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ヴィングループの快進撃

半年ぶりにベトナムに来ました。今回は二週間の滞在でしたが、いつも来るたびに新たな発見があります。

2010年に赴任したころの大型ショッピングセンターとしては、ハノイの旧市街にVINCOMセンターが唯一目立った存在でした。その後VINCOMメガモールなどが次々とオープンしていきましたし、今回もロッテセンターのすぐ近くに新たなVINCOMセンターが開業していました。この事業主体はベトナムのVINグループというデベロッパーなのですが、ここ数年急激な成長を遂げています。元々不動産デベロッパーなので、ショッピングモールやアパート、ビルやリゾート施設などの不動産開発だけでなく、病院、学校や、小売り流通なども手掛けています。スーパーマーケットはVINMART、最近では家電量販店のVINPRO、コンビニはVINMART+というようにVINのブランドが急速にベトナム中で広がっています。2017年の売上高は750億円とまだそう大きくはないのですが、事業は多角化経営のベトナム最大の民間コングロマリットであり、それぞれ独立採算で着実に伸びています。売上構成は不動産販売が約70%、小売りが15%、ホテル・レジャーが6%、不動産賃貸収入が5%、病院経営が2%、教育が1%なので、まだ8割が不動産関連となります。

2016年度決算を見ますと売上高は前年比69%増、純利益が134%増となっており、部門別では不動産販売が前年比76%増、小売りは115%増、ホテル・レジャーが49%増、不動産賃貸が25%増、病院経営が42%増、教育が39%増と全ての領域で急成長しているのです。

この企業は今後ベトナム人の生活インフラを変えるリーディング企業となるのは確実です。

先日、ハノイからハイフォンに移動するときの高速道路から、広大な地域でVIN CITYの開発建設が活況で、VINCOMのTIMES CITYで大々的な商談会をやっていました。何もない広大な土地に未来都市を一つ作るような壮大なプロジェクトです。

製造事業への壮大な挑戦

海外のデベロッパーの多くではインフラ需要の拡大の波にのって拡大しているところが多いのですが、このビングループの動きに驚かされたのは携帯電話やバイク、自動車までグローバル製造業に真っ向から挑戦して参入を図っているところです。

こういった動きはときどきニュースなどで目にしていましたが、現地でショッピングセンターを視察しますと、肌感覚でこのビングループの着実なモノづくりへの取組みがすごいと感じます。

まず家電量販店として算入したVINPROで、昨年から既に自社ブランドの携帯電話Vsmartを販売しているのです。おそらく中身は中国メーカーからのOEM供給であると思いますが、現在の流通業界は顧客と直接接している強みを活かし、商品企画販売までコントロールできるまでになっています。コンビニなどはその典型です。携帯電話といえばAPPLEやSAMSUNGと思いがちですが、ベトナムでは中国メーカーのシャオミが自店舗をモールで開店していますし、OPPOのブランドもかなり目立っています。その動きは実際現地で目にしないとなかなかわかりません。いずれ家電商品もメーカーブランドでなく流通ブランドがかなりの幅を利かせてくるようになるでしょう。

もう一つの驚きは自動車への参入です。ベトナムの自動車現地生産は、二輪、四輪合わせて、日本のトヨタや本田などが先駆けで展開する一方、ベトナムにはTHACO(チュオンハイ自動車)という現地資本の自動車メーカーがあり、大型トラック始め、乗用車ではマツダやヒュンダイ、KIAなどのOEM生産事業として実績があります。ところが不動産デベロッパーのVINが自動車事業に参入するというのです。普通はそんなのは無理だと思うところですが、本気も本気、ハイフォンに大きな工場を建ててEV専業として進めています。

今日、ビンコムメガモールで昼食かたがた歩いていたら、そのイベントスペースでVINFASTというブランドでVINがその工場で製造した電動バイクが展示されていたのです。ベトナムではいわゆる中国製の電動自転車が走っていますが、本格的な電動モーターバイクはまだ普及していません。しかし、展示されていたVINが作ったという電動モーターバイクがあったので担当者に聞いてきました(ベトナム語で)。

ハイフォンの工場で去年から作り始めて6か月間で約5000台を集荷したとのことで、現在はまだ年間約1万台の製造計画、写真にあるバイクは大きさ的には普通の町で走っているバイクとほぼ同じもので、電動自転車とは違い安定感があります。一回のフル充電でなんと80キロ走るとのことで、値段は50Mドンといっていましたので約25万円です。ほぼエンジンバイクと対抗できるものです。

またその展示スペースではVINFASTの工場内部まで写したPRビデオを流していました。工場内は非常に整理整頓されて大変綺麗で、かなり先端的な自動化生産ラインです。ロボットがフルに稼働しています。このVINFASTはスイスのABBから協力を受けて参入できたのです。EVの時代になると今までの価値観やモノづくりの強みが一気に変化していきます。不動産屋でも自動車が作れるのです、携帯電話が供給できるのです。今までは自社内に技術やモノづくりの優位性、ブランド力を持ったところのみが参入できるという参入障壁が高かったのですが、資金力と事業拡大のビジョン、そしてネットワークの強ささえあれば、どんな企業でも事業参入が可能な時代となったのです。

今までの事業の枠組みという常識に囚われていては、もはや生き残ることすら難しくなってくるという危機感を改めて感じました。