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海外事業も事業承継の取組みは必須

中小企業の事業承継は極めて深刻な状況になっています。2025年までに中小企業経営者が平均引退年齢といわれている70歳に到達するのが約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定との統計が出ています。この数は日本企業全体の三分の一であり、現状を放棄すると中小企業の半分が廃業し、約650万人の雇用、22兆円のGDPが失われる可能性があります。

この事態は日本経済にとって由々しき事態であり、このままでいくと最悪2030年に中小企業は消滅してしまいます。このまま放置すると日本経済とともに日本人の雇用と生活が奈落の底に突き落とされます。国も危機感をもっており、企業を存続させるために様々な中小企業支援政策と同時に、事業を次世代に承継させるための支援やM&Aの推進の取組みを強化しています。

ただ一番の問題は、肝心の中小企業経営者自身がその必要性が低く、危機感が顕在化していない現状があります。後継者がいないにもかかわらず、債務が大きすぎて事業を継承してくれる事業売却もなく、そもそも自分の分身でもある会社を売却するぐらいなら廃業した方がましだと考えている経営者が非常に多いのです。

事業承継といえば相続税務対策しか考えていなかった

経営者が高齢になってきますと、まずは子供たちへ資産承継をどう行えば相続税を押さえられるかという点に比重が置かれていました。その意味から事業承継といえばまずは税理士に相談することが精一杯でした。

しかし事業承継とは、理念やノウハウといった「経営の承継」と後継経営者や組織全体を含めた「人の承継」、そして株や有形資産の「資産承継」の三つの観点からバランスよく最適化させることが極めて重要です。

つまり家族への相続だけに重点を置きますと、社会的存在である企業を次世代に承継させることが困難になります。家族に後継者がいる場合でも、経営者教育を時間をかけてきっちり行わないと、経営能力や意欲のないものが後を継いでもうまくいきません。理念やビジョンを後継者だけでなく、次世代の経営陣に承継されないと従業員がばらばらになってしまいます。後継者が家族や社内にもおらず、やむを得ずM&Aで売却する決断をしたとしても、債務超過で赤字も継続しているような企業であったなら買い手もつかずそのまま倒産となっていまいます。どんな形にせよ事業承継に成功するためには、まずは生き残る価値がある会社へ事業構造改革を行うことが最優先事項です。

経営者にその現状認識から危機感を持っていただくことから取り組み、一社でも多くの中小企業が次世代に継承されていくことに貢献したいと考え、今年度から事業承継マネージャーとしての資格を取得し事業活動を開始することに致しました。

海外事業承継支援の専門家として

各地の公的機関でも事業承継支援体制を充実させており専門家の充実とともに、M&Aアドバイザーの体制も整いつつあります。ただ、一方で空白地域となっている事業承継の分野があります。それは海外事業の承継問題です。

中小企業本体の事業承継自体が深刻な問題であるわけですが、過去世界各地に展開している製造会社や販売会社も現地の雇用を支えている社会的基盤であり、海外事業を行う強みを生かして企業グループ全体の競争力と直結しています。海外拠点を単なる地方工場や営業所というレベルで捉え、事業や人材を育ててこないといつまでたっても海外事業が次世代に承継されていきません。海外事業をコストダウンの手段としてしか見ていないと、競合に勝てる事業に成長発展することは厳しくなります。

海外事業も事業承継戦略を構築していく必要があります。これは中小企業だけの問題ではなく、大企業・中堅企業にとってもハイレベルの経営課題の一つです。特に大企業は海外に多くの拠点を構えていて、経営責任者を交代させる人事は比較的容易なだけに、「人の承継」ぐらいしか考えておらず、「経営の承継」や「資産承継」について真剣に考えていないところが多いので、むしろこちらの方が問題な気がします。

サラリーマン社員がほとんどの大企業においては、実質「資産承継」は社員個人の問題ではなく、単に次の経営者に管理を引き継ぐだけになってしまっています。しかしながら、事業を次世代に承継させるには、例えば今の合弁事業の体制がそのままで良いのか、他社との資本関係や提携関係をどうしていくべきかというのも「資産承継」戦略の重要な要素になります。ややもすれば本社の財務部門に丸投げしている感がないでしょうか。

海外事業の事業承継には、「経営理念・管理体制の承継」と「経営人材・組織の承継」そして「経営資産・資本戦略の承継」の3つの観点からの承継戦略が重要です。グローバル事業環境は常に激変している今、企業規模に限らず、海外経営の変化対応力なしには生き残っていけません。

海外展開した時点から、あるいは新規に経営責任者が交代した時点から、次の世代への承継を見据えた事業承継戦略計画の策定と実践が始まっているということに気付くべきです。ただ、事業承継の実践といっても特に違ったことをやるわけではありません。まずは事業承継課題の明確化を事業・財務・人事(必要によっては法務も)からのデューデリを行って、誰がいつまでに何を取り組んでいくのかという事業承継計画を策定し、プロジェクトとして実行していくPDCAを経営サイクルの中で回していくことにつきます。

私どもではこのPDCAをフェイズ1、フェイズ2,フェイズ3に分けてそれぞれ事業承継の取組み支援を行ってまいります。ただ、海外事業のデューデリは必ず現地でのヒアリングを行わないと真実の姿をつかむことができません。現在はコロナの問題によってなかなか現地に赴くことができませんが、自走的にPDCAを社内で回せるように体制づくりをメインに支援プログラムを提案していきたいと思います。

この取組みが軌道に乗れば、人材育成計画も組織のしくみ強化、拠点戦略からモノづくり、マーケティング、販路開拓、リスクマネジメントまでのあらゆる海外でのバリューチェーンの見える化と、事業承継に直接連動する中期経営計画のブラッシュアップが可能になります。

中小企業の経営者の皆様、そして中堅・大企業のグローバル事業推進部門の皆様からご相談をお待ちしております。