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次回から大きく変わる事業再構築補助金

大型の補助金として多くの企業が何とか採択されたいと挑戦されている「事業再構築補助金」は、規模が大きいだけに採択基準だけでなく交付決定後の事業実施後の確定審査も大変厳しいところです。簡単に多額の補助金がもらえると勘違いし、申請のための事業計画書を手練手管のコンサルタントに”丸投げ作文”してもらい、書類審査で審査員をうまく納得させて採択されたところも多いようです。

しかし、実際に再構築事業を実施する段階になって、後払いの補助金が確定審査後に支払われるまでに、金融機関からつなぎ融資を受けられなかったり、肝心の事業実施するにあたって計画通りに協力企業の賛同を得られないことや、再構築事業のコアノウハウを依存する従業員が辞めてしまってどうにもいかなくなって辞退した企業が相当数いるようです。

認定支援機関やコンサルタントに補助金申請での計画策定支援を依頼すると採択時点で成功報酬を支払うことになります。採択後の再構築事業の「交付申請」や「交付決定」さらに事業実施の支援までは支援範囲に入っていないため、結局その後の手続きで頓挫してしまって採択辞退に追い込まれ、成功報酬の支払いや補助金申請準備にかかった時間や経費の無駄が発生します。

第10回申請から中身が大きく変わることに要注意

事業再構築補助金は今まで9回の公募がなされ、第8回の結果はまもなく公表され、第9回は3月24日に締め切りこれから採択審査の段階に入ります。なお、第10回は3月30日から公募が開始されており6月30日が締め切りとなります。

これから新たに検討される方や、第8回目で惜しくも不採択となった企業の方々も、第10回で何とか採択されるように準備を検討したいと思われていることでしょう。しかしながら、これから公募される第10回の事業再構築補助金は、予算年度が異なることもあり、今までの公募状況の問題点やコロナ後を見据えた産業構造の再構築をより前面に打ち出す主旨から、大幅に申請枠の見直しや審査項目が改正されています。

第9回までと同じような観点で審査されるのではないという点が要注意です。事業再構築補助金の公募要領は公募回を重ねるごとに都度改訂されてきましたが、今回の改定はかなり抜本的です。

第10回の公募要領における事業再構築補助金事業の概要では次のように書かれています。

第10回公募からは、コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者への支援として「物価高騰対策・回復再生応援枠」を措置することに加え、産業構造の変化等により事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者への支援として「産業構造転換枠」、海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーン及び地域産業の活性化に取り組む事業者(製造業)への支援として「サプライチェーン強靱化枠」、成長分野への事業再構築を支援するべく売上高等減少要件を撤廃した「成長枠」を新設するなど、ポストコロナ社会を見据えた未来社会を切り拓くための取組を重点的に支援していきます。

単に枠がより細かくなったということで、いろんなニーズに対応する補助金へ改訂されたというのではありません。まず、一番最初に押さえておかねばならないのは、第9回までにあって、その大半の事業者が利用していた申請枠である「通常枠」が消えており、それが成長分野への事業再構築を支援する「成長枠」に衣替えしている点です。

この「成長枠」には売上等減少要件を撤廃している点が要注意です。第9回までの審査項目の「既存事業の売上減少が著しくコロナの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を必要性や緊要性が高い」というのが、第10回から消えてしまっています。つまりコロナの影響で売り上げが大きく落ち込んで経営が苦しいので、少しでも補助金をもらって一息つきたいという思いで申請した案件は悉く排除される方向性を明確にしてきたと思います。

しかも「成長枠」は非常に曲者です。つまり成長する分野で事業再構築に取り組むのでなければ認めないというものです。さらにこの成長する業界は事務局がいろんなデータ等から指定することになっています。応募時点で成長業界への再構築でなければ審査もされないという意味になります。この成長分野の指定は事務局のホームページで公表されており、今後業界団体が成長する業態であると申請して認められれば追加されていくとしていますが、今までと同じように、ある業界での事業がコロナの影響で厳しいからと、同じ業界でB2BからB2Cに対象顧客を変えるような取り組みでは不十分ということです。例えば、飲食業や建設業は今のところ成長業界リストから外れています。飲食店の業績が厳しいからと、持ち帰り事業を始めるようなレベルではまず受付もされないでしょう。

改訂審査項目から読み解く採択可否の分岐点

今回審査項目も大幅に改定されています。審査はこの公表されている審査項目・加点項目を踏まえて行われることを考えると、これらの項目の一部には適合するが、他は再構築事業とは関連しないというものがあれば採択可能性はかなり低くなると思われます。

とりわけ第10回の事業化点と再構築点の記述がかなり変更となっております。その変更点から読み解くと採択される条件が浮かび上がってきます。

①事業再構築で取り組む事業の市場ニーズの分析と市場規模の大きさが明確かどうか

②事業再構築で新規に取り組む事業の競合分析ができているか

③事業再構築に取り組むにあたっての課題の把握と解決方法が明確で妥当か

④事業再構築事業に取り組む実施体制や財務状況の根拠が示されているか

⑤自社のSWOT分析から事業再構築の必要性が複数の選択肢から適切かどうか

⑥リスクの高い大胆な事業再構築指針に沿ったものか

⑦補助事業としての費用対効果が具体的に根拠のあるもので、既存事業とのシナジー効果が示されているか

⑧先端的なデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルとなっているか

⑨地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献する事業か

⑩再構築事業がポスト・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した感染症危機に強いものか

第9回までの審査項目には、補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、事業遂行方法やスケジュールが妥当かどうかであったり、既存事業の売上の減少が著しいなどコロナの影響で深刻な被害が生じているか、また選択と集中でリソースの最適化を図っているか、といった審査項目が含まれていました。ところが今までのような取り組みプロセスについて評価されていたところがほとんどなくなり、客観的な成果についてより具体的な数字根拠から市場分析、競合分析といった外部分析を踏まえ、自社の課題分析と取り組み等について明確に示すことがより求められていると思います。どうでしょうか、自己採点でこれら10項目でそれぞれ5点満点で平均3点以上つまり30点あれば採択合格圏といえるところでしょう。しかし、平均2点台つまり20点に届かないとかなり採択は難しいと思われます。

要するに、今まで挑戦した経験のない新たな事業で「既存の競合に勝ってお客様が買ってくれる根拠は何なのか?」に絞って第三者による評価が参考になると思います。

要注意!重複事業は不採択となることを肝に銘じて

補助金がもらえるからという動機で安易に補助金申請をしたいという経営者があまりにも多いというのを感じます。単に事業が苦しい企業を助けるために補助金をばらまく補助金事業ではありません。

あくまで産業構造改革を国として後押しして、これからのグローバルに活躍できる強い経営体質を持った事業を支えていこうということが本来の目的です。例えば、単に不動産業をやっていて遊休不動産を活用するためにコインパーキングをやってみようとか、民泊施設やコワーキングスペースに改装しようとか、学習塾を新規に開業したり、ゴルフ練習場とかグランピング施設経営などアイデアばかり展開する人が見られますが、まずほとんど採択されることはありません。経営資源の強みとしては保有している立地面で有利な不動産ぐらいしかなく、新規事業のノウハウや強みはフランチャイズ頼み、何となく流行りそうだということだけで申請される人がかなりいると言われています。

よく実施要領を見れば、不動産賃貸、駐車場経営、暗号資産のマイニング等、実質的な労働を伴わない事業又は専ら資産運用的性格の強い事業として、 建築又は購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業など、 具体的な事業再構築の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業は不採択となると明確に示されています。

またもう一点気をつけなければならないのは「重複事業」です。注意すべきなのは次の3つのパターンがあります。

① 一つの企業で事業部制などで複数事業をやっているところが、それぞれ別の事業再構築事業を申請するパターンです。同一法人・事業者が一回の公募で複数申請を行っている事業は重複事業として排除されます。特に、グループ会社が既に実施している事業を実施するなど、再構築事業の内容が、容易に実施可能である事業も該当します。

② テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する他の制度(補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業も「重複事業」にあたります。特に、医療、介護福祉関連事業を事業再構築で取り組みたいという申請はまず不採択となります。すでに国などからの補助金や報酬を収入としている事業は再構築事業とはならないことに注意が必要です。障がい者就労支援事業所や老人ホーム経営、太陽光パネル事業などはまず採択されないと考えても良いでしょう。「福祉」と「太陽光パネル」はNG案件と考えてもよさそうです。

③ 他の法人・事業者と同一又は類似内容の事業での申請も要注意です。これは意図して他の事業者の申請をほとんどそのまま真似たケースだけでなく、コンサルが支援している他の事業者の申請と類似してしまうと「重複案件」とみなされるリスクもあります。経営者自らが計画書を策定するのでなく、コンサルに丸投げしてしまうと同じような内容になってしまう可能性がゼロではありません。意図的に不正申請するのでなければ該当する可能性は低いとは思いますが、コンサルの選び方も注意が必要です。

いずれにしましても現在公募中の第10回から大幅に審査項目が変わり、申請者も減少するだけでなくおそらく採択率も大幅に下がるのではないかと予想されます。宣伝をバンバン打って、採択で報酬を得ることだけに注力しているコンサルに丸投げするのではなく、採択後も事業実施を通じて再構築事業の成功まで伴走できるコンサルを選ぶことができるかがより重要になってくるのではないでしょうか。

補助金コンサルへ丸投げするのではなく、その成長戦略プランを一緒に作り実践していくコンサルタントこそが有益な事業パートナーになり得ると思うのです。