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リスクマネジメントの欠如が招く悲劇を繰り返さないために

日本人のリスクマネジメントに対する感受性の低下とともに、今年に入ってから悲劇が繰り返されていることにどこまで国民の多くが気づいているのでしょうか。毎日コロナの情報に埋もれてしまい、昨今では円安に伴う物価上昇の苦境や旧統一教会と政治の問題ばかりです。

思い出してみてください。知床の観光船沈没事故の悲劇もどんどん記憶が薄れ、安倍元総理の銃撃暗殺事件も国葬反対だの統一教会と政治家が接触があったかどうかの政治の道具にすり替わり、いつの間にか亡くられた方の死を悼み静かに冥福を祈る本来日本人が持っている精神性の高さはどこに行ってしまったのでしょうか。暗澹たる気分になります。そして静岡県の認定こども園で起きたバス車内置き去りで園児が熱中症で死亡した悲劇も、もちろん園の責任は当然のことですが、ご家族の悲しみをともに受けとめるというよりも、とにかく園を徹底して非難することばかりで、第三者が適当なことばかりコメントし、外から部外者が一方的に悪いやつを決めつけて徹底して叩くという風潮が強まっているように感じます。

知床観光船、安倍元総理暗殺、こども園バス置き去り、全てにおいてSNSやメディアに限らず部外者による一方的な「悪者叩き」であり、日本人自身の精神性の低下が垣間見えるのは本当に情けないことです。

リスクマネジメントの欠如がこれらの事件を起こした真の原因

一方、これらの3つの事故、事件に共通していることがあります。それは紛れもなく「リスクマネジメント」の欠如です。SNSやメディアを見ているだけでは、誰が悪いのかということばかりで思考停止してしまいます。

もちろんそれぞれの事故、事件で何が原因となって起きたのかについて徹底して分析調査されています。二度と起こさないように対策を検討するのは当然のことです。それぞれのケースで原因は異なりますが、だいたいトップの認識や管理が杜撰であったということに帰着してしまいます。

しかし、この3件の事故、事件は偶然そうなったわけではないと思っています。また同じような悲劇が繰り返されるでしょう。それは「誰が悪い」「トップの責任感が感じられず態度が不遜で反省しているとは思えない」という表面的なことしか見えていないからです。

外部は無責任な立場から執拗な非難の言葉を投げかけ、当事者は当然反省もし、場合によっては刑事責任も負うこととなり、二度と起こさないよう誓いを立てるはずです。しかしどんなに批判しようが被害者が生きて帰ることはありません。このような事故、事件が起きてしまった限りは、会社は倒産しますし、警察のトップも辞任に追い込まれました。こども園の経営も不可能になって職員は職を失い、園児たちも預けてもらえる他を園に移らないといかなくなります。それほど人の安全という最も慎重かつ重要な基本リスクのマネジメントを疎かにした結果、取返しのつかない究極的な事態を招くわけです。

リスクマネジメントは仕組みだけでは不十分

組織のリスクマネジメントの重要性については、ほとんどの企業や団体は頭では理解しています。もちろんリスクマネジメントの管理体系をマニュアル化し、BCP(事業継続性計画)の立案、推進のしくみも構築している企業が多いと思います。

もちろん安全に関わる部分については、様々な法律や条例で基準が定められていたり、国や地方行政機関による規制や指導などのルールの適用を受けます。よってコンプライアンスは企業経営においては極めて重要なファクターになります。それでもコンプライアンス違反による不祥事は頻発していますし、法律が未整備の部分で想定外の事件や事故が発生するリスクは山のようにあります。

コンプライアンスを徹底して社内のアセスメントや通報制度などいろいろと制度しくみに落とし込んで、少なくとも大企業レベルではリスクを最小限にするための努力を行っているところが多いです。それでも不祥事は次から次への発生するのです。電通によるオリンピック汚職の問題もこれからますます真相が暴かれているとは思いますが、汚職についても社内的には防止ルールは基本的に整備されています。

それでも企業の存立そのものの危機に通じる事件、事故は起きるのはいったい何故なのでしょうか。リスクマネジメントの取組みに基本的に欠如していることがあるからではないでしょうか。

通常、企業が行うリスクマネジメントは極めて閉鎖的な場で討議されて、その結果を上から下へ規定として落とし込まれているに過ぎないと思っています。いくらアセスメント分析して制度仕組みを確立したとしても、それだけでは不祥事の連鎖は止まりません。

リスクマネジメントを機能させる2つの要素

リスクマネジメントの機能させるには社内の制度しくみに落とし込むだけでは不十分です。そのためには二つの側面からの検討が必要です。

①社内だけで行わない

大企業から中小企業のほとんどの企業がリスクマネジメントを付随した管理の一つとしての認識しかなく、コンプライアンス規定や行動規範などの社内規定を社内だけで検討してルール化しているだけに過ぎないのではないでしょうか。リスクマネジメントの体系づくりから監査を含むアセスメントから行動計画までのPDCAを実践していくための、ルールづくりから実践の取組みまで社外の視点を入れるべきかと思っています。

理想的にはリスクマネジメントの社外取締役を設置するか、それか社外からリスクアセスメント・監査のアドバイザーを求め、それが機能する社内の仕組みを作り上げることが非常に肝要かと思います。本来は監査役が担うべき分野であると思いますが、多くの企業では社内人材から監査役に就任させるのが一般的であり、これでは真の外部からの知見を機能させるリスクマネジメントはかなり難しいと思います。

②トップから新入社員まで全社員にリスクマネジメント教育

リスクマネジメントは制度だけで行うものではありません。最終的には全社員の心の中の問題です。いくら規定があったとしても、こんな問題はまず発生しないだろう、一応求められる手順書に従ってチェックシートは作成するだけはやっておこう・・・こういうマインドが知らず知らずのうちに社内で蔓延する結果、想定外の事件、事故が発生するのです。この3つの事件、事故の原因調査においても、一応管理ルールはあったと思います。しかし、そのルールが守れなかったのは何故か、現場にいた人の不注意だけが問題の原因だと言えるでしょうか。

結局、ルールを一人ひとりの心の中や行動規範にDNA化しないと同じ問題は繰り返されるのです。

リスクマネジメントは外部の専門家を巻き込むトップの決断次第

内部だけで表面的にコンプライアンスに取組む企業はまた同じような不祥事を繰り返しますし、リスクマネジメント全体の体系構築とPDCAを機能させるには第三者の目線が必須といっても良いでしょう。

私は海外のリスクマネジメントの専門家として、企業の海外拠点リスクのアセスメントからPDCAの課題取組みまで幅広く支援を行っております。企業規模に限らず、また国内、海外に限らず、今一度リスクマネジメントを機能させるための見直しを行いたいと思われる場合には、是非コンタクトいただければと思います。最適の方向性についてハンズオンでご相談に応じます。