入管は本当に国益に沿った仕事をしているのか
今年最後のベトナム出張で今週はハノイで仕事でした。この一週間いろいろと新たな生の情報に接するにつれ、日本の閉鎖性にうんざりするような気分になりました。特に、日本の入管は本当に国益に資する仕事をしているのか、疑問に感じざるを得ないことがありました。
既にニュースに接しておられる方もいるでしょうが、現在ベトナムは日本や韓国を含めて欧州を中心に12か国に対して、15日間までの滞在についてビザ免除を実施しています。他にASEAN各国に対しても基本ビザ不要です。但し、前回の出国日から30日が経っていないとビザ取得が必要です。これが結構面倒で過去何度も堺の領事館に足を運んでいました。今は、ABTCというトラベルカードがあるので、30日制限なく入国後3か月滞在できますが、今月のベトナムの国会でこの30日制限を撤廃するということが決まり、来年7月から実施させるようで、非常にビジネス渡航が便利になります。
しかし、これはあくまでベトナム政府の主体的措置で、一方的に相手国を有利にしているだけで、ベトナム人の渡航に対してはビザの取得すらも非常に複雑で厳しいままです。ビザ免除どころか、観光ビザすらなかなかおりず、ましてビジネスでの渡航ビザなどは、ヒアリングもまともに行わず一方的に却下の結果だけ知らされるというケースを数多く聞くのです。
入管はもっと手続きの透明性を高めるべき
日本の入管はビザ審査にあたって、その結果に対する理由を一切言わないのです。しかも、一旦却下したら、その後半年は新たなビザ申請ができないというのです。理不尽としか言えないような事例がたくさんあります。
まず訳がわからないのは、現在JICAのプロジェクトで人材育成研修プログラムの一環で、研修を受けている企業経営幹部の日本研修、しかも単に10日程の短期訪問でのビザ取得に関して、JICAが人物保証しているにもかかわらず、参加者の中の一人に対してビザが下りず、結局日本研修の日程に間に合わなかったためキャンセルせざるを得ないことがありました。もちろん、入管もビザを発給する大使館も何の理由提示もしません。
また次の事例として、ある日本企業と取引のあるベトナム企業の責任者を日本旅行に招待しようと、観光ビザを取得するための招聘状を作り、旅程計画をきちんと出して申請したにもかかわらず、理由もなく拒否されたという人の話を何件も聞きました。
そして、今週腹が立ったのは、経営塾の以前の受講生でベトナム企業経営者の日本出張ビザが拒否されたことでした。その企業は、日本企業が金属加工の注文を受注して売上拡大を図っているところです。社長自身、日本企業に勤務していた経験から日本語も堪能で、技術にも精通していることから、多くの日本企業との商談を軌道に乗せるべく、日本にも何度も出張することで顧客拡大につなげることができていました。ところが、さあ顧客との打合せのために日本出張しようと新しいビザ申請をしたところ、それこそ理由もなく一方的に却下されたため、商談のための出張ができなくなったとのことです。しかも、6か月間は再申請ができなくなるので、事業が事実上中断してしまわざるを得ないところまで追い込まれ大変困ったと相談を受けたのです。
元々、経営支援のコンサルを受けてもらえる可能性はあるかという打診だったのですが、コンサルサービスを受けるほど財政的な規模も十分でない中小企業です。まあできることがあればお手伝いしましょうということで、当面、コンタクトのある日本企業との商談のつなぎぐらいならということで、代理で日本企業を訪問して、何とかまとめてあげることができればと考えているところです。普通のコンサルではないので、どこまでできるか様子を見ながらということもありますが、ベトナムと日本の架け橋になることが、私自身の企業理念でもありますので、やれるだけはやってあげたいと思います。
それにしても、入管のビザ審査については、非常に不合理な点が多くみられます。国の政策としてベトナムの裾野産業の発展に貢献することが日本企業との関係強化に資するという大きな方針のもと、様々なビジネス関係強化や政府開発援助が進められていますが、肝心の人の往来に関して、産業経済発展に直結するビザ発給にブレーキをかけているのは全く矛盾しています。
鳴り物入りの特定技能の新在留資格についても、実際は壁だらけであって、今年4月から開始したにもかかわらず、認可されたのはわずか200人程度といったところです。また試験制度が整備されていないという理由があるようですが、要は入管は本気を出していないのです。できることならなんだかんだ言って、少しでも外国人が入ってくるのを阻もうとしているとしか思えないのです。外国人労働力がないともう持たなくなっている日本の産業構造にどこまで真剣に理解しているのか、日本企業とベトナム企業の関係強化のためにビジネス交流拡大が必要なのに、ビザを理由もなく発給拒否するなど、彼らの論理が全く理解できないところです。
確かに、ベトナム人技能実習生の行方不明による不法滞在が増加したり、犯罪件数が増えていることは事実ですが、かといってベトナム人のビザ発給を極端に絞るのはあまりにも理不尽と思うのです。行方不明の問題も、元をたどれば根本的に技能実習制度の立てつけが非常に矛盾を生じているからと思わざるをえません。
もし今後、ベトナム人がタイやマレーシアなどと同じようにノービザで日本に観光入国できるようになれば、爆発的にインバウンドのベトナム人が急増することは間違いないのです。それほど多くのベトナム人にとって日本への観光旅行の願望が高いということを真剣に考えるべきです。日本人からの招聘があれば、すぐに観光ビザを発給する運用があってしかるべきかと思います。
ノービザで入ってきてわざわざ日本で反日活動する某国などこそ制限するべきであって、日本とのパートナーシップを強化するメリットの大きいベトナムのビザ緩和は急を有する政策であると強く感じます。