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マスキングテープに学ぶコトづくりマーケティング

先日インテックス大阪で久しぶりに行われた展示会で、ある紙製品のメーカーのブースを訪れたときのことです。そのメーカーは和紙を生かしたデザイン性の高いテーブルマットやコースターに加え、マスキングテープを主力事業として国内外で販路開拓を進めておられています。ブースでは非常に多彩で魅力的なデザインのマスキングテープを展示していました。

私自身はあまりマスキングテープに詳しい知識はなかったのですが、そもそもマスキングテープは、本来建物や家具や自動車などの外装塗装の際に、塗料がはみ出すのを防ぐために使われる和紙製の粘着テープです。簡単に貼ったりはがしたりできる業務用が本来の用途でした。

ところがここ最近、特に日本のテープメーカーがカスタムデザインに対応していく中で、デザイン性の高い様々なテープの品揃えを広げる一方、和風テイストのデザインが海外からも注目を集めるとともに、かわいい雑貨として多くの文具店や雑貨店にたくさんの色柄のものが広がってきました。

色や絵柄、幅、長さなどの品揃えが豊富になるに加え、テープ自体は和紙でできているので文字や絵も描け簡単に貼りはがしができることから、オリジナルのラベルがわりに使ったり、メモとして手帳に貼ったりできます。またラッピングの飾りやちぎり絵にも活用できるなど、どんどん芸術素材として趣味的な用途も広がってきたのです。

コトづくりのマーケティングへの転換

展示会ブースを訪問して様々な気づきを得ることができました。製造業としてのこれからのマーケティング戦略のあり方についてのケーススタディになるようにも思いました。前述のようにマスキングテープは本来は工業用製品です。塗装を仕事にしている工務店や家具メーカー、自動車の修理などにはなくてはならないものです。ただ製品自体は単価が低くて量がはけるものではありません。いわば粘着度を下げた紙製のガムテープのようなものです。日本の紙製品メーカーとして海外産品とまともに競争して生き残れる事業分野ではなくなっていました。

しかし、たまたまか意図したかはわかりませんが、和紙の特徴を生かし、かつデザインに和風文化を取り入れデザイナーとのネットワークを広げることにより、アニメやかわいいイラストといったオリジナリティのある日本独特のデザイン的強みをうまく取り込んだのです。その結果、日本のメーカーが生き残れる事業分野として、工業用テープから芸術や趣味用テープに転換を図ることができたのです。

芸術や趣味の分野にポジショニングの土俵を変えることで、海外の紙製マスキングテープとはまともに競合しなくなります。和紙の特徴を生かし、日本文化に根差したデザインや「かわいさ」では、海外のメーカーは勝負に勝つことができません。

ここの今後の日本の製造業が生き残るヒントが隠されていると思うのです。

今まで日本の製造業はモノづくりで勝負してきました。しかし世界をリードした日本のモノづくりはもはや新興国の後塵を拝している点も多くなってしまいました。同じモノづくりの土俵では中国には勝てなくなっています。しかも少子化によってモノづくりを支える人的資源は質も量も低下する一方です。日本の製造業に未来はないのでしょうか? 

過去モノづくりでの優位性を決めていたのは、いわゆる商品が持つ機能面からの顧客価値と品質、価格、納期(対応力)です。いわば製造業にとっては考え方のDNAに組み込まれています。言い換えるならば、製造業はモノに優位性を確保して供給することによって顧客にニーズに応えるという考え方が身に沁みついています。顧客第一とはいいながらも、あくまでゴールはモノをどう作るかという発想に留まっています。

マスキングテープの例では、ターゲット顧客は業者ではなく、主にテープを使っていろいろと趣味として楽しみたいと思っている女性層にシフトしてます。求められる顧客価値はQCDではないのです。趣味の世界での満足感は、メーカーが顧客への一方向対応では得られません。こんな面白い楽しみ方や「かわいい」オリジナリティをユーザーに提供できるか、あるいは顧客と一緒になってマスキングテープワールドを共創できるかということ、つまりモノづくりではなくコトづくりにこそその本質的な顧客価値があると思うのです。

これからのコトづくりのマーケティング

見学した展示会ブースでも感じたのですが、工業製品のモノづくり発想からの転換はまだまだ課題のように思いました。ブース展示もカタログでの内容は、商品の多彩で魅力あるデザインを並べているものが中心でした。一般的に製造業の訴求はモノそのものに焦点を当てすぎることが多く、そのモノでどういうコトの価値が生まれるかという提案が少ないのです。

このコトの価値を訴求するときには、商品そのものを並べるよりも、どういう価値が得られるかという点に絞って顧客の声か顧客自身が作り上げたものから動画を作成することが重要です。製造企業のHPを見ていて非常に残念なのは、製品の写真や設備、事業概要の文字での説明ぐらいしかないところが多いのです。今や動画での情報発信は必須と言っても良いでしょう。

特に「コトづくり」は顧客が感じることそのものですから、これを伝えるには写真だけでは訴求力に欠けます。マスキングテープでどのような使い方の楽しみがあるかを知ってもらうことで、製品に対するファンが増えることにもなります。展示会ブースやHPには、自社製品をPRするよりも、顧客の作品やビデオを載せることの方が余程効果的です。

使い方や楽しみ方は、メーカーが一方的に教えるというものではありません。もっとユーザーとコミュニケーションを図り、ユーザーがSNSやYouTubeでの発信をどんどんやってもらえるように支援したり、イベントを仕掛けたりする共創マーケティングへ発想を転換できるかどうかが成功の要因であるように思います。

これからのマスキングテープのマーケティングの参考になるYouTube発信事例 :

https://www.youtube.com/watch?v=F9VttZpyXyg&t=147s

https://www.youtube.com/watch?v=0dBU_MGKwi4&t=170s

https://www.youtube.com/watch?v=L0l4M4z0j98&t=174s

https://www.youtube.com/watch?v=Ym3Kyxs_JTE

https://www.youtube.com/watch?v=odecHgEW–U

https://www.youtube.com/watch?v=fVSzDbqY7_c

https://www.youtube.com/watch?v=k0AGgk3LKz4

動画からどうブランディングしていくか? 海外展開のヒントにもなると思います。