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改めてベトナムの動きとの格差を感じる

先週は大阪府と沖縄県の中小企業診断士協会のベトナム視察旅行に随行していました。視察メンバー参加という立場ではなく、ベトナムに精通しているということから視察先のアポイントを含めた行程コーディネーターの役割でした。今回はハノイで総勢38名の大人数の視察となりました。私自身が案内役でしたので、ほとんど知った我が家という感じですし、だいたい年に4回ほどはベトナムに出張しているものの、それでも改めて来るたびに気づきを得ることが多くあります。

今回の視察旅行の随行でもいろいろと収穫がありました。その所感として、以前にも触れた配車サービスのGRABについて少し触れたいと思います。

既存業界を守ることが日本の産業発展の大きな妨げとなる

日本の産業界全体は先進的であることの反面、成熟しているがゆえに既存業界の既得権の壁に阻まれることがいくつもあることが目立ちます。これは日本だけで仕事をしている人にとってはほとんど気づかないことばかりなのですが、外から日本を見ていると問題を痛切に感じることが多いのです。

その一つがタクシーなどの運送業界の実態です。

海外ではUBERやGRABなど配車サービスがかなり発達しています。アメリカや東南アジアなどによく出張される方にとっては気づいておられると思いますが、日本のタクシーの不便さや料金の高さなどなかなか日本にいるだけではわかりません。もし、UBERやGRABなどのスマホアプリによる個人の所有自動車を配車して利用できる環境ができれば、消費者にとって便利になるだけではなく、産業構造ががらっと変わり、より利便性の高い運送業に変革発展していくのではないかと感じます。

ところが日本ではタクシー業界や運送トラック業界などの規制された既存業界からの強い反対で本格的導入の目処が立っていません。実際、今回のハノイ視察旅行で、一部の方と市内を移動するときに、GRABのアプリで配車のやり方と仕組みを私のスマホから体感してもらったのですが、こんな便利なものが何故日本で進まないのか一様に驚かれました。

日本の地方では、認可タクシーの数も少ないですし、そのため流しのタクシーはほとんど見当たることがありません。必要な場合は電話で配車を依頼するのが一般的ですが、それには迎車料金が上乗せされたり、少ないタクシーが出払っていて、タクシー乗り場には一台も待機していなことなど困ることが多くあります。自家用車をシェアリング利用してもらえるような配車サービスが可能となれば、もっとタクシーの使い方が広がるはずなのですが、タクシー業界の売上減少に直結することから、既得権益を守るためにも、絶対に認可されないように圧力をかけてきたのです。

今、日本では旅行者の空港出迎えのときに中小の旅行社、特に中国などの旅行社が自家用車を出迎えに利用することが白タク営業に当たるということで、いかにも犯罪者のように扱われます。白タクという名称はいかにも犯罪という印象を与えてしまっています。本当にそんなに悪いことなのでしょうか? それは日本の規制法律で運送業法の法律違反とされているからであって、日本以外では犯罪でも何でもないところが多いのです。こうやって既存業界がAIなど技術革新による発展で新規参入を認めない圧力を続ける限り、日本の技術発展は相当遅れるのです。

海外の配車サービスはここまで進んでいる

東南アジアでの配車サービスは、単に自動車のシェアリング配車だけではなく、機動的な乗り物であるバイクの配車の方がより広がっています。元々公共移動手段が少ないことからバイク社会のベトナムでは以前からXE OM(セオム)というバイクタクシーがごく普通の移動手段として普及していました。セオムが一般的なときは、交差点に暇そうなおじさんがバイクの上に座って、「乗らんか」と声をかけて客引きをしていました。しかし、今やスマホ全盛の時代で、スマホアプリで配車できるGRABが一気に広がっています。緑のジャケットやヘルメットで走るのでいやでも目立ちますが、最近ではそのGRABの使い方も大きく広がっているようで、おそらくこの動きはタクシーとは別の次元で大きな変化として日本にも広がりが来ると印象を持ちました。

最近のGRABは単に人を運ぶだけではありません。食べ物や書類などの小荷物も運びます。写真のGRABタクシーの運転手は休憩にお茶を買っているのではありません。顧客からどこそこのタピオカティを買ってきてという依頼を受け、それを店で買っているのです。そして、このドライバーは一個のタピオカティを配達していきました。また、バイク急便サービスも、以前は業者が事業としてやっていた時代から急激にGRABの配車サービスに取り込まれているのです。

いちいち宅配業者やバイク急便の業者に電話して荷物を運んでもらうのではなく、スマホで近くにいるドライバーを探し、すぐに手を挙げたドライバーが顧客の場所までやってくるのです。業者のスピードでは追いつきません。一気に産業構造が変わっているのです。

おそらく日本にもこの流れはすぐに来るでしょう。人を運ぶタクシーは規制に阻まれていますので当面すぐに普及することは難しいでしょうが、狭い地域内での宅配サービスは運送法などややこしいことはなさそうです。例えば、最近ではコンビニも宅配サービスをやり始めていますし、マクドナルドも宅配する時代になってきました。ところが実際に配達する人を確保することは大変厳しいです。町のそば屋の出前も店員自らやる人の確保はほとんど無理になってきています。宅配を商品の付加価値としているピザ屋などは多くのバイクを店として構えて配達を行っていますがアルバイトを集めるのも難しいのです。郵便局も土曜日配達はもう止めるところまで来ています。

こういった人不足の中で、求められる宅配サービスの担い手は、アルバイトを雇用するだけでは追いつかないため、店の宅配依頼をスマホで受けて、時間がある人が自由に宅配需要サービスを埋める形が増えてくるのは間違いありません。バイク急便も事業として成り立つのも厳しくなってきて、お店と一般人によるAIでのマッチング配達で回していくことが当たり前のようになってくると思うのです。もうその流れは既にベトナムなど海外で明らかになっています。こういった動きは日本にいるだけではほとんど見えません。

コンビニも外食産業も書類配達だけでなく、宅配便の集積センターから最後の顧客への配達や集荷すらも、スマホでマッチングして、一般人が集積センターと戸別をつなぐ運送を担う時代はもうそこまで来ていると思います。

こういった流れの中で、タクシー業界がいつまでも規制に守られて、シェアリングサービスの参入を阻んでいるのは最早絶滅恐竜と同じと言っても良いのではないでしょうか。人を運ぶということとモノやサービスをつなぐ物流とは同列に扱うことはできないでしょうが、海外ではまずUBERやGRABサービスの登場により、一般人が自分の車をシェアリングしてもらって人を運ぶことが可能となり、ついに小回りの利く物流の有力な手段としてシェアリングサービスの範囲が急拡大しているのです。

おそらくタクシーなどの古い業界は、顧客自身が競合そのものに変化していく姿を想像できているでしょうか? 需要をどうやって開拓していくか、いつまでも流しで手を挙げてくれる客を求めて町中を彷徨い、予約電話の入った無線センターからの呼び出しを待っているだけの工夫のないマーケティングに固執している限り未来はないでしょう。人以外のものを運ぶ発想はタクシー業界にあるのでしょうか? タクシー業界はなぜ不況に弱いのか、ここに根本的な問題があるように思います。世の中にはいろんは移動手段があります。また生産性を上げていくためには、実際にタクシーを使って物理的に人が動かないといけないのではなく、どんどんネットの世界でビジネスが完結している変化に気づくべきです。UBERやGRABが急拡大している国々でも既存のタクシー業界は客が減って岐路に立たされています。どういった需要に着目し、どう顧客を開発していくか、マーケティングの基本的な取組みが欠けているタクシー業界の将来は非常に厳しいものがあると思います。しかし、規制頼みで新規参入を阻止したとしても、経済全体の流れを止めることはできないのです。

いかに海外で何が起きているかを知ることの重要性を改めて感じました。