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ベトナム語はシンチャオ、カムオンでは通じない

ベトナム語は大変難しいです。流暢に話せる日本人は極めて少なく、少しでも話せるとベトナム人から驚かれることがしばしばです。私自身ベトナム勤務は4年間でしたが、実際会社での言語はほとんどが英語で通用していたので、ベトナム語をある意味真剣に話す必要性がなかったとも言えます。

もちろん日常生活ではベトナム語を話した方が便利なので、勤務時には家庭教師に来ていただいて1年ほど勉強したのですが、あまり流暢に話せないまま半分挫折した状態で帰国しました。その後もベトナムに関連した仕事を続けることができたので、ベトナム人とベトナム語でコミュニケーションを図る機会を持つことができています。ほぼほぼ日常会話レベルであればだいたい意思疎通ができるのですが、言語と文化は一体のものであることを最近痛感しております。

ベトナムから帰国後、ベトナム人経営者向けに研修講師の仕事をさせていただいていますが、日本語からベトナム語へ通訳を介しての講義だけでは、何となく意思疎通の物足りなさを感じます。もっと深くベトナム人の考え方や価値観を踏まえたコミュニケーションには直接会話は欠かせません。

またコロナのためこの2年半の間渡航することができず、ベトナム人と直接対面でのコミュニケーションが図れなかったためか、4月の出張では私自身のベトナム語のレベルが格段に落ちていることを実感しました。以前なら講義の冒頭で自己紹介ぐらいはある程度ベトナム語でできていたのですが、原稿なしに自由に話せなくなっている自分自身の語学力低下に愕然としました。研修以外でも買い物や食事に行ったときに、ベトナム人の店員の会話が詰まってしまいました。

一方、YouTubeなどでも駐在員でありながら流暢にベトナム語で情報発信されている方の動画を見て、もっと真剣に勉強してベトナム語を話せるようになりたいと思うようになってきました。また日本にも多くのベトナム人が働きに来ており、彼らが日本で抱えるいろんな悩みや問題点にも何か支援ができないかを考えたとき、ベトナム語で直接仕事レベルの会話ができるようになるべきと考えるようになってきたのです。

もう一度ベトナム語のテキストをみて感じたこと

振り返ってみればベトナム語学習も実に浅い勉強だったと思います。だいたい日本人がベトナム語に挫折する一番の要因は、母音と子音の体系の違いと上げ下げの声調リズムの有無にあります。英語でも挫折する日本人が多いというのもほぼ同じだと思っています。

ベトナム語はさらにその違いが英語以上に大きいため、日本語は母音が「あいうえお」の5種類だけで、子音だけの発音はなくて五十音は全て子音+母音の組み合わせでできていることに加えて、声調によって意味が変わることはまれです(橋と箸など少しはありますが)。この母音、子音、声調でつまずくのは、英語に限らず外国語を無理やりカタカナに置き換えて覚えようとするからです。特にベトナム語でこれをやってしまうとちんぷんかんぷんになってしまいます。聞いている方は全くの意味不明です。日本人の私でも日本人がベトナム語をカタカナで話されても意味がさっぱりわからない場面に遭遇することがあります。

まず日本人は「こんにちは」を「シン・チャオ」、「ありがとう」を「カム・オン」と学びます。初心者用のテキストにそう書いてありますが、実際このカタカナ読みでは外国人だから類推はしてくれますが、まずは理解できないことが多いです。英語でも他の言語でも同じですが、現地の言葉を無理やり日本語のカタカナに当てはめることによって全く意味不明のものになってしまいます。英語に限らず多くの国の言葉を学ぶ際に最もやってはいけないことが現地語のカタカナ変換だと思っています。

もう一つ大事なのが、脳内で日本語変換を行わないように訓練することです。私もアメリカに赴任するときは、語学が苦手で一生懸命聞いた言葉を逐一頭の中で日本語に対訳して、日本語で考えて、そして英語に変換して話すというプロセスを辿っていたものです。それでは会話が成立しません。現地の言葉を耳で聞いて、日本語のフィルターを一切噛まさずに、脳内で現地語で考えて、現地語で話せるようになることが重要です。つまり頭の中で日本語に置き換えないようになるまで、耳からどんどん情報を入れることで、ある日突然それができるようになるのです。

ベトナム語においても、実際日常会話で「シン・チャオ」なんて言いませんし、驚くべきことにベトナム人同士の会話では、日本人ほど「ありがとう」を連発するようなことはありません。「カム・オン」の発音は一旦横に置いておいて、日本人がベトナム人に「カム・オン」というと怪訝な受けとめをされるのを知らない人がほとんどではないでしょうか。

相手に感謝の言葉を述べるのは当たり前だと考えるのは日本人の思考です。それならベトナム人はカムオンとは言わないのかということではありません。ベトナム人にとって「カムオン」と言われたときの受けとめは、「カムオン・・何?」なのです。単なる「カムオン」では何に対して感謝の言葉を言っているのかわからないのです。「あなたの私にしてくれた・・に対してありがたく思う」という言葉にしないと、単に「THANKS!」と言われているだけで、むしろ何か冷たい言葉を投げかけられたという印象を持つというのは、なかなか私自身もわかりませんでした。

特に仲良くなった相手に対してはお互いが助け合うのが当たり前で、その行為一つひとつに「カムオン」と言われると、他人行儀の信頼のおけない相手と思われてしまうということをわかるには、対訳型で語学を習得しようとするのでは限界があります。

挨拶の「シンチャオ」のそうです。誰も「シンチャオ」なんてほとんど言いません。「チャオ誰それ」というように必ず挨拶の対象をチャオの後につけるのが一般的です。「シンチャオ」だけ言われると親密度が全く感じられないのです。

対訳からの脱却を何としても実現したいと思い、改めてベトナム語を勉強しなおそうと考えているところです。テキストを振り返ってみると、ほとんどが耳にした単語ばかりなので、おそらく耳で聞いたままベトナム語で考えて話せるようになる壁は乗り越えられそうです。

語には異文化の理解がなくしては相手に伝わらないという基本に立ち返ってもう一度勉強したいと思います。