コロナ後の世界とテレワークの限界
今、世界中がパニック状態に陥っています。いつ世界恐慌に突入するかも知れない綱渡り状態です。パンデミック状態になり、確かに出口が見えない状況が続いています。あちらこちらの国で非常事態宣言が出され、欧州、米国、アジア各国が事実上国境封鎖措置となっています。学校も閉鎖され集会イベントも禁止のところが多くなり、外国人観光客需要も激減したということから、表面的には観光業や飲食店などインバウンドに依存していた業界が苦境に立たされているという報道が繰り返しなされています。
一方、労働市場にも大きな変化が起きています。在宅勤務や時差出勤が多くの企業で導入され、不要不急の人の移動ができないことで、国内も原則出張禁止、海外出張は必要があっても行けないのが現実です。つまり製造業などB2B分野においても、サプライチェーンがずたずたになって、製造しようにも部品が揃わない深刻な実体経済への影響が出ています。当然販売がB2CもB2Bも急落しています。サービス業などの無形商品も製造業などの有形・無形商品問わず全ての分野で凍結状態に陥っています。
私の事業であります士業においても、セミナービジネスや研修講師、経営コンサルティング等の分野でキャンセルなど真っ先に影響が出ています。司法書士や社労士、税理士などは実体経済に影響が出てからじわっとくると思いますが、先行投資的な経営支援分野のコンサルはすぐに影響を受けるということを身をもって感じています。
急激な変化はこの1か月ですので、実際にメディアで取り上げられているのは、休業による収入補償をどうするのかといった、景気後退に対する財政出動など当面の対応に焦点があたっています。このままの状態があと一か月続くと、あらゆる業界で、しかも先進国、新興国問わずキャッシュフローがショートとなり、いよいよリストラと倒産の兆候が顕著になってくるとが想定されます。世界規模で起こるとまさしく恐慌に陥るわけです。以前のアジア通貨危機のときには先進国が支えることができました。リーマンショックのときは良いか悪いかは別にして、結局は中国の巨大な財政投資によって立ち直る契機となったといえます。しかし、今回のコロナ肺炎の影響は、大半の先進国が鎖国状態にせざるを得ない、しかも出口がまだ見えないという状況なのです。
新型コロナ肺炎は必ず終息する・・・そのとき
コロナ肺炎という外的要因ははっきりしています。人の動きを意図的に止めたことからの危機です。デフォルトなどで財政危機となったことによるものではありません。いつ終息するかはまだわかりません。しかし絶対に地球が滅ぶまで続くというものではありません。最悪のケースでもしかしたら世界中で何万人が死んでしまうかも知れません。私ももしかしたら感染して肺炎で死ぬかも知れません。でも、いつかは終息するのです。しかもそう遠くない将来にです。何年もワクチンも特効薬も開発されないということは考えられません。もっとも開発されるまで果たして経済が持つのか、何人死ぬのかといった懸念が一番の不安要因となっているのです。
そして、この問題が終息したとき、私たちを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。2020年の原点に戻って、普通に仕事ができるのでしょうか。そのとき、サプライチェーンはどう変わっているのでしょうか。同じ顧客から今までと同じ商品を同じ価格で注文をもらって、同じように働けると思われますか? 何事もなかったかのようにキャンセルになった仕事が来ると思いますか?
今、一人ひとりが考えるべきことは、コロナ問題が終わった時点で、世の中は、人・モノ・カネ・ノウハウ(技術)の競争優位の構図がどう変化ているのか、国と国との関係がどうなっているかということです。よって、それをどう読むか、そしてどう今やるべきことを準備し、問題が終息したときにスタートダッシュで競争優位を作り出して顧客価値を取り込めるかどうかが成長するか衰退するかの分かれ目になると思うのです。ある意味ビジネスモデルを変えるチャンスであり、やらねばならない課題です。
今の大変な状況に対して、政府にもっと支援しろ、現金を配れと要求ばかりしている経営者は、世の中の変化に自己のビジネスモデルを変えていくマインドも気力もないのではと思います。カネをもらってキャッシュフローが少し楽になるだけで、競争して勝ちぬくことはできないと思います。個人も国に頼って休業補償をもらっても、子供の食費が助かるとか、当面貯金するとかいうインタビューばかりです。大変なときこそ、一人ひとりがどう変わるのかが問われているのではないでしょうか。
在宅勤務によって、むしろテレワークを後押しすることで働き方改革に弾みをつけていかねばならないという見方も多いのですが、仕事でのIT活用は万能ではないという課題もあるように思います。実際、自宅で在宅勤務をする機会が増えている人が多いのですが、その結果として、人材育成への取り組みが後退する懸念もあります。実際、ITの進展に伴い、労働者一人ひとりの自己啓発にかける時間が大幅に減っています。また残業規制が過度に進むため、職場で上司や先輩から直接指導を通じて成長する機会も極端に減っているように思うのです。「仕事ができる」能力開発は決してテレワークでは達成しえないと感じるのです。もちろんテレワークの手法としてe-Learningなどのツールは導入が進んでいますが、人を育てるというのは、AIに任せられる分野ではないと感じるのです。
コロナ問題が終息したときに、どのような人材を育て、一人ひとりの働きをどう評価し、そしてどう能力を発揮させて生産性を上げるか、大きな経営課題となると思います。
私自身も今までの経営支援のあり方を基本的に考え直さねばならないと痛感してます。