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パンデミックに立ちすくんでいる場合ではない

いよいよ世界経済は奈落の底に突っ込んでいく気配となってきました。ついにWTOはパンデミックを認め、トランプ大統領は英国を除く欧州からの入国制限に踏み切りました。日本が中国と韓国の入国制限を実施し、ビザの停止とノービザ入国の取りやめに対して、韓国がいつもながらの感情的な対抗措置を打ち出すという稚拙な政策をやっているわけですが、世界経済の中核である欧米間の往来がなくなることの衝撃は計り知れません。まずすぐに直撃するのは世界中の航空会社や観光、交通機関、小売りなど人の動きと直結する消費市場です。日本もいつアメリカへの入国が制限されるかわかりませんし、イタリア以外の欧州との往来を今まで通り無制限している場合ではなくなってきています。

日本においても、新型コロナ肺炎が蔓延して以降、観光客が激減してインバウンド関連産業が大変だという報道が連日連夜なされています。また、学校の休校に加えイベントの自粛によって何とか感染爆発のピークを後ろにしていこうという取組みが進行中です。3月中の日本経済はどん底の状態に陥ることでしょう。おそらく前年と比べて経済規模は半減以下となっている感じです。イベントがどんどんキャンセルとなり、アルバイトやフリーランスに仕事が回らず、収入減に直面している中小企業や非正規雇用者などに支援対策が小出しに打ち出されてはいるのですが、今回のパンデミックによって世界経済が恐慌に向かう可能性が出てきている中で、企業それぞれそして個人一人ひとりは、政府が何か助けてくれるのを待って立ち止まている場合ではないのです。政府の対応が後手後手だとか、仕事がなくなったフリーランスの実態をわかっていないとか、マスコミや野党は勝手な批判ばかりしています。国民も政治家もマスコミも、自己利益だけ考えた足を引っ張るための批判を叫んでいる状況ではありません。地球規模で人類存続の危機に瀕しているという認識に立てば、自分は悪くない、悪いのは全て政府であり、他の国であると考えている自尊心だけで生きている国、国民は衰退するしかないでしょう。

世界中で爆発的拡大を見せている新型コロナ肺炎で、人類が一丸となって取り組まなければならないのは、感染拡大のスピードを何とか食い止めること、つまり人の動きを一時的にストップさせてでもクラスター撲滅を徹底することに加え、ある程度感染スピードを押さえることに成功させることで、医療崩壊を食い止め重症患者の拡大につなげないことです。バカみたいにPCR検査を希望者全員に受けてもらうようにすることが国民の安心感につながると叫んでいるワイドショウのコメンテーターがいますし、判定制度の低いPCR検査を絶対視することによって、陰性と判定された人自身が感染源となるリスクがあるわけで、それが原因で他の国でも爆発的感染者拡大につながっていることもあるとの見方もあるようです。今、日本でも感染者数は毎日増えていますが、実際には限られたライブハウスや病院、介護施設などがクラスターとなっているケースにとどまっているようで、インフルエンザの感染者数と比べると幸いにもまだまだ感染者比率は低い状態です。今押さえこむことに最大限の努力を傾けるために、国民のありとあらゆるレベルで協力するべきであって、高校球児がかわいそうだとか、卒業式をきちんとやれないとか、コンサートやイベント中止でフリーランスの生活が大変だとか、学校で共働きの家庭は大変だとか、低レベルとは言わないまでも、もっと国や経済、産業全体の危機にどう対応するべきかといった具体的な前向きな情報が必要です。今のマスコミにはないのは大変嘆かわしいところです。

当面の感染拡大スピードを押さえることが一番取り組むべきことですが、二番目は決して国が国民にお金をばらまくことではないと思うのです。一時的にカネを配ったとしても、その原資は結局は国民一人ひとりが負担する税金です。GDPは生産面からみても分配面から見ても支出面から見ても同じになる三面等価原則から考えると、経済の底辺を支えることにはつながりません。コロナ休業補償をしろといっても、ウィルスが払ってくれるのではありませんので、それは私たちの税金から補償ということになります。税金の元は私たちが生み出した付加価値から納税されているものですから、国全体から考えると右のポケットから左のポケットに移しただけに過ぎないと思います。企業に対しても低利貸し付けは借金だから返さないといけない、それなら額は小さくても助成金の方がありがたいとインタビューで答えていた中小企業経営者がいましたが、経営者してはどうかという思いがしました。

私は国民にカネをばらまく政策は、世界経済を救うことにはつながらないと思っています。確かに個人や企業の資金繰りを一時的に助ける意味があるとは思います。でもそれだけです。それで経済が立ち直るでしょうか。二番目に取り組むべきこと、それは世界中の感染医療研究者が一丸となって、一日も早くインフルエンザのタミフルのような特効薬とワクチンの開発に成功することです。PCR検査キットが行きわたるように寄付するといった某経営者がいましたが、そんな医療崩壊につながるような愚策ではなく、そのカネを研究機関への寄付や感染医療に携わる医療機関への寄付、大学の医療人材輩出のための奨学基金を作るなどの方が余程有益だと思います。企業経営者としても、SDGs経営を目指す企業であるならば、新型コロナウイルスなど未知の感染症対策にどう貢献していくかということを今後の経営の軸にしてほしいものです。

企業経営者として立ちすくまない

私自身も一応法人経営者であると同時に、コンサルタントとしてのフリーランスでもあります。3月の企業研修やイベント関連の仕事はほとんどが飛びましたので、売り上げはご多分に漏れず激減で単月では大赤字です。4月も見通しが不透明であり、3月に続いて収入の道が断たれる可能性が高くなっています。会社形態とはいえ個人事業ですので大変厳しい状況ではありますが、かといって国から仕事の対価ではない単なる助成金でカネをめぐんでもらおうとは考えていません。

外部環境がどんなに厳しい状況になろうと、社会から求められない事業は存在価値はありません。売り上げが減った、仕事がなくなったからといって、社会に価値を還元することなく国からカネをもらって果たして経営者といえるのでしょうか。売り上げがなくなるとたちまち資金繰りに行き詰まります。助成金が喉から手が出るほどほしいというのは理解できます。でもそれは百歩譲って、低利の借入金を支援してもらえる制度を活用して何とか乗り切る以外にはありません。

もし無利子や低利で資金が手に入ったら、何に使おうがリターンを生み出せるかどうかは経営者の手腕にかかっています。生み出せないなら借り入れする必要もありませんし、売り上げが下がったら下がったで事業を撤退するだけです。しかし、従業員の雇用責任や仕入れ先や得意先への責任が経営者にはあります。既存事業でどうにもならないときには、培ってきたノウハウや従業員などの人的資源、技術の強みを生かして新規事業に乗り出すなどいくらでも知恵を絞りだせることはできます。

もし世界恐慌になったとしても、どうやったら生き延びていけるのか、それを考えられるのは今しかないと思うのです。もし思いつける糸口がないと感じられるのであれば、いろんな人の声を聴くことです。セミナーなどはどんどん中止になっていますし、なかなか外国へ出張することもkびしい状況です。こういう時こそ視点を変えるべきと思うのです。

「自己観照」・・この言葉は松下幸之助の書物「人生心得帖」から学んだものです。「自分で自分を、あたかも他人に接するような態度で外から冷静に観察してみる」という意味です。つまり自分の心をいったん自分の外に出してみて、その出した心で自分自身を眺めてみるということです。苦境に立つほどこの言葉は染み入るものです。世界不況がひたひたと迫っている今、国レベルでも、企業レベルでも、そして個人一人ひとりとしても立ちすくむだけでは未来は見えないと感じています。外部環境が激動な時期であるからこそ、内部環境分析と今後戦っていく土俵を見直すことが重要ではないかと思うのです。