくことはかなり難しいのです。

一方、完全ZOOMのやり方で研修を行う場合の問題は、参加者一人ひとりのモチベーションを維持するのに苦労することです。ブレイクアウトルームを順番に回っていくのにも限界がありますし、停滞しているグループにすぐに声掛けをして関心を維持するのも大変です。適当にグループ間をザッピングする参加者もいたり、ビデオをオンにしないで適当に参加している人の制御も難しいのです。

これは日本人相手では有効ではないかも知れませんが、ベトナム人相手の研修では、ベトナム人は一般的に議論が大好きだということを念頭に置いて研修の組み立てを考えた方が良いと思っています。個人ワークやグループワークをさせるということはあまりモチベーションがあがりません。むしろケーススタディなどで具体事例を題材にして、「こういうケースではどのような対応が一番適切か、皆さんの意見を自由に出してほしい」と求めると積極的に様々な意見を出してきます。

グループディスカッションをさせずに、いきなり全体ディスカッションでの自由討議に持ってくるのです。確かに議論の方向はあちこちに飛びまくります。しかしそれを講師一人が受けて、講師対受講者全員で議論を行うのです。受講生は講師の考えや意見を聞きたがっており、決してテキストを一方的に解説するスキル付与では満足していないのはアンケートから浮かび上がった実像です。

最近の講義テーマとしてDXを取り上げたものを行っています。私はDXの専門家ではありませんし、AIやIoTのテクノロジースキルに長けているわけではありません。しかし、講義ではデジタル化といった事業環境の変化が企業経営にどういうインパクトがあるのか、その変化に対して企業はどう対応していくべきか、できないと企業は果たして存続できるのか、といった観点で思い切って課題提起を行います。

この講座は3時間を1コマとして2コマ系6時間の内容で組み立てていますが、テキストの説明だけでは2時間半ぐらいのボリュームしかありませんので、当初は個人ワークやグループワークのコンテンツを組み入れていました。しかし、ZOOMでも感じられた受講者の教室での雰囲気を最大限受けとめ、思い切って議論の時間を半分近く確保するよう現場で切り替えました。

これによって本当に様々な意見が飛び出しました。「先生のいうDXの世界は、ベトナムではそんなに最先端のニーズがあるとは思えない」といった意見から、「今のままでは企業の存在意義にも関わる。これから今の事業をどう革新したら良いのかアドバイスがほしい」までいろいろでした。この課題認識を持ってもらえることが研修成果そのものだと思うのです。

日本と海外の違いも確かにありますが、ビフォーコロナとアフターコロナでのコミュケーションのあり方の違い、これも極めて本質をついた変化だと思っています。