独立開業5年を迎えました
この4月で経営コンサルタントとして独立開業してちょうど5年、法人化して2年になりました。おかげ様で3月決算の昨年度は開業以来最高の売上を達成しました。この間いろいろ試行錯誤しながら、それこそ行き当たりばったりの事業でした。当初はやはり理念、ビジョンが大事だと、個人事業として立ち上げる前からまずそこから考え、形ばかりが先行していたような気がします。元々事業を拡大することよりも、中小企業の海外展開に成功してもらうことが、好きなベトナムの社会経済発展の貢献につながると信じ、一人でできる範囲で細々とやってきました。自慢ではないですが、元来自分自身で何でもこなせる器用さの強みを活かしての独立事業でしたので、一人で経営相談から資料作成、講演、研修講師、営業活動、経理処理から総務まで一人でこなし、社員を雇用してまで事業拡大を目指したいとは思っていなかったので、それなりにやってこれたと思います。
この5年間を振り返りますと、やはり独立して事業を続けてこれたのは、人と人とのつながり、ネットワークのおかげだったと思います。全く新しくクライアントと出会って仕事をいただいたこともありますが、人からの伝手でコンタクトしてこられたり、また現役時代のネットワークから、「ベトナム」の相談なら杉浦にコンタクトしてはと紹介してもらったりして、だんだんと顧客が広がってきたように思います。
また、私にとっては新たなチャレンジですが、今月から甲南大学で非常勤講師に就任し教鞭を取ることになりました。私は元々は理系卒なのですが、どういうわけか「経営学部」で「国際ビジネス事情」という講座を1年間担当することになりました。これも、現役時代に社員研修所での社員講師を行ったときに、たまたま知り合った外部講師であった甲南大学の経営学部の教授に懇意にしていただき、その後ずっとベトナム赴任を経て退職までいろいろと気に留めて下さっていて、そのことがきっかけとなって今回非常勤講師としてやってほしいとお声がけをいただいたのでした。これも人と人の一期一会であると思っています。
この講座は、毎週4限目と5限目それぞれ90分授業を2コマ、合計3時間になるので結構大変です。シラバスは今までのコンサルタントの実績からある程度早く作成することができたのですが、正直3時間ぶっ通しで一方的にしゃべってコンサルタントするようなことはないので、ちょっと勝手が違って戸惑っています。企業経営者と経営相談で話をさせていただくときには、ほぼ双方向で会話を進めながら行いますし、企業相手のセミナーでもある程度双方向のやり取りが成立しますので、3時間くらいはあっという間に過ぎていきます。ベトナムで現地経営者対象の経営塾講師を一週間続けて行っていますが、日本語とベトナム語の逐次通訳のため、内容ボリュームとしても日本人対象セミナーで1時間ボリュームでも、質問がどんどん飛んできますので、お互いやり取りしながらなので実際には3時間は十分もちます。
ところが今週9日に初めての第一講を行ったのですが、登録者数が何と220名を超えていました。まだ仮登録期間なので、第一講の出席者はざっとみて120~130名ぐらいだったと思います。公的機関で200名以上が参加するセミナー講演の経験がありますので、特に緊張してうまく話せなかったということではないのですが、やはり大学での授業は少し勝手が違います。一番の違いは受講者の反応がほとんどないということです。私も大学時代は真面目な学生ではなかったので、まともに授業を聞いていたということはないので、寝ていても途中から入退室しても特に気になるということはありません。真剣に聞いている人はいることはいるのですが、ざっと見て10名前後です。あとは何となく聞いているだけという学生がほとんどでした。質問をする人はまずいません。また、こちらから呼びかけて逆質問するなどで手を挙げてもらうようにしても、恥ずかしがってまず手を挙げることもしないのです。企業相手は外国人相手では半分以上は真剣に内容を聞いているところが大違いです。
せっかく貴重な時間を割いて授業に出ているわけですから、一つでも自分の将来に向けて役に立てる知識や経験談との出会いが、どれほど自分を成長することにつながるのかということを是非学んでほしいなと思いました。でも、自分の過去を振り返ってみると、ああ、もっと学生時代に勉強していたらと反省しきりでした。
最初の授業が終わって、一人の私よりも年配の方が教壇まで挨拶に来られました。最後列の席に座って授業を受けておられたので、何か学部の教授のお一人か、もしくは学校関係者で、最初の授業の様子を見に来られたのかと思っていました。しかし、その方はご自身の学生証を見せて挨拶されたのでした。その方は以前企業で働いておられたとき、中国でいくつもの都市で駐在されておられたベテランの方で、一段落した今、改めて大学で学びなおしたいとの思いで学生になられたとのこと。まさしく生涯通しての学びを実践されておられる姿に感銘を受けました。
経営コンサルタントとして5年、そして今年から大学の講師としてデビューし、企業セミナーでもベトナム人向け経営塾でもあちらこちらで「先生」と呼ばれることが多くなりましたが、私自身はどちらかというとその呼称はしっくりきません。でも本当は「さん」付けでお互い呼び合うのが一番性に合っているのです。自分自身は「先生」と呼ばれるほど偉くはありません。ご年配の学生さんと同じように一生学び続ける生き方を尊び、人と人との関係性を大事に価値を共有しあえる仕事を通じ、これからも社会に貢献していきたいと、5年の節目で思いを新たにしました。