外国人から見た日本人の弱みの本質
日本人は他人の目を非常に気にします。外国人から褒められたり、良くない点について指摘されることに対することに気になって仕方がありません。村社会で生きてきた祖先から引き継いできたDNAが刷り込まれていて、言葉よりも阿吽の呼吸での空気感やマナーといったものに大事にし、知らずしらずの間に法律よりも自分たちの価値観を優先した同調圧力が当たり前と思っていることすら気づいていない感じがします。
何をさせても柔軟性がなく仕事が遅いと思われている日本人
外国人から見ると、日本人はきっちりルールを守り、約束したことはきちんとやり遂げ、時間にもきっちりしているという評価を受けていると誤解していませんでしょうか。
これは日本人の優秀性が世界から認められている素晴らしいことだ・・・と一方的に思われているのではないでしょうか。でもその日本人の特徴は一面しか見えていません。良いところもあれば一方で悪いこともあるのが当然です。アメリカ、欧州、アジアで10数年駐在してきた経験から、外国人は実際のところ日本人に対してどう見ているのでしょうか。それは決して優秀だと思っているのではないのです。
グローバルビジネスにおいて日本人の一番の特徴として言われているのが、「何をするにしてもスピード感に欠け生産性が低い」ということです。ほとんど国際経験のない日本人にとっては大変意外と思われるでしょう。
こんなに勤勉で真面目と言われ、きっちり完成度の高い仕事をするのだから仕事のスピードも速いはず、高度成長時代以降のモノづくりにおける生産性の高さは世界中から評価されているのだから、その見方は間違っていると思うのではないでしょうか。しかしデジタル化社会が加速するにつれて、モノづくりだけでなくあらゆるビジネス領域において、日本人が本来持っていた誇れるべき優秀性が最早通用しなくなっていることがデータでも証明されています。その見たくない事実を見ようとしていないだけです。
典型的な日本人の特徴
日本人が持っている最も典型的な文化構造を理解するときに、非常に有名な異文化研究の一つに、オランダの比較文化学者のホフステード博士が国民の価値観を6次元で分析したホフステードモデルというものがあります。
世界中の国民の価値観の傾向を分析したときに、日本人が最も突出した文化的特徴のある分野が3つあります。
①不確実性回避の傾向 : 見通すことのできな未来を脅威と感じ、不確実を避ける制度や手法を重視する傾向
②長期的志向 : 短期的視点でなく、長期的視点で将来を見据えて物事を決定することを重視する傾向
③男性性 : 自己主張が強く、社会における成功や称賛に対する目標意識が高い傾向
他の次元では権威主義や個人主義、楽観・悲観的といったものがありますが、これら3つの次元で最も日本人が特徴的に出てくる領域です。何となくわかるのではないでしょうか。
中でも断トツの傾向を示すのが①の不確実性回避です。具体的には「成功することよりも失敗しないことが大事」な文化土壌があり、失敗することを極端に恐れる傾向が強いのが日本人なのです。
日本人が持つ価値観として、「前例にないことはやらない」というのは日常当たり前の感覚をもっています。リスクがあって前例のないことには一切挑戦しない保守的組織文化が蔓延り、「失敗したらどうしよう」「失敗したら誰が責任を取るんだ」「私は聞いていない」・・・こういった会話が普通に交わされるのが日本人の社会なのです。
「何度成功を積み重ねても一度でも失敗すれば非難される」文化土壌にあって、他人の成功に対しては称賛より妬む感情を持ち、何事も成果よりもプロセスを重視する傾向がイノベーションを阻み、結果としてスピード感に欠け低生産性につながっているのです。
コロナ規制緩和の遅さに見るスピード感の欠如とリスク過敏症
4月に2年4か月ぶりに海外渡航したことで、改めて日本のスピード感のなさと、失敗を恐れる日本人の特徴を改めて感じました。6月から大幅に入国制限が大幅に緩和され、いよいよ外国人観光客の入国も始まるとの報道がなされていますが、その動きはあまりにも遅すぎます。
遂にアメリカも入国時の陰性証明が不要となるようですが、日本は本日時点ではどの国からの入国に対しても渡航72時間前までの現地でのPCR検査による政府フォーマットの陰性証明が入国条件です。また外国人観光客の入国については添乗員付きの団体ツアーのみでマスク全着用を誓約させることを条件とするなど、政府の対応がG7の先進諸外国やASEANのアジア圏の国々と比べて、後手に回っているというのは残念ながら事実であり、この状態で大幅に観光客需要が戻るとはあまり考えられません。
少なくとも入国時の陰性証明と待期期間の廃止と、個人旅行の無条件の受け入れ、入国上限数の撤廃が必要です。ただ、ビザ発給の管理や旅行保険の強制加入、ワクチンの接種証明はあっても良いとは思います。
政府による規制緩和を進めてもらわないと実行性が上がらないとは思うのですが、実際のところ、日本人の国民感情としては水際対策の緩和については否定的な人が多いのです。ここに日本人の島国根性が表れているように思えるのです。
先日、海外を飛び回っているタレントの千原兄弟のせいじさんが、日本入国時の規制について発展途上国並みだと批判をしたとき、ネットで大炎上しました。私のように最近海外渡航した者から見ると、せいじさんが言われていることは至極まともです。しかし、一般の日本人にとって海外から入国する人はウィルスを持ち込んでくる原因であると思い込んでいる傾向があります。
実際、多くの人がせいじさんを非難しました。自分勝手だとか、日本には日本のルールがあって、それを承知で海外に渡航したのに文句を言うのがおかしい云々・・。また世論調査によれば入国時の水際対策を今まで通り厳格に行うべきだという人が72%もいます。しかし、その日本のルールそのものが世界の動きや変化スピードについていけていないのです。ずっと日本で生活して何不自由ない人にとっては、海外からの入国者を制限することに何の痛みも感じていないのだと思います。典型的なリスク過敏症という持病を抱えているのが日本人ではないでしょうか。
インバウンド市場はこの2年間で99%消滅しました。インバウンド市場に直接携わっていない人にとっては何も関係ないと思われるのでしょうが、人の動きが止まるということは観光や飲食業だけの問題ではなく、経済全体のスピードや生産性を大きく毀損していることに気づかない人が多いことが大変残念です。
実際、現在日本では毎日の新規感染者数は低下傾向にあるとは言え、一日あたり1万5千人ぐらいが続いています。ところが例として私が出張したベトナムでは、3月中旬に一日あたり30数万人以上の新規感染者ピークの後に急減し、今や一日あたりわずか数百人となっています。
ベトナム政府では既に新規感染者数を問題にしておらず、3月上旬には重症化しない一般の風邪と同じように扱うことで、一気に規制緩和に動き、日本からはノービザOKで入国時の陰性証明もワクチン証明も待期期間も即刻廃止しました。街ではマスクをしている人はほとんどいなくなりましたし、レストランでもアクリル板などパティションは全くありませんし検温もしていません。今や東南アジア全域はこのような状況です。
ところが日本では5月末までは入国者全員に現地で陰性証明書を取得させて、かつ到着時の検疫で抗体検査を行い、主に欧米を除く国からの入国者に1週間の自主待機を求めていました。むしろ日本人が外国に入国時に要求されるのならわかるのですが・・・。
世界各国では日々刻刻と状況が緩和の方向で変化しています。日本も6月10日から大幅に緩和されたとは言え、そのスピードはどんどん世界の動きから遅れています。緑、黄色、赤の3種類の国に分けて入国時の条件を区分けしていますが、入国時のPCR検査廃止が世の流れであり、状況によっては再規制を厭わないつもりで、より柔軟にスピード感を持って変化に対応していくことが重要ではないかと思うのです。