日本の中小企業も脱中国化の動きを加速
10月上旬にインテックス大阪で開催されたモノづくりワールド大阪2023の展示会のときのことです。私は支援先のベトナム切削加工メーカーが他のベトナム企業と共同で出展するブースを支援しておりました。
昨年と比較して出展したベトナム企業数は倍以上になり、ベトナム経営塾の講師として関係性が継続している多くのベトナム企業も参加社数が一気に増えていました。着実にベトナム企業と日本企業との取引が拡大している様子を強く感じました。特に、今回は支援先企業を大阪商工会議所の会頭(兼日本商工会議所副会頭)の鳥井様がベトナム出張時に訪問されたこともあり、わざわざブースに来ていただきました。改めて日本企業とベトナム企業間の連携強化に向けた支援をお願いするとともに、中小企業診断士として日本の中小企業とベトナム企業との商談マッチングの架け橋になることで、中小企業の海外展開に貢献していきたいとの思いをお伝えすることができました。
様変わりしていた中国企業のブースの様子
ベトナム企業のブースにはたくさんの日本企業に商談に来ていただきました。しかし一方でいつもなら多くの中国企業も出展して賑わっているのですが、展示会の期間を通して様変わりしている様子がありました。
確かに中国企業もたくさん出展ブースを構えておられました。韓国やベトナム、その他の海外の企業も出展している中で、海外企業数としては飛びぬけて多いのは通常です。しかし奇妙な光景がありました。
中国のブースにはほとんど来場者が寄り付かないのです。
出展者も手持ち無沙汰ですし、全体的に出展内容も質が大きく低下していました。これについては主催者の話を聞いたところ、出展募集時にはコロナのロックダウン期間が長引いていたときでもあり、なかなか出展申し込みが少なく、何とか駆け込みで決めていただいたところが多くて準備不足だったという感じのようでした。
しかし何か違うのです。この中国ブースの向かいがベトナム企業のブースになるのですが、通路を挟んで多くの来場者がベトナムブースの前で立ち止まって商談されておられたのですが、反対側の中国ブースを素通りされる方ばかりなのです。
そこでベトナムのブースに来ていただいた日本の企業に聞いてみたところ、皆さんほとんど同じことをおっしゃっていました。
「うちは今まで中国に委託生産していたり、部品の調達先として中国に大きく依存していた。しかし、昨今のチャイナリスクを考えると中国依存度を何とか下げないと本業の経営がある日突然立ちいかなくなる。7割も8割も中国に依存していると本当に危ない。できる限りリスク分散を図るためにも、中国以外からの調達先開発は社としての至上命題である。しかしすぐにベトナムから調達するには信頼性もあるし、まずは関係性をどうやって作っていったらよいかを探るためにこの展示会を見に来た」
他にも既に昨年からの長期間のロックダウンで委託業務の納期ががたがたになったし、中国に海外から満足に資材や部品が入らなくなってきたので、明らかに中国のものづくりに信頼性が下がってきたと実感しているとのこと。また円安の影響が大きい要因と思うが、実際中国からの調達見積もりでも価格の競争力が落ちてきたという声もありました。
それよりも一番中国依存度を下げなければならないと感じたというのは、中国の政治と経済が崩壊に向かっているのではないかという危機感からです。あきらかに日本企業にとって、これから中国に投資するというのはあり得ないとまで言い切っておられました。外資に対する規制や締め付けが激しくなり、ビジネス往来も以前のように自由に行き来ができませんし、いつ理由もなく身柄を拘束されてスパイ扱いされるリスクは尋常ではありません。金融不安からいつ銀行取引が停止になるかも知れません。
実際、日本の大手企業もどんどん中国を見限って国内回帰やベトナムなど東南アジアへ拠点を移管撤退が進んできています。経済が悪化する中で今後確実に社会不安が増大すると思われますし、独裁国家で法治が機能していない国での事業はリスクでしかありません。さらに台湾有事が現実化すると日本の政治経済にも多大な影響を受けるのは間違いなく、今や中国の莫大な市場の魅力という以前に、企業として生き残るためにも、中国に依存しない事業構造をどうやって確立していくかという経営が最優先事項になります。
すでに大企業だけでなく中小企業も脱中国化へ向けて一気に走り出しています。まだ昔みた日中友好でともに経済発展を目指そうと頑張っていた夢は一刻も早く忘れるべきではないでしょうか。何のために事業をやっているのか、売上や利益よりももっと大事なものがあるはずです。企業を守るためにも、社員を守るためにも、今企業は再優先に何をなすべきなのかについて改めて考えさせられた展示会でした。