このページはJavaScriptを使用しています。
ご使用中のブラウザはJavaScriptが無効になっているか、JavaScriptに対応していません。
サイトを正しく表示、ご利用いただくには、
JavaScriptを有効にするか、JavaScriptが使用可能なブラウザでアクセスして下さい。

ベトナム人の価値観で留意するべきこと

今やたくさんの企業がベトナムに展開されるようになりました。それよりも海外展開していない企業の多くでも、ベトナム人の技能実習生や留学生、卒業生を雇用しています。これに伴い、ベトナム人の人事労務に関して様々な課題がある一方、そのほとんどが異文化コミュニケーションに根差した問題が顕著に見られるようになってきました。

私どものところにも、多くの企業からベトナム人の労務問題に関するご相談が寄せられる一方、赴任前研修などのセミナーでも異文化コミュニケーションに関するテーマについてのご要望が増えています。ベトナム人のマネジメントについて問題だと感じている日本人からの課題認識のほとんどは、ベトナム人自身の問題というよりも、受け入れる側である日本企業、そして日本人経営責任者自身の日本人であるがゆえの特殊な価値観、考え方に基づくものが多いのが実態だと思っています。過去のブログでも、日本人自身の特徴の理解が出発点であるということについて述べていますが、まず重要なのはベトナム人の価値観や考え方の違いについて認識するべきことです。

昨今では、 不幸にもベトナム人による日本国内での犯罪件数も増えています。滞在者数が増えればその傾向が出てくるのは仕方がありませんが、受け入れ側である日本企業側の問題がそういった社会問題を増長している面は否定できません。ベトナム現地展開での雇用においても、日本での実習生や留学生の雇用においても、ベトナム人を単なる安価な労働力として扱っている企業の事例を見聞きするにつれ大変心を痛めています。もう少し相手の立場にたって、そもそも文化的、歴史的背景から価値観や考え方が違う人を雇用しているという認識を持ってマネジメントを行えば、教育訓練をきめ細かく行うことで能力を発揮して生産性も上がり、社内外での犯罪も少なくなるでしょうし、行方不明になって不法滞在に追い込むこともなくなるのではないでしょうか。

日本人にとって重要な異文化コミュニケーションについて留意すべき点は多くあります。私どもも海外赴任前研修だけでなく、日本でベトナム人を雇用している企業むけに「ベトナム人異文化コミュニケーションセミナー」も提供しておりますので、詳しくは個別にご相談いただければと思います。

細かい点は個別相談やセミナーで説明させていただきますが、異文化コミュニケーションで留意するべき項目について若干お伝えしたいと思います。

① 個人主義の価値観

日本人はチームワークで成果を挙げる、成果はチームの共有の成果という価値観の土壌があります。いわゆる「滅私奉公」という考え方にほとんどの日本人は違和感を感じることはありません。逆にチームの足を引っ張ったり、個人プレイに走る人を見ると嫌悪感を覚えることが一般的です。これはある意味日本人の強みですが、ベトナム人に限らず外国人の多くの感覚は個人主義が基本です。特にベトナムでは個人の意思と努力によって能力を高め、その能力に見合ったレベルの仕事を獲得すると考えられています。そのため、会社が研修の機会を与えてくれるときには率先して手を挙げて参加します。しかし、それは会社の業績アップにつなげる研修とは捉えていません。あくまで個人のスキルアップを基準に考えています。その結果獲得した能力や職位を踏み台にして転職することが価値観として優先しています。会社が教育訓練の投資をしても、結局退職されたら元も子もないと考えてしまいがちですが、そういう価値観が一般的な人々の能力とモチベーションを高めていくかという点に留意が必要です。

② プライドの高さへの理解

能力も高くないのにやたらと言い訳が多い、指示通りやらない、自分の非を認めない・・・ベトナム人は使いづらいと悩まれる日本企業の経営者からの声を聞きます。ここが異文化コミュニケーションで一番ギャップが出るところで、感情的なもつれから対立する点になります。日本人は「褒めて育てる」やり方が非常に苦手です。どちらかというと感情を相手にぶつけて怒り、自己反省を求めて何が悪いかを気づかせるのが人の育成の基本だと考えている人が多くいます。しかし、このやり方は外国人にはほとんど通じないと考えるべきです。言葉が通じない職場で働いている外国人にとって、一番ストレスとなるのは自分自身のアイデンティティ、つまりプライドを傷つけられる言動を受けることです。現地の日本企業で働いたり、日本に来て働こうとする人材は、一般的にチャレンジ精神とプライドは非常に高いといえます。そういった人は、だいたい自分の非を認めることができません。責任を追及されて失敗を認めたり、わからないことを人に聞くという行為は、自分が立脚している根拠を失うのと同じぐらいなのです。まして、他の目がある中で、面罵されようものなら、生きていけないぐらいに悲観するだけでなく、その相手を心から憎んでしまうぐらいのことだと理解しなければなりません。日本人から見れば「素直じゃない」「可愛げがない」と受け止められてしまいます。しかし、そういう価値観の違う人を相手にしているという認識がどうしても欠かせません。

③ 勤勉・まじめ・器用・知識欲の高さに対する注意点

外国人社員の中でもベトナム人は、比較的日本人に近いという印象を持っておられる方も多いでしょう。それは勤勉であるとか、まじめ、器用といったモノづくりでは最も能力発揮に求められる資質を備えているところがあるからだと思います。それだけでなく、向学心や知識欲が高いので、理屈ばかりこねる日本人よりも頼りになると評価される経営者もいます。しかし、これらは良いことばかりではない点にも注意が必要です。確かに就業中は勤勉でまじめですが、きっちり上司が管理をしていないと、余裕が出ると手抜きをしがちなところがあります。少しでも工夫して改善につなげていく自主性のある勤勉さではありません。ある面マイペースであり、個人の価値観を基準に仕事をしているため「努力」に対する価値は認めない傾向があります。また、理論的で知識欲があるのは良いのですが、管理が甘く、経験を積み重ねるよりも楽をしがちなため、約束を守るコミットメントが不得意で、ややもすれば知ったかぶりで勝手な判断をしてしまうこともある点に要注意です。

海外社員の能力を最大に活かすためには、日本人の異文化コミュニケーション力の向上が必須であると思っています。