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企業経営はかつてない中国リスクに警戒すべき

企業はかつてないリスクに直面しています。戦後の焼け野原からの復興を経て、日本企業はオイルショックからバブルの崩壊、阪神大震災、そしてリーマンショック、東日本大震災など数多くの災害や経済的危機に何度も見舞われました。その都度這い上がってきた日本でしたが、今世紀に入っての20年間は激しい変化とスピードの中を生きてきたわけです。この間、少子化が進んできた激変であるにもかかわらず、少子化ゆえに人手不足から失業率も上がらず、国民の感覚的には不況に見舞われたというものではなかったのです。しかしじわじわと少子化は企業活動と経済成長を蝕み、高齢化社会の加速によって、グローバル競争の敗者となっていることすら気づいていなかったのではないでしょうか。

企業のぬるま湯経営を気づかせてくれたコロナショック

この20年はIT革命が一気に進みました。しかし日本企業の多くはどこか他人事であったような気がします。DXといわれるデジタルトランスフォーメーションによって企業価値は根底から覆るスピードが加速していたのですが、「日本はモノづくり立国である」「モノづくりのノウハウや技術、品質の高さは世界をリードしている」という古い経営概念に囚われししまい、良いものを作って社会に貢献するのが理念であり、本物を追求する限り我々は負けることはないと過信していたのではなかったでしょうか。

某電機メーカーの社長は、モノづくりの原点は「イタコナ」といった原材料の原価まで徹底的にこだわることであると強調した経営を軸に置いていました。私自身は非常に違和感と感じていました。マーケティング価値や商品サービスを通じた利用価値を高めていくかというシステム的発想が希薄であったことが、今の日本の電機メーカー凋落の原因であるように感じます。

スマホが世に出てきたときも、単にメールが送れインターネットにつながる電話の進化系としか感じていなかったと思います。当時のアプリも携帯電話に組み込むゲームソフトの延長線上と日本企業の経営者層の多くが考えていたと思います。そういう私自身も、MDに録音した音楽があれよあれよという間にiTUNEsからIPODに音楽をダウンロードできてすごいなと思っていたら、それがスマホに入って、画像もSNSも電子マネーもどんどんスマホの中に組み込まれ、モノの価値は一気にコモディティー化で下落、あっという間にスマホ世界からDXが広がってしまいました。

DXの世界が一気に拡大することによって、今までモノづくりを基盤とした日本の製造業のビジネスモデルは根本から揺さぶれてしまいました。ところが・・・その変化すら感じていない企業があまりにも多いのをコロナショックで明らかになったのです。

かつてない中国リスクに最大限の警戒を

コロナはDXによる世界の構造激変のリアルな姿を明らかにしてくれました。コロナのため人と人の接触が制限され、街がロックダウンとなり、世界中の人の往来が止まってしまったことで観光や航空業界、エンターテイメント業界はどん底に突き落とされました。やむを得ず何とか対応していく必要からコミュニーケーションの手段だけでなく、提供価値の主体がオンライン化、リモート化に一気にシフトしていくことを目の当たりにしました。

いかに今まで生産性の低い世界で事業をやっていたのかということを思い知らされたのです。その結果として、日本の産業、経済が世界のトレンドからどれだけ遅れてしまっていたか唖然としてしまいました。今更、アメリカや中国に追いつけそうもないところまで引き離されていたのです。それでも良い商品を製造する技術力や品質管理力で戦っていけると思っている経営者がまだ多いのです。ビジネスモデルをいかにDXに対応していくか、これ以外に生き残るすべはないように感じるのです。

一方、もっと深刻な外部環境の変化が起きています。

それは、、、中国リスクの先鋭化です。

コロナ問題の間隙を縫う形で、昨今の中国はその傲慢さとともに世界各国で様々な国際問題を引き起こしています。コロナが発生する前は、アメリカとの覇権争いのレベルで米中貿易戦争のつばぜり合いでした。しかし、今や中国は周辺国・地域全てにおいて政治的問題を作り上げています。以前からのウイグル人に対する人権問題に加え、南シナ海の一方的な埋め立てによる領有権主張、香港の国家安全法による一国二制度の崩壊、インドとの国境紛争にブータンへの領土問題のしかけ、そして尖閣領海への継続的な侵入などありとあらゆるところで問題を引き起こしています。また中国による西側諸国でのスパイ活動に対するアメリカによる報復など、今後企業活動にとっては中国を中心としたリスクがかつてないほど大きくなります。

コロナも企業にとっては大きな問題には違いありませんが、治安・政治リスクは企業活動そのものがある日突然ストップとなる可能性もあります。さらに中国の問題は外交的問題にとどまらず、大雨洪水や三峡ダムの崩壊リスクなど、これほど自然災害など中国国内の環境問題や政治の不安定化が今までこれほどの大きなリスクとなったことはなかったのではないでしょうか。

今世界は中国包囲網が形成されつつあり、中国を利する企業活動は逆にアメリカから報復される可能性が高まっていることにさらなる注意が必要です。今まで企業にとっての中国事業戦略をどう舵とっていけばよいかは、中国の動きを見てそれにどう対応するかを考えておけば十分でした。ところが、世界中から中国が政治的に孤立するだけでなく、リスク対応からサプライチェーンの見直しが待ったなし、つまり中国自身が世界経済からも孤立化する動きにも注視しなければなりません。ややもすると日本の政財界は日中友好といった色眼鏡で全て物事を判断しがちですが、今世界がどう動いているのかについて間違った経営判断をすると企業経営そのものが立ちいかなくなることも考慮する必要があります。

あまり考えたくないことではありますが、中国の態度が変わらない限り、中国対中国包囲網世界との間で武力衝突から戦争に発展しかねない可能性があることは想定しなければなりません。今最悪の海外展開は、中国一極のみでしか海外事業をやっていないことです。元々中国に進出した動機は、中国が世界の工場と言われていたときは、モノづくりのコストメリットを追求するものでした。その後中国経済が発達して市場として巨大化してく過程で中国事業を再定義してきたのが中国事業展開の経緯です。

しかし、今一度立ち止まり、ここまで深刻化してきた中国リスクを見ないふりして進めていくことは企業経営を崩壊させてしまうかも知れないのです。

今すぐ中国事業を撤退せよといっているのではありません。中国リスクを正しく把握し、そのリスクを最小化するための手を打つのは今しかないのです。遅れると大変なことになります。少なくともサプライチェーンの広域再編成はやるべきです。具体的には中国事業を再定義して縮小し、日本生産に戻すものとコスト対応のために中国以外の第三国に事業分散を図る検討は今すぐに取りかからないと手遅れになるでしょう。