勉強しない日本人が没落していく未来
経営者セミナーは花盛りですが、本当に経営人材の育成成果は上がっているでしょうか。よく理解していないテーマについては、なかなか今さら集合研修で的外れの質問をしたら恥をかくのではないかと、地位が上がっていく人ほど自尊心が邪魔をして、研修に取り組む姿勢も素直でなく時間の無駄と感じる人が多いなと思うこともしばしばです。
経験やスキルは人それぞれです。しかし、伸びる人材ほど「素直」に新たな知識を吸収しているように思います。
今までベトナム人の経営者向けに10年以上の研修講師をやっておりますが、本当に関心しますのは、経営者といえども若い人が多く、その分チャレンジ精神があり研修での学びも貪欲です。もちろん感じたことを積極的に質問してきます。これは国民性にもよることが大きいですが、日本人のように質問をすることが「わからない、知らないことを他人からバカにされるのではないかという意識は全くなく、成長性という点では遥かに日本人を凌駕しています。
ベトナム人以外にも、出身企業の幹部職研修の講義をしたことも何度かあります。しかし質問はほとんどしないので、理解できているのかどうかすらもわからないことが多いように思います。その割には研修後のアンケートでは、よく理解できなかっただの、わかりきったことを教えられても有益とは思えず、研修に参加させられるのは時間の無駄と感じるといったようなコメントをよく見ます。一般に大手企業社員ほどプライドが高く、現場の問題を一番よくわかっているのは自分であって、現場を知らない講師から素直に学ぶという姿勢が低く、研修に対するモチベーションはかなり低いように思います。
一方、研修が時間の無駄と言い切る一方で、本人はどこまで自己研鑽に励んでいるかと言えば、国際的な統計を見ても、日本人ほど社外で勉強しない国民はいないことは明白です。
リスキリングだとか新たな時代の変革に向けてスキルの見直しが求められているにもかかわらず、何十年もぬるま湯に漬かりすぎてきたためか、個人としての国際競争能力という点での危機感があまりにも希薄なように思います。働きすぎはいけない、もっと残業を削減してワークライフバランス重視が叫ばれていますが、それで浮いた時間を単に自分の好きなことに浪費している日本人があまりにも多い結果、昨今の産業全体の国際競争力の大幅低下の原因になっているようか気がしてなりません。
もっと働けとは言いません。しかし、もっと自分の能力を向上させるために投資をするべきだと思います。少し極端かも知れませんが、飲みにいったり旅行やレジャーで遊びまわる時間とお金があるのなら、その半分でも自分自身のスキルアップで単位時間あたりに生み出せる付加価値を増やすために勉強する時間に振り向けることができないのでしょうか。勉強しない国民の比率が増えるほど、国際競争力に負け、結果としてどんどん貧しくなっている道を辿っているような気がして仕方がありません。
私たちが蓄えてきた富と有限の時間。これをどう使うかという意識一つで、将来何倍にも付加価値を生む、つまり子孫に富と繁栄をつないでいけるのかが決定づけられると思います。今の自分たちが楽しければ良いという意識だけでおカネを使いつづけ、少子化も自分のこととしての問題意識もなく、タックスイーターが跋扈するノイジーマイノリティ社会は間違いなく衰退していくでしょう。
それを解決するには、社会を構成する一人ひとりが、自分の利益だけを行動基準とするのではなく、自分たちの子供たちの幸福のために新たな付加価値をどう残せるのか、その付加価値を創出するために何に投資するのか、どう能力を高めているのかという意識改革しかないように思うのです。
「私は英語は不得意です」・・・国や社会は何年皆さんに英語を教えてきたのですか?親の世代は私たちにいくら教育投資をしてきたのでしょうか?無駄な投資をしてしまったことになります。
日本人は楽をしすぎています。政府や他人のせいにしすぎています。個人の権利を最優先に考えすぎです。子どもたちの次世代のための生き方が問われています。
「勉強せざるもの食うべからず!」の時代に生きているのです。教育無償化は国にとっての将来投資という観点から捉えるべきです。無償化をしたら子どもの数が増えると本当に思われますか? 勉強し獲得した成果は本人だけでなく社会の資産でもあります。勉強の成果として資格を取得した人に給付金などの形で還付をする方がよほど効果的ではないかと思うのです。
勉強しない日本人が没落していく未来を見ずに一生を終えたいものです。