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旭化成のような企業が世界を救う

旭化成は世界的に有名な企業です。リチウムイオン電池でノーベル賞を受賞した吉野彰教授を輩出した企業で現在も同社の名誉フェローです。世界の社会文化を支える技術を生み出した吉野教授とともに同社の貢献は非常に大きく称賛されるべきものです。研究開発は実際企業の業績につながるかどうかはわからないなかで、コストもかかり息長く支えていかなければならないもので、利益を上げなければならない企業にとって投資を行い続けるのは厳しいものです。

では旭化成という会社はなぜこのような画期的な発明を支えることができたのでしょうか?

旭化成の経営理念の素晴らしさ

同社のウェブサイトを見れば社長は次のようなメッセージを発信しておられます。

当社はグループ理念「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」を掲げ、世の中の課題に応じた事業展開を行ってまいりました。すなわち、約100年前に“人類文化の向上”を唱えて創業をして以来、「生活基盤の確立」「物資豊富な生活」「豊かで便利・快適な生活」「新興国での需要」といった変遷するニーズに応えるべく歩んでまいりました。今、当社が取り組むべきことは、持続可能な社会の実現であり、サステナビリティの追求と考えています。

企業は何もために事業を行っているのか、企業が世の中に存在している理由はまさにここにあるとの理念に感銘を受けました。人類共通の課題に向き合い、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献していくために私たちが経営を行う価値があるのだという理念があったからこそ、リチウムイオン電池のような人類文化の向上につながる技術が生まれることにつながったと思うのです。

感動を受けた旭化成のCM

企業がメディア宣伝を行う場合は大抵商品がいかに良いのものであるかを訴える「WHAT」の視点からのメッセージがほとんどです。しかし旭化成のTVコマーシャルを見ますと、社会に貢献するための事業、なぜこの事業なのかという「WHY」のメッセージが強烈に伝わってきます。

特に以前からオンエアされているCMの中で、同社が社会貢献活動の一環として、女子高校生を研究ラボに招待する見学会を何度も行っている様子がありました。企業の社会貢献としては、工場見学やグリーンキャンペーン、環境貢献支援などいろいろとあります。しかし旭化成が行っているこの活動は、将来の日本の科学者、特に女性が最も活躍できる分野での理系女子(リケジョ)の輩出に貢献していくことで社会の科学技術の発展につなげたいという思いを実践しているのです。

このCMでは同社社員の女性研究員が化学実験を行っている様子を、キラキラした目で興味深そうにじっと見つめている女子高生の表情をみて、日本の未来はこの子たちにかかっているのだな、旭化成という会社は本当に素晴らしい理念を持っておられるなと改めて感じました。

企業は次世代につなぐことにこそ存在価値がある

企業経営者の中には企業の存在価値を誤解している人が多くいます。企業は利益を上げないと継続できないのだから、利益を上げることが第一の目的であるというのです。それは明らかに間違いです。利益を上がるなら何をやっても良いのでしょうか?それこそ儲かるのであれば人を騙しても良い、人権を無視しても良いというような考えは、残念ながら企業だけに限らず国によってはそういうところも多い世の中です。

企業は利益を生むことよりも事業を通じて価値を生み出し社会の発展に貢献することに責任があります。

なぜなら企業は、私たちの親の世代や先代が教育を受けさせてくれた人材、国や社会が子孫のために教育インフラを作って生み出した人々の能力を賃金という形でお借りして事業に使わせていただいた結果、利益を生み出すことができているのです。

また企業はサプライヤーや他の企業が生み出した技術やノウハウや社会システムの資産を事業に利用できるからこそ、新たな付加価値を創り利益を享受できています。

つまり、企業は事業を通じて新たな価値を生み、無形有形を問わずその価値と人材を次の世代に引き継いでいくことに最大の責任がある社会的基盤そのものなのです。

これを考えたとき、企業経営者は利益を上げるために会社を経営しているわけではないことを改めて自分自身で問い直してもらいたいと思っています。儲からなくなったから、注文が減ったから、後継者がいないから、人の採用が厳しくなったから、といって簡単に会社を廃業しても良いのでしょうか? 今まで育ててきた人材や技術は経営者の私物ではありません。社会の貴重な資産そのものなのです。

全ての企業が旭化成のような大企業と同じことはできませんが、このような理念を戴した経営を行う企業が広がっていくことが日本の経済基盤を立て直していくように思えるのです。