補助金採択実績をやたらと誇る支援機関は信頼できる?
昨年から始まった事業再構築補助金の他にも、ものづくり補助金やIT補助金、小規模事業者持続化補助金など様々な補助金制度が運用されています。補助金は給付金や支援金とは異なり、要件さえ揃えればおカネが国からもらえるというものではありません。
国の政策の方向性に沿った事業を行う企業を支援するのが補助金です。ところが企業経営者の中にはあまり深く考えていない方もおられます。国からおカネが出る補助金なら借入金のように返済する必要もないので、新たな設備を買ったり新たな工場を建てたりする資金を確保できればラッキーというような安易な姿勢で補助金申請をされる経営者が残念ながらおられます。
そういう経営者はだいたい自ら事業計画を策定するスキルやマインドも弱いのが一般的であるため、だいたい経営革新等支援機関やコンサルタントに事業計画策定の支援が必須となります。補助金申請書類の審査にはだいたい中小企業診断士などの専門家が担当することが多いので、だいたい支援機関やコンサルタントもどのような事業計画のまとめ方をしたら採択されやすいかをわかっています。
そこで支援機関やコンサルタントが事業計画策定を支援して採択されたときにはいくらかの成功報酬を得ることになるわけですが、事業再構築補助金などは案件によっては補助金額が数千万円に達する場合もあり、報酬として何百万も稼いでいる人もいるようです。しかし中小企業庁自身も高すぎる成功報酬には批判をしていますし、申請書類でも支援機関への報酬額の申告も求められているようです。
どのぐらいの額が支援対価に相応しいのかについてはいろんなご意見があろうかと思います。しかし実際にあのボリュームの事業計画をまとめ、採択可能性を最大限にするための支援を行うには、支援機関もヒアリングから事業計画書の構成企画、文章のブラッシュアップに相当の労力と時間を要します。おそらく一件の申請支援を真剣に取り組むには数十時間の労力がかかるのではないでしょうか。
ただ一方でこの補助金申請をコンサルティングの本業として取り組んでいる専門家も多いです。ネット広告や動画配信もバンバン行って、いかに多くの採択実績があるか、採択率は9割以上を達成とかを強調して、新たな補助金支援案件を獲得することに血眼になっておられます。
でも私は何かおかしいのではないかと思うのです。
中小企業庁が高額の成功報酬を批判しているのも何となくわかるような気がします。補助金はけっして採択されることがゴールではないからです。補助金を活用して企業が成長発展する最後まで支援することが本来の支援機関でありコンサルタントのあるべき姿ではないかと思うのです。採択された案件が数千万で実際に報酬が何百万を成功報酬として得るのはどうなのでしょうか。
補助金の採択はスタートライン
補助金を採択されて成功報酬を得られるのですから、支援機関やコンサルタントは当然それを目標にしています。しかし企業経営者も支援機関も大きな誤解をしているのは、採択された時点で申請した補助金が貰えることが確定したと思い込んでいる点です。
給付金や支援金は資格要件だけの審査ですから、審査がパスした時点で給付額は確定します。しかし補助金は全く違います。いくら申請が採択されたとしても、その申請金額が確定したわけではありません。採択を審査する書類審査員はあくまで事業化点や再構築点など審査基準に基づいて審査しているだけで、対象補助経費の妥当性までは確認していないと思われます。
その妥当性は採択通知後に行う手続きである「交付申請手続き」での確認プロセスになります。この手続きでは事務局が細かく相見積書など確認して最終的に「交付決定通知書」が発出されて、その決定通知書に記された補助金額で初めて正式決定となります。
ところがその「交付決定通知書」の金額の給付が決定したわけでもなく、もう一つの関門が補助事業実施後の実施・実績報告を最終的に審査されて、きちんとルールに基づいて補助経費が確認されて、ようやく事後に補助金が給付されるのです。
補助金の給付まで支援するのがコンサルタントのあるべき姿
つまり補助金給付には、「公募申請の採択審査」「交付申請手続き」「補助事業実施・実績報告」の3つの関門があります。いくら素晴らしい事業計画で申請して採択しても、もし新規の補助事業で投資する建築物が新築である場合には、新築が必要な説得性のある別の書類が必要です。もし立てた建築物が金融機関の抵当権が設定されていた場合、高い確率で否認されると言われています。
その否認が交付申請手続き時点であれば、事業を修正する余地がありますが、全て投資して最終実績報告時にその費用が認められないとなると相当大変なことになります。現在は一年前の補助金事業の実施実績報告、つまり後払いの補助金確定審査が真っ最中ではないでしょうか。いろいろとこれは認めるとか否認とかややこしい問題が発生しているようです。
これらの状況を考えたとき、支援機関やコンサルタントは採択の成功報酬だけもらって、あとは事務手続きなので交付申請や実績報告は企業自身でやるように求めるのは何か無責任だという思いを持ってしまいます。
せっかく事業計画策定を支援したのであれば、その計画書に組み込いれた補助金を満額交付決定してもらい、補助事業終了時に100%支給されるように、一気通貫で支援して初めて報酬を貰うというのがあるべき姿だと思うのです。採択支援実績を誇っているところほど交付申請手続きや実績報告書の提出支援まではやっていないところが多いように感じます。
真の中小企業の味方とはどのような支援機関なのか考えてみれば自ずから方向性ははっきりとするでしょう。