M&A仲介業者は中小企業の味方か?!
中小企業は深刻な事業承継の課題に直面しています。黒字でありながら承継者がいないために止むを得ず撤退・廃業を選択せざるを得ない企業が増えています。このままでは日本の産業を支えてきた中小企業がどんどん疲弊し、日本経済は国際環境の激変とともに、自ら戦う力を失っていくのは明らかです。
私は今まで日本企業にもっと海外に打って出ることによって成長発展につなげてもらいたいとの思いから、世界で戦う企業を応援し海外展開支援の取組みに注力していました。
しかし、少子化とともに日本企業の危機は日々深刻化しています。労働力不足に対応するために外国人材を活用する取組みが加速し、事業承継支援とともに第三者承継であるM&Aの推進にも力が入っています。国も次々と支援策を打ち出し、事業承継税制や事業承継・引継ぎ補助金の整備が進められています。
また支援機関の充実を図るために、M&A支援機関登録制度もスタートしました。ただ、一方でM&Aの仲介業務を新たな手数料収入の儲け口として着目した、多くの仲介事業者やファイナンシャルアドバイザーが雨後の筍のように乱立してきました。正直申し上げて、中小企業を食い物にして手数料稼ぎに勤しむ悪徳仲介業者が跋扈している印象を持っています。
仲介業者も千差万別ですが、中小企業経営を伴走支援してきたものの立場から見ると、M&A仲介業者や企業M&Aマッチングサイトを運営しているIT事業者の過半は企業経営のことなど視野になく、手数料収入をいかに稼ぐかしか見えていないのではないかと思われる事例が見られるのです。
大手M&A仲介会社の横暴に我慢ならない
某社はM&A仲介のニーズが高まることをいち早く他社に先駆けて見通し、その仲介手数料によるビジネスモデルで事業成功に結びつけたところです。この先見性の素晴らしさを評価して一時は株を買おうかと思ったほどでした。予想通り株価もうなぎ上りでした。
ところが仲介手数料を稼ぐ営業力第一の経営体質となり、とにかく事業承継に困っている経営者に食い込み、何としても事業売却を決断させるために日々営業社員が攻勢をかけます。売り案件と買収先を見つけ出してマッチングさせ、売り手側と買い手側双方から往復ビンタで高額の仲介手数料を掠め取っていきます。この様子を見聞きするにつれ、やはりこのM&A仲介業というのは本質を忘れてしまっているのではないかと感じるようになってきました。営業社員は成約したときのインセンティブが大きいため、企業売却を個人収入のために食い物にしているような気がして非常に嫌な感じでした。
その結果、某最大手の仲介会社は架空売り上げ計上に近い不祥事を起こし、株価はついに暴落してしまいました。ところが同社の先駆者たる経営トップは責任を取っておらず、このような会社の株を買わなくてよかったと思ったものです。
大手の仲介業者は、着手金で多額の手数料を取るだけでなく、紹介もせずに月額料金や中間料金を取るところもあり、成約したときの成功報酬でも売り手、買い手双方から買収金額に借入金も含めた移動総資産に5%以上の手数料を要求します。しかも最低額として1500万以上も取るのです。つまり一件まとめるだけで3000万以上を手にします。たとえ買収金額が数千万であったとしても、それだけ分捕るのですから、企業にとっては根こそぎ持っていかれるといっても良いと思います。
中小企業の事業承継に貢献するM&A仲介
大手企業間の買収案件であればそれだけ取っても良いとは思いますが、元々借入金が多い中小企業のM&Aに移動総資産を基準に仲介手数料を取るのはあくどいと思っています。事業を次世代に承継していくための社会的意義が大きいスモールM&Aは、もっと中小企業の立場に立つべきです。
もし手数料が少ないのでやってられないというのであれば、大手のM&A仲介業者は中小企業のM&Aから一切手を引き、中小企業に寄り添える士業を中心とした経営支援グループに任せるべきでしょう。
中小企業のM&Aに求められる仲介業者の条件は、第一に手数料よりも社会貢献として企業側の立場にたって支援できるかだと思っています。初期相談はもちろん無料、着手金も取らず、成功報酬のみで支援し、しかも売却金額を基準で計算するべきで、最低料金も300万程度で明確にしておくことによる透明性が重要です。
最近の中小企業側の大手M&A業者に対する不満が年を追うごとに高まっているのを見るにつけ、今後はもっと中小企業診断士として中小企業のスモールM&Aにも貢献するべきだと思うようになってきました。
私自身M&A案件に直接関与してきた経験はほとんどありませんが、事業承継に関する国内、海外でのノウハウを蓄積しており、今後は新規事業としてスモールM&Aに関わっていこうと考えています。
特に中小企業の海外事業拠点のM&Aや外資との本体事業のM&Aについてのニーズは高まっていくことは間違いないのですが、そのニーズに対応できるサポーターはまだまだ少ない状況です。今後はこの分野での第一人者になっていくべくビジネスモデルを磨いていくつもりです。
そのために今まで保留していた認定経営革新等支援機関の登録申請を行っているところで、またタイミングを合わせてM&A支援機関登録も検討していきたいと考えています。