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ものづくりワールド東京で見えてきた製造業界の動向

     

6月19日から21日の3日間、東京ビッグサイトで「ものづくりワールド東京」の展示会が開催されました。機械部品を中心とした製造業の展示会としては日本最大で、東京の他、大阪や名古屋、九州と4か所で開催されるため、製造業の動向を知り、調達先や機械部品の販路開拓を検討するうえで有益な展示会です。中でも東京での開催は出展社数が2100社以上、来場者数が7万5千以上と最大規模を誇っております。

年々海外からの出展社や来場者も増えており、日本のメーカーとのマッチングを求め、ソリューション提案を行うことで新規顧客の開発につなげています。特に日本の製造業との協業関係が進展している中国や韓国、台湾、ベトナム等のアジア各国の製造業の視線が集まっています。

日本の製造業が何が課題でどういう方向を目指しているのかを探り、アジア諸外国にとっての日本市場でのビジネスチャンスをつなげていくことで、日本企業とアジア企業間のサプライチェーンの強靭化に繋がるということを改めて感じとることができました。

今回は私が支援しているベトナム製造会社の日本での提案と取引拡大のため、展示会視察および現在取引中の企業訪問に随行しましたが、今回の支援活動を通じて、アジア企業が日本企業との取引を拡大するための販路開拓支援のニーズも相当拡大しているということも実感しました。

そこで今回の展示会を通じて気になったことを3点について述べてみたいと思います。

1.日本企業への提案はAIによるソリューションが競争優位につながる

日本、海外に限らず中小企業の製造加工や製造受託の提案が多いのはいつもの展示会とは変わっていません。ただ、これらの提案においては、単に品質や精密加工技術の訴求だけでは競争に勝てない傾向が明らかであったと思います。

今回の特徴として挙げられるのが、AIを活用したソリューション提案が極めて目立っていました。中でも3Dプリンターによる開発試作を一括受託するといった展示をしている企業が増えてきたように思います。多品種少ロット、短納期で試作しますという事業は早晩行き詰まると思います。3Dプリンターで作られた試作品の完成度はかなり高くなっていますし、車の設計開発もデザインや形状を確認する程度なら3Dプリンターで一貫対応できるまでになっています。

さらにAI活用によって部品や資材調達の革命が起きつつあります。製品の設計開発ではとんでもない量の図面が作成されます。ところが他社の実物を3次元スキャンしたデータを取り込み、AIが過去の設計データと自動比較して詳細図面をおこすところまで来ているのです。リバースエンジニアリングといえば恰好が良いかも知れませんが、いつでもどこでも短時間にコピー製品の図面ができるようになってきたという現実を直視するべきだと思いました。

2.脱中国の動きが一層加速している

昨年10月のものづくりワールド大阪、そして今年5月の名古屋での展示会でも感じていたのですが、日本の製造業は脱中国の動きが顕著となってきました。

今回東京での展示会でも全く同じ傾向でした。ものづくりワールド東京では3日間連続して会場視察をしたのですが、来場者は非常に多くで大変混雑していました・・・但し、中国企業が集まっている中国パビリオンの一角を除き・・・・。

ほとんどの来場者が中国企業のブースの前を素通りするのです。出展社はどこも手持無沙汰でした。昨年の大阪での開催からこの傾向が強くなってきました。名古屋も同じです。理由は当然皆さんが感じている通りです。今や中国事業はリスクしかありません。中国では不動産や金融の行き詰まりから、実態経済が縮小しているということに限らず、極めて政治的問題から中国で事業を続けることの危うさを多くの企業が真剣に感じています。

支援先のベトナム企業と取引のある日本企業も出展されていて、そこの経営者とじっくり話をする機会がありました。米国の自動車業界向けの機械を輸出しておられるのですが、その納入先からは使っている中国製部品をリストアップするように言われ、このまま中国製部品の依存度が高いままではサプライヤーから外される危機感があるとのことでした。したがってベトナムからの調達を是非増やしたいとの話をいただきました。

他にも出展されている企業を話をし、また日本企業を訪問したときにも、機械部品の中国からの調達を意図的に減らしたいので、ベトナムでの加工対応に期待しているとの話が多かったように思います。

3.公的機関による展示会出展支援に依存していては訴求力が低い

ものづくりワールドのような大きな展示会に出展するには、小規模ブースの出展料だけでも100万円近くかかりますし、内装デザインや工事代を入れると最低でも200万円以上の経費がかかるため、中小企業にとっては単独でブースを設けるのは資金的にも厳しいところです。

したがって多くの公的機関が、中小企業支援政策として、つまり税金を使って公的機関名で中規模のブースを構え、その中に数社から十数社の企業を募集して出展させています。それはそれは区や市、都道府県単位、商工会などものすごい数です。

しかし税金の費用対効果という点で大きな問題があると思います。だいたいこういった公的機関がオーナーとなって出展する場合は、統一デザインをどこかの業者に丸投げして作りますが、ビジネスのコンセプトづくりという観点がどことも極めて弱いです。都道府県名のブースが出展されていても、来場者には統一的な訴求力がありません。出展企業ごとに1枚の写真付きポスターとサンプルやカタログを並べるフロントスペースが与えられるだけです。そもそも〇〇県、△市といった商品はありません。顧客はメーカーであって、顧客価値を訴求するのに公的機関名など何も意味もないということに気づいていないのです。

これは公的機関自身がビジネスの観点を持っていない悲しさに起因すると思っています。もし公的機関がこういったB2Bビジネスの展示会支援を行うのであれば、製品紹介の陳列ブースではなく、業界に特化したソリューションを提案する顧客とのマッチング商談会のようなものの方がより効果が高いと思います。もちろん公的機関も商談会もやってはいますが、イベントを行うことだけが目的化し、何人動員したといったKPIしか持ちえない発想が問題なのです。イベント後が大切ということに着目し、もっとビジネスマッチングの専門家を活用する場を提供する方が成果につながるということに気づいてもらいたいものです。