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働き方改革法の成立で迫られる生産性改革の取組み

先月、ようやく働き方改革関連法が成立しました。私はこの「働き方改革」が叫ばれるようになってずっと違和感を覚えていました。少子化が加速化している今、このような多様な働き方改革で本当に日本は発展していくのだろうかと疑問に感じ、特に一番不思議に思ったのは、働き方という言葉には、労働力の投入の仕方にしか視点はなく、アウトプットの効率性などはほとんど欠けていたことです。

今回の働き方改革関連法は、三つの柱から成り立っています。①残業時間の上限規制、②正社員と非正規の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」、③高収入の一部の専門職を労働時間の規制から外す「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」です。確かに、今までの労働慣行から大きな転換点となるのは間違いありません。

政府は「改革を通じて生産性の向上につながる。一人ひとりが実情に応じた多様な働き方ができる社会が実現する」と言っていますが、果たしてこの改革で労働アウトプットである生産量の増大は見込めるのか甚だ疑問です。労働力のインプット量が減少すると、一人ひとりの生産性が増大しないとその分のアウトプット量は確実に減ります。マクロ経済の視点では日本のGDPのマイナス成長を避けることができなくなります。

 残業時間の上限規制は過労死問題からやらざるを得ない課題ですし、同一労働同一賃金についても非正規社員が70%を超える今、労働成果の分配の公平性からも社会問題として取り組まねばならないと思います。しかし、この二つの取組みは、労働力インプット量が減るのは避けられず、その成果として、一人あたりの収入は減少してしまいます。事実、昨年から残業規制の取組みが進むにつれて家庭ごとの残業代見合い収入が減少しており、その金額は5兆円とも8兆円とも言われています。間違いなく収入は減るので消費に影響がでます。

また、同一労働同一賃金の取組みは大きな落とし穴があります。非正規社員が正社員並みの待遇を享受するというような甘いものではありません。おそらく正社員の数をさらに減らすことによって、あらゆる仕事が労働ごとに細分化されて非正規化するのではないかと思います。行きつくところは一人ひとりが個人事業主となり、仕事単位に個人への請負契約となる世界が来るのではないでしょうか。つまり正社員の非正規化で労働契約でなく請負契約となるのです。そんな馬鹿なと思われるでしょうが、実際多くの仕事は専門分野ごとにアウトソーシング化されており、経営の中枢の仕事であっても、クラウドソーシングや外部コンサルティングの活用が加速している時代の変化を感じるべきです。

これからは生産性改革重視の経営

働き方改革によってインプットされる労働力が減少し、かつ専門細分化された非正規労働とアウトソーシング化が進むことによって、今後求められる労働価値は着実に労働力のインプットではなく、そのアウトプット効率である生産性改革にシフトしていきます。

この生産性改革を成し遂げられない企業は衰退していくのは避けられません。まず人は集まらない、集まった人も短時間の非正規社員しかおらず長時間労働もさせられない、人がいないからアウトソーシング活用の優劣でアウトプットの量や質、つまり競争力が決まってくる、そういった事業環境でどうやって成長を実現していけば良いのでしょうか。

つまり「生産性改革」しか道はないのです。その生産性改革に企業はどこまで真剣に取り組んでいるのでしょうか。現場では必死になって残業規制ばかりやっています。とにかく人事部門や現場の上司は、「残業せずに早く帰れ」としかいいません。労働時間量ではなく、アウトプットのスピードと質と量を上げる働きぶりを改革せよとまでは言わないのです。しかし、これは非常に大事なのです。事業の生産性改革なしには衰退しかありません。

この生産性を高めるには二つのに方法しかありません。

一つは、一人ひとりの働き効率を上げることです。限られた労働時間で最大の成果を出すことを労働の評価する改革が求められます。いかに短時間で最大、最良の成果を上げられたか、、一定の成果を成し遂げるためにいかに短時間で実現できたか、こういった働きと成果の関係から生産性を極大化する人事評価と報酬を連動させていくことがより重要になってきます。

もう一つは、労働投入量に対して最大の付加価値を実現する事業を行うことです。日本人は生産性では先進7カ国の間ではずっと最低であり、OECD加盟国の中でも中位以下です。過労死を招くまで必死になって働いているのに何故そんなに生産性が低いかと言えば、貴重な労働力を付加価値を生む事業に投入できていないことに尽きます。特に日本の大企業は、優秀な人材を儲からない事業に投入したり、窓際に追いやって有効に活用できていないところが多いのです。社会全体で税金を投入して教育してきた優秀な人材を浪費していると言っても過言ではありません。

これからは人材を社会全体で無駄なく活用できる経済構造に転換するために、働き方改革よりもむしろ生産性改革は待ったなしという気がしてなりません。