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リスクマネジメントの真価が問われる緊急事態

日々新型コロナウィルス肺炎の問題が深刻化しています。1月末にバンコクに出張に行くときには、まだマスクはドラッグストアにたくさんありました。7個入りを3パックほど買って出張に行ったのですが、現地にいるわずか数日の間に、武漢からの緊急チャーター便で帰国だの、ダイヤモンドプリンセスでの発症拡大など、そして日本国内での感染者が日々広がっていくニュースが飛び込んできて、あれよあれよという間に、一気に旅行者が減少し、どの店でもマスクが売り切れとなってしまいました。わずか数日後に帰国したときには、がらっと町の様子も変わるだけでなく、企業にとってもサプライチェーンがずたずたになって、中国の現地企業が操業できないどころか、事実上人の移動が全くできなくなってしまっています。

そうこうしているうちに、日本人そのものが自由に行けなくなる事態が発生してしまっています。ベトナムでは、過去14日間に中国に滞在した外国人は一時的に入国を拒否しています。つまり事実上中国人は全員入国拒否ですし、過去14日間に中国に立ち寄ったことことがパスポートでわかるとベトナムに入国できないのです。現時点でこの規制ですから、世界的には日本もコロナウィルスの汚染国と見なされていることから考えますと、もしかすると日本人全てが入国拒否される国も出てくる可能性も否めません。

企業経営環境はこの一か月で激変

テレビや新聞の報道を見る限りにおいては、クルーズ船の感染者がまた増えたとか、感染ルートがどうのこうのというあまりにも表面的なことしか伝えていません。旅行者が激減している観光地の様子をビデオで流して、景気への影響が懸念されると無責任なことをいうばかりで、国の検疫体制が拙いとか、対策が遅すぎるとか、閣僚がこんな状況下で私的な会合に出席したとか批判したりしているだけです。国会議員も相も変わらず桜の領収書がどうのこうの・・・この国が直面している危機に対して、立ちすくんでいるというよりも、お庭で遊びまわっているという姿しか見えてきません。

今、企業は2月から急激に経営状況が悪化しています。客数が明らかに激減しています。これは外国人観光客が減ったというだけではありません。日本人も日常活動が収縮しています。外出するとコロナウィルスに感染するリスクが高まると多くが感じているため、不要不急の外出は当然控えます。人が集まるイベントもどんどん中止されています。そのため、現金商売の最前線である店舗やレストランなどは真っ先に影響を受けるのです。この一、二週間で何割もの客数が減っていると思います。梅田や心斎橋、難波などは当然閑古鳥が鳴いているのですが、地方のショッピングセンターなどでもガラガラになっています。ドラッグストアなんかは、肝心のマスクが品切れ状態で、その他の商品だけが山積みになって客はほとんどいない状況です。

このように小売り流通に最初に影響が出て、製造業も中国から部品がこないため操業停止に追い込まれているというニュースは目にするものの、これからあらゆる業界全体に深刻な問題が出てくるものとの覚悟が必要です。外国人観光客需要の減少はGDP全体からすると一部に過ぎません。コロナの問題で中国経済そのものに大きな影響がでるのは当然ですし、もしかすると政治不安にもつながる可能性も十分考えられます。しかも中国は製造分野ではあらゆる国や産業にとってB2Bのサプライチェーンの中核です。そこが事実上この一か月以上機能停止となっているのですから、仕入れもできなければ売り先もないという深刻な状況に直面する企業が続出し、その結果世界恐慌にもなりかねない状況に直面しているという認識が必要です。

リスクマネジメントを徹底し今やるべきことに取り組む

売りが吹っ飛び、仕入れもできなくなる。まさに危機に直面しているのです。これから何が起きても不思議ではありません。企業経営者は、自身の企業を守り抜くためにありとあらゆることに取り組まねばならない事態です。以前からキャッシュフローに課題を抱えている企業は、真っ先に現金を確保することに優先的に取り組み、売掛金回収の回収や余剰在庫の徹底削減に注力することも当然ながら、政府が緊急支援策として出している特別融資なども考慮しながら、必要となる経営原資である原材料や現金の積み上げに資産を移動させるという財務的取り組みで安全性を向上させるべきです。今後取引先に対する債権が貸倒となるリスクも考えておく必要があります。

当然、売り上げが大幅に減少するわけですから、むやみに足掻いて必死になって売り込みばかりやっても、営業経費が嵩むだけで余計収支が悪化することも考えられます。動いて売り上げ確保できるなら強化するべきですが、ここは既存の事業では壁にぶつかることを想定し、何とかビジネスモデルを転換することと、改めて事業ドメイン、つまりどこで勝負するかを見直すきっかけを与えてもらったともいえます。

企業経営は、今回のような感染症や自然災害によるリスクもありますが、それだけでなく調達リスクや、生産リスク、販売リスク、バックオフィスリスク、社会リスクなど様々なリスク要因に直面する可能性のもとで事業を展開しています。どこまでリスク項目を整理し、自社でのアセスメントを行い、リスクを軽減するための個別の対策を通じたBCPを立てているかを見直すリスクマネジメントが重要です。

今回の問題がもしかすると手の施しようのないパンデミックになるかも知れません。それでも生き延びるために今やれることは山ほどあるはずです。実際に売り上げが落ちて赤字でどうしようもない状況に陥るまで、なかなかリスクマネジメントについて真剣に考える経営者が少ないものです。

皆さん、立ちすくんでいる場合ではないのです。