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関西ものづくりワールド展示会で感じた日本の製造事業の未来

世界はコロナ後の世界の激変時代に突入しています。この約3年間はあらゆることがコロナの時代をどう生き残るかが価値判断の根底だったと思います。インバウンド市場はほぼ消えてしまい、観光産業や飲食業界も何とか支援制度で生き延びることが精一杯となっただけでなく、コロナ対応とともにDX化の加速によって在宅ワークやオンライン会議が当たり前の世界になりました。

同時にモノづくりの世界もデジタル革新だけでなく、ウクライナ戦争や中国の専横など世界情勢の不安定化によるサプライチェーンの見直しや原材料高騰、円安加速や事業承継問題や労働力不足による休廃業事業者の増加など経営環境が一気に変化しました。

世界をリードしていたモノづくり大国の日本の製造業も、今や市場面でも技術面、製造面でも競争力の低下が顕著です。特にコロナ禍の期間中、日本国内全体がコロナ対策に振り回され、補助金や支援金給付に依存している間にさらに競争力を失ってしまった感があります。

「日本のものづくりはまだまだ技術面や品質面では世界に冠たる強みを持っていて、日本製品だったら価格は高くても世界で通用する」というのは今や幻想とも言ってよいとのではないでしょうか。日本の産業構造は内需が大きかっただけに、日本人はいつの間にか発想も行動も日本しか見えていない人が多くなったような気がします。高度成長時代には世界にどう挑むか、そのために必死になって世界に追いつけ追い越せで頑張るというのが日本の姿でした。ところが今のようにいくら世界が激変しようとも、円安が加速して物価が値上がりしても給料が上がらないのは、政府の政策や政治が悪いせいだという人が多いのは何故でしょうか。安全保障の問題が日々深刻化しているにも関わらず、メディアは相変わらず既に終わった国葬を問題化しつづけ、特定宗教団体と政治家が関係したことばかり報道しています。

私は海外で長く仕事をしてきたからかも知れませんが、常にグローバルな視点から世界と日本との関係性で物事を考えることが多いです。その意味で、日本でもできる限り海外企業との交流会や展示会に参加することが、今何が起きているのかを知る絶好の機会になります。

この3年間のコロナの影響によって、多くの展示会が中止されてきました。一方、展示会や海外企業との商談会、セミナーや研修もオンライン開催に切り替わりました。確かにオンライン開催は距離の壁を乗り越えることができますし、コスト削減の効果も大きいです。しかし、人と人が直接接することや実物から感じとるリアルイベントの価値はオンラインより遥かに高く、生み出す創造性も対面型の方が効果が高いという調査結果もあるようです。

ものづくりワールド展示会で感じた3つの変化

いよいよコロナによる制約が終息方向が見えてきた今、10月5日から7日までインテックス大阪で行われた「関西ものづくりワールド2022」は、ようやくほぼ制限なく開催された大規模の製造業展示会となりました。

日本で行われた製造業の展示会であるため、精密部品や製造機械技術、製造DX等に特化した企業の出展が多く、いわゆるエレクトロニクス系の企業や大手の自動車関連企業の出展はほとんどなく、日本経済の基盤である中小のものづくり系企業を主体として、製造設計やソリューション技術を訴求した企業が多い展示会でした。

久しぶりの製造系リアル展示会であったことで、新たな業界の変化についていろいろと感じることがありました。その中から3つの変化について述べたいと思います。

①ベトナム企業と日本企業との提携可能性の広がり

ベトナムでのモノづくりはまだ成長過程であり、日本企業の持ち帰り製造拠点として現地子会社を設立してモノづくりを進めてきた経緯があり、ローカルメーカーのモノづくりには品質面や技術対応力で課題が多く、現地に展開した日系組立てメーカーは日系の部品加工メーカーの現地展開を支援していました。

しかし、コロナ前あたりから製造機器の高度化に伴ってローカルメーカーの技術レベルも存在感が出てきました。私の記憶ではおそらくベトナム製造系企業がまとまって日本での展示会に出展したのは初めてではなかったのではないかと思います。その多くは切削金属加工メーカーであったり、部品メーカーであったのですが、日本の同業者との連携補完による顧客拡大で実績を積み上げてきたところが中心であったと思います。

まだまだ課題はありますが、中国や韓国、タイと肩を並べて国単位でのパビリオンで出展したのは画期的な展示会となったと思います。日本企業が自らベトナムに展開しなくても、ものづくりで委託生産先をソーシングすることも可能になってきた時代の変化を感じました。

②地方の中小企業の成長発展には海外とのつながりが必要

地域に根差した中小企業は切削加工やプレス、機械部品産業で強みを持っています。出展した企業も極めて特徴ある製品と製造技術を訴求していて、コロナ禍の中でも生き残りに賭けて頑張っておられます。展示パビリオンでも地方の公的機関が中心になって地域性の高い充実した展示内容でした。ただ残念なのは特徴ある事業を行っていながらも、その地方での取引先の要望に対応する中での展開であり、海外企業との提携や海外展開による需要拡大を模索されておられることはほとんどありませんでした。

地域の支援団体や組合なども海外を視野に入れているところもあまりなく、モノづくり企業として成長発展していくために支援できる余地はかなりあるように感じました。

③モノづくりソリューションに大手企業の存在感が希薄

エレクトロニクス企業や自動車メーカー等は本来自社で製造技術を磨いて発展してきました。ところがそれら大手は自社商品のマーケットには敏感で、大々的なCEショウやモーターショウには積極的に出展しています。しかし、ものづくりワールドのような製造系の機械技術要素や設計・製造ソリューションの展示会にはほとんど関心がなく出展していないのは、ある意味日本の製造業の衰退の一要因になっているのではないかと感じました。

大手製造組み立てメーカーは海外移転とともに、自身の製造技術開発能力が下がってきたのではないでしょうか。ものづくりは下請け企業に要求する調達業務に変化してしまっているようで、製造技術開発と生産そのものを外部委託することが当たり前のビジネスモデルになったころから、日本の製造業の凋落が加速してしまったのではないかという感想を改めて持ちました。

大手メーカーは調達先開発のためにもブースを出展するべきですし、製造業界の資産である中小企業を育てるためにも、特許の無償公開や技術提携や製造ノウハウの共有化によって付加価値創造を産業界全体に貢献する責務があるのではないかと感じた展示会でした。