子供たちに社会実践教育を行うのは企業の責任
先日、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀スペシャル」を見て、改めて次世代を担う子供たちへの実践教育の重要性を考えさせられました。
今回の番組では、以前プロフェッショナルとして紹介された仕事のプロが子どもたち集めて子ども大学を開講し、「仕事とは何か?勉強は何のためにするのか」を学び取っていく様子が描かれていました。第一回目として「ものづくり」をテーマに、スナック菓子メーカーの伝説のヒットメーカーとして紹介された社長が講師となって、小学生に「ヒット商品を開発せよ」という課題を与え、一か月で商品開発をするというものでした。自分が作りたい菓子を企画し、それを会社の新商品戦略会議でプレゼンして採択されたものが実際に開発されるという、まさに実業そのもので小学生に仕事の意味を考え体験させるものでした。
最初は、小学生の多くは自信満々に商品アイデアを発表していくのですが、実際には都合の良い情報を、自分の頭で考えた割には受け売りであったり、人から聞いたアイデアを単にコピペしていることに自分で気づいていないことを「自分にウソをついていないか」とプロから指摘されて悩みに悩んでいく様子や、プレゼンで採択されなかった子どもたちが人生初めてといってもよいほどの挫折を味わい、採択された子も泣きながら考え抜くことから一つずつ成長していく姿に感銘を受けました。その過程で褒められ、否定され、そして今までの経験をアイデアに変えていく、行動が変わることで、モノづくりとは商品に熱い思いの本心を込め、お客様にいかに伝えていくかがヒットの極意だと学んでいくのです。
その悩みの過程を通じ、自分がどうなりたいのか、どうやって仕事をしながら生きていきたいのかに目覚めていくのです。今まで、情報にあふれた中で生きてきて、表面だけでわかった気になっていた自分に気づきます。仕事とは熱い心が動くかどうか、これにかかっている、それを学んだ小学生たちは、一か月前とは格段に違う姿、今後の人生に自信が芽生えた姿が画面を通じてひしひしと伝わってきた非常に良い番組でした。
これは伝説のヒットメーカーと言われた素晴らしい経営者だから、そこまで小学生に感動を与えることができたのかも知れません。しかし、子供たちに生きる力を伝授するのは今の大人全員の責任です。学校に行かせておけば良いというものではありません。自分自身反省するべき点も多いのですが、企業に勤めている一般のサラリーマンであろうと、会社経営者であろうと、もっと次世代を担う子供たちに「いかに生きていくのか?仕事とは何か?何のために勉強するのか?」といった実践教育を先頭に立って行うべきであろうと思うのです。
企業も事業をやって利益を上げ、税金を納めるだけでは社会的責任を果たしているとはいえません。もっと次世代教育を企業の社会的責任として力を入れるべきではないでしょうか。メーカーであれば積極的に企業を地域社会に開放し、子供たちにモノづくりの神髄を伝え、働くことの意味を考えてもらう授業や社会貢献活動を行うべきですし、サービス業でも職業体験や奉仕活動などを通じて子供たちとの接触が大事ではないでしょうか。環境貢献企業とホームページでPRしている割には、一切地域社会や子供たちに環境の重要性と具体的取組みを伝えていないところも多いですし、環境教育を子供たちに提供したこともないという企業がほとんどではないでしょうか。
私が住んでいる市では、「トライやるウィーク」という体験教育が全市立中学校で実施されています。まさに一週間の職業体験を市内の事業所や公的機関に行って全員が体験するのですが、これは非常に良い取り組みだと思います。受け入れる企業も大変ですが、皆さんは地域の子供たちのためと非常に協力的にサポートしていただいています。ただ、地元にはあまり大企業がないことから、大々的に大企業が参画しているというのは聞いたことがありません。これに参加する以外にも、いろんな形で子供たちに職業体験してもらう方法はあると思います。その意味で、大企業は人材だけはがさっと採用する割には、教育には自ら貢献する活動はあまり目立ちませんね。お金を出せばよいというものではありません。もっと次世代の人材創出と社会教育に自らプログラムを立案し実践することが重要ではないでしょうか。