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ベトナムで感じた日本のTV局の将来

今、今年2回目のベトナム出張中です。ベトナム勤務から帰国して早4年、その後も仕事に恵まれましてだいたい1年に3~4回ベトナムに出張していますが、この4年間のベトナムの変化は激しく、来るたびに新たな発見があり個人的にも大変刺激を受けます。しかも、単にベトナムの変化に驚くだけでなく、逆に日本を外から見る機会でもあり、昨今の日本自身が持つ問題に危機感を覚えるようになってきています。その最たる問題がマスコミのガラパゴス的劣化が、日本全体の発展の足を引っ張っている印象を強く感じます。

ベトナムのTVチャンネル数はいくつあるか

私が駐在していたわずか数年前のベトナムでは、まだテレビ放送のデジタル化の規格をどうするかでさんざん政府とやり取りをしていたのを思い出します。そのときは日本では地デジが導入されて、アナログ停波に向けて時間を十分にとって進めてきた経験をもとに議論されていました。遅れること数年、ベトナムでもようやくTV放送のデジタル化に向けて、TV受像機の規格について日本方式や欧州方式などの検討がなされていたわけです。当然ながらそのときのベトナムでのテレビ放送のコンテンツも貧弱で、ほとんどがアナログでしたので画質も劣っていました。そのころからようやくケーブル放送も立ち上がってきたころで、国営放送のVTVも確か4から5チャンネル放送され、あとはホーチミンにあるTV局のHTVが何チャンネルかがあっただけでした。

2013年末に帰国する前に住んでいたアパートではケーブルTVが受信されていて、30~40チャンネルは見れていたように思います。帰国後に出張でたびたびベトナムに来てホテルに泊まるときに、だんだんとチャネルが増えるとともに画質もどんどんHD化されていたのを感じていました。そして、今回泊まったホテルでテレビを操作していると、なんと400チャンネルの番組が映るのです。確かに一部は同じ放送が複数チャネルに設定されているので、実際は400もの放送があるわけではないのですが、ざっと見て実数で250から300チャネルはあります。今回特に気づいたのが、ハノイやホーチミンの都会にある放送局が配信しているものだけでなく、いわゆる田舎の省でも放送局があって、何十もの地方省の放送局の番組がケーブルTVチャンネルで見れるのです。

これだけチャネル数が多いと、番組のコンテンツも豊富です。政府が運営している局では当然のことながら政治関連のニュースが多いのですが、ドラマや音楽番組、地域社会での小さなトピックとか、実に様々です。私が勤務していたときも、多くのメディアが取材に来ることが多く、TVでも何度もインタビューを放送された経験がありました。それがもっと加速している感じで、一方TVを宣伝媒体として使うには視聴者数が極端に少ないので、あまり広告効果としては高くなくなっていると思われます。

時代にどんどん取り残される日本のメディア

日本に帰国して4年になりますが、最近ではほとんどTVを見ることが少なくなりました。その一番のきっかけがいわゆるワイドショウやニュース番組の偏向コンテンツとバラエティ番組の愚だらなさが嫌になったことです。特に東京のキーステーションから全国放送されるワイドショウの企画は非常に貧困で、こんなものに長時間電波を無駄に使わせてよいのかとつくづく感じます。しかもそのワイドショウは、毎日、各放送局とも朝、昼、夕方と2-3時間ずつ3つの番組でどことも同じような内容を延々とやっているのです。当然毎日ですから、番組コーナーの企画もコンテンツも質が非常に低いのです。いつまで相撲とモリカケばっかりやっているのかと嫌になります。バラエティも同じようなひな壇芸人がおふざけをやっている内容ばかりの感じです。

海外ではどんどん情報発信の形態は多様化しており、テレビ一つにしてもチャネルごとに専門特化している傾向にあります。そういったメディアにとっての環境変化が進む中、今まで同じように地上波のキーチャネル数チャンネルだけがいつまでも同じようなコンテンツで偏向してものばかり流していくと、いずれ視聴者も離れていることは間違いありません。NHKの契約義務の問題も政治的に厳しい状況になりつつあり、顧客の多様性に真剣に向き合わないメディアはいずれ衰退しくことでしょう。

テレビの受像機のありかたも根本的に変わってきます。確か2013年にパナソニックがインターネットTVを発売したとき、最初に電源を入れて映る画面がTV放送ではなく、ネットを含めた多様なコンテンツ表示の一つとしてTVチャネルのゲートを設けようとしたスペックでした。すると放送事業者から大反対が起きて、いわゆる既得権益を侵されるとの危機感から、パナソニックのTVCMを流すのを拒否したという事件がありました。そのときは妥協的な解決策がなされたのですが、そうこうしているうちに、TVそのものの位置づけもどんどん変わってきました。この変化に気づかない放送業者はいずれ行き詰るのは間違いないのですが、問題はそれだけではなく、日本そのものがグローバルな外部環境の変化に追随できなくなることに繋がるのです。
今や、日本のTV業界は、コンテンツの貧困さと既存放送局の既得権益に阻まれて、ベトナムにも追い越されているのではないかと感じています。