このページはJavaScriptを使用しています。
ご使用中のブラウザはJavaScriptが無効になっているか、JavaScriptに対応していません。
サイトを正しく表示、ご利用いただくには、
JavaScriptを有効にするか、JavaScriptが使用可能なブラウザでアクセスして下さい。

大卒定期採用は世界の中でも極めて特殊・・もうすぐ終わる

今年から甲南大学で講師の仕事を受託してすでに2回講義を行いました。講座に登録している学生は2回生から4回生まで合計250名以上いるので、とても出席など取れません。今のところ大体百数十名は出席しています。その中でポツポツとスーツ姿の学生がいます。ちょうど3回生が就活中で、「面接で授業を受けられないときどうしたらいいですか?」と聞いてくる学生が数名いました。私の授業の成績評価はレポートでということにしていますので、クラスプロファイルにアップする授業資料を十分復習して、就活を優先してくださいと伝えています。

大卒定期採用の終焉時代

私も40年以上前の就活経験者ですが、今とは随分異なっていたことを思い出します。ただ、日本の就活は、以前から大卒定期採用を前提としているというのは変わっていません。もちろん就職協定の中身自体たびたび変更され続けてきました。しかしよく考えてみれば、この日本の大卒定期採用というシステムは極めて特殊で、世界の中でこのような採用形態で新卒学生を一括採用しているような国はほとんどありません。

グローバルな経営環境がどんどん変化している中で、会社にとって重要な人材採用の在り方は、このままではもうもたないと感じます。今までのシステムで採用できる学生の能力を見極めることは正直ほとんど無理です。いろいろ面接のやり方を工夫して、少しでも会社が求める人材を採用しようと努力してきましたが、最大の問題は、実際の仕事の現場で求める能力に合った人材採用ができないことです。いわゆるゼネラリスト的なポテンシャル人材を採用するのが精一杯であって、激しく動く経営環境の変化を先取りできる人材を、このような一括採用、しかも3回生の早い時期に採用したところで、実際会社に入ってから、会社側も学生側もアンマッチということが多くなるのは必然です。実際、新卒で入社しても、やりたい仕事と違うと簡単に退社していく学生が増えているのは、最早今の採用システム自体が機能していないといえるのではないでしょうか。

先日、経団連の中西会長が、今後は従来の新卒一括採用や終身雇用にとらわれず、通年採用など多様な雇用形態を選べる形が望ましいとの認識を述べています。しかも企業は学業で成果を残す学生を求めているにもかかわらず、今の3回生までの成績で採用してしまうことに大きな矛盾を抱えています。企業は経営環境の変化に対応していくためにも、採用する人材に高い専門性を必要とするのに、卒論や研究の成果を求められない3回生を面談して採用できる人材とニーズの乖離が出てくるのはむしろ当然といえます。

今後経団連は大学側との合意を通じ、今の就活ルールはもう終わらざるを得なくなってくるでしょう。おそらく定期採用主体から、かなりのスピードで通年採用に移行していくことは間違いありません。通年採用となることで、就職解禁ルールは事実上廃止されますが、これは就活が企業にとっても学生にとっても早いもの勝ちとなるのではなく、より大学4年間で学んで成果を出せた学生を評価し、高い処遇で迎えることに変化していると思われます。

定期採用システムは大企業による人材浪費につながる

大卒一括で定期採用するシステムは、実際の現場のニーズとは大きな乖離がおきます。先に人事部門が採用計画を立てるのですが、現場のある部門で、業務拡大でこういう人材がこれだけ必要という要望を出しても、その必要なタイミングに合わせて社内異動や新卒配属で、現場の要望と合致させることはまずできません。

これは日本特有の人事システムの問題です。しかも大企業に顕著に見られるのです。だからこそ特に大企業では、職場の仕事や求められる能力のアンマッチや人材育成の無駄な投資、退職者の増加、モチベーションの低い人材が滞留するなどの問題が深刻化しています。

中小企業から見ると非常にもったいない人材の無駄づかいです。正直なところ、大企業はそのブランド力と待遇、安定性から多くの大卒人材を根こそぎ確保してしまい、中小企業が高い能力のある人材を採用するのが難しい実態があります。大企業はすごい能力の高い多くの人を抱えているわりには、それを生かしきれていません。それどころか時代の変化に対応できず業績不振となり、あげくの果てには、そういった貴重で能力の高い人材を浪費し、早期退職に追い込んでいるというのは本当にもったいないです。

そもそも人材採用は仕事が先にありき

海外では全く採用のシステムが異なります。通年採用は当たり前ですが、ほとんどの国での人材採用は、職務内容に合わせたポジションが先にありきです。海外で人を採用する際には、まず職務記述書を作ります。どういう仕事をどういう人材に任せるか、そのうえで成果に対する評価基準を明確にしたうえで、必要とする人材をリクルートするのです。したがって応募してくる人は最初からどういった仕事かわかっていますし、その仕事に対しての報酬対価はいくらとわかって面談に来ますので、実際会社に入って仕事が違うということはまず起こらないのです。

もちろん成果に対する評価で不満が起きたり、求める昇給、昇格とのずれで退職していく人はいるのですが、人材採用はすべて仕事が基準になっており、むしろこれがあるべき人材採用の姿になってくるでしょう。

つまり、学生にとっては、のほほんと大学で遊んでばかりはいられなくなります。新卒でもその仕事ができる能力を持っていないと採用されなくなるのです。今までのように意欲とか経験、将来性や課題対応力などといった潜在能力だけでは通用しません。人材を必要とする仕事を遂行する能力をもった人は、日本の学生だけから選抜されるわけではないのです。顕在化した専門的な業務遂行能力をもった人すべてからの選考になるのです。海外の学生や業務委託先との闘いです。仕事の奪い合いなのです。

これからは就社ではなく、まさしく就職の時代へ! これが本来あるべき姿です。今は人が足らないということで、大卒の内定率は高いですが、今後企業は大卒採用した人材を長く時間をかけて育てて戦力化する時間は許されていなくなってきます。ということは、着実に大卒定期採用を減らし、仕事に合致した人材を通年採用、しかも大学や国籍、新卒、既卒関係なしに求める採用数が今後急速に増えてくると思います。

実際、定期採用数を今後減らすと回答している企業は増えているのをわかっていますか? といっても、もともと中小企業は通年採用が当然の世界で小回りを利かせて経営を行っています。むしろ、大企業の人材採用が時代遅れとなっていることにようやく気づき始めたといってもいいでしょう。