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海外からみる日本人の文化的特性

海外展開の支援を求められる企業からの相談において、「海外はよくわからない、リスクが予測できない」などマネジメントの難しさの項目を挙げられる方が多いようです。確かに海外は日本とは違います。経済規模も国の文化も国民の考え方も同じであるはずがありません。また海外進出されてうまくいかないとお悩みの企業経営者からの話を聞いてみますと、多くの場合、日本を基準にした事業経営のやり方、商習慣や契約概念、取引先との関係、従業員の考え方やモチベーションを前提に、海外の場合は問題が多すぎてどうしてよいかわからないといった内容が多いように思います。

突き詰めていけば、結局は異文化対応力ということになるのですが、海外に出る限りにおいては、日本の常識を基準した考え方に固執するのではなく、いかに柔軟な発想で、逆に外から日本人の考え方、価値観を振り返り、良い点悪い点をまず認識することから出発する必要があるのではないかと思います。

異文化対応を理解するホフステードモデル

海外といっても国によって全く違います。文化や宗教の違いによって考え方が違うというのは何となくわかるのですが、しからば具体的に何がどう違うのかが概念的に説明できますでしょうか。また日本人はこのような特徴があると言っても、いわゆる日本人以外の「海外人」というのはいません。例えばヨーロッパ人というのも存在しません。イギリス人とフランス人、ドイツ人はそれぞれ全く違います。イギリス人でもスコットランドやイングランド、ウェールズそれぞれ違います。当然でありますが、中国人、韓国人、日本人は同じであるはずがありませんが、欧米の人たちから見ると違いはわからないと同じように、日本人から見てフランス人とイギリス人の間でどう考え方や常識が違うかわからないのがほとんどです。

以前より国ごとの文化や国民性の違いについて様々な研究がなされています。その中で海外事業を行ううえで、異文化理解という観点からなるほどと思う分析の一つに、オランダの比較文化学者であるホフステード博士が提唱した、国の文化の違いによる国民の価値観の違いを6次元で表すホフステードモデルというものがあります。

この6つの次元による分析というのは、①権威主義の程度差、②個人主義/集団主義の程度差、③男性性/女性性の程度差、④不確実性回避の程度差、⑤実用主義(長期視点・短期視点)の程度差、⑥人生の楽しみ方の程度差、に分けて国ごとの相対比較でポジショニングをします。

この分析は国によって傾向が非常に明確に分かれて出てきます。最初、感覚的には日本人は個人主義というよりも集団主義という傾向が強いのかなという印象がありました。しかし、全世界の国民を押しなべて分析すると、日本人の特徴はもっと違うところにあるのです。一般的に日本人はあまり極端にでる次元は少ないのですが、中でも世界で一番典型的に出た項目があります。

それは④の不確実性回避の程度差です。つまり世界から見ても、日本人ほどリスクを避けることを最大限の価値観を置く国民は他にはいません。「もし失敗したらどうするの」ということを最優先に考え、成功することよりも失敗しないことの方が大事だと考える人が世界で一番多いのです。つまり、リスクを取りたがらないのです。確かに政治家での議論でも、マスコミの論調でも、企業においても、よく聞くのが「~のおそれがある」というキルワードで、99%の成功確率で最大多数の幸福につながることであったとしても、1%のリスク、失敗のおそれを前面に掲げて全てを潰してしまう人、組織があまりにも多いのです。

ところが外から日本を見る、考えることができない人にとっては、その異常さに全く気づけないのです。「成功することよりも失敗しないことの方が尊い」という感覚は世界の人々にとっては理解不能です。少々失敗しようが次回成功することの方が大事ではないかという考えで、日本以外の人々は常に新しいことに挑戦意欲を持って取り組んでいるのです。不確実性の回避を最優先に考える日本人の特徴は、世界の発展から取り残されてしまう弱みの一つです。

もちろん、不確実性の回避を重視するということは、品質に対する徹底的なこだわり、問題が起きたときの原因の徹底究明で二度と同じ過ちを起こさない考え方、姿勢の基本にある価値観ですので、全てが悪いというわけではありません。重要なのはそういう思考傾向を持った日本人の特徴を冷静に判断し、そのうえでいかにして海外で事業を発展させていくにはどういった点に留意するべきかを考えることでしょう。

もう一つ、日本人の特徴として典型的に現れる次元が「男性性」の項目です。これは男性中心社会で女性活躍の場が十分でないという意味ではなく、男性性の強い社会や考え方というのは、「自己主張が強く、成功や称賛されることへの目的意識が高い」というものです。つまり社会全体の幸福を実現したいと考えるよりも自分が褒められてお山の大将扱いされることを喜ぶ傾向があるという国民性の面が強いのです。日本人は自己主張が弱いとの意識があるので、少し違和感がある方もおられると思いますが、他の国の国民性や価値観との相対比較においての位置づけであり、そうみられているという自覚は必要です。謙虚に受け止めて海外の人たちと一緒に仕事をしていくときの留意点として覚えておいて損はないでしょう。