このページはJavaScriptを使用しています。
ご使用中のブラウザはJavaScriptが無効になっているか、JavaScriptに対応していません。
サイトを正しく表示、ご利用いただくには、
JavaScriptを有効にするか、JavaScriptが使用可能なブラウザでアクセスして下さい。

海外展示会は海外展開戦略の初めの一歩

海外展開を成功に導くには海外市場での新規顧客開発と販路開拓が最重要です。ところが、日本で大手取引先の下請けを軸に事業を展開してきた中小企業は、基本的に営業体制が不十分であり、さらに海外で新たな顧客を探すことは至難の業です。製造業の海外展開拠点に出向される責任者で営業出身者はほぼおられません。そういった状況下で、新規取引先を確保することができずにずっと赤字が続き、経営が立ちいかなくなっている企業を多く見てきました。

一方、新たな調達先を探すのにも苦労します。日本から指示された部品を輸入して組立だけやっていても一向に採算が取れません。しかし現地調達に切り替えてコストダウンを図ろうにも、協業先を見つけるのはそう簡単ではありません。価格よりもむしろ調達部品の信頼性評価や取引条件、価格の詰めや取引先との部品承認など、大変ハードルが高い仕事です。

海外展示会の活用~新たな顧客との出会い

海外で新規顧客と調達先開発を進めるにあたって最も効果的なのは海外での展示会活用です。日本の展示会では新規開発商品やサービスを世の中に問い、新たなビジネスを開拓していくために出展したり、同業他社の動きを知るための情報収集の場として有効です。一方、海外での展示会は、日本国内のような目的で出展することも多いのですが、むしろ新たな顧客や調達先との出会いの場として活用できる範囲は広いように思います。

例えば、T自動車会社の部品下請け事業を行っている会社が海外展開しているとします。自動車業界ではだいたい自動車メーカーから部品メーカーまで系列化されているため、T社系列の部品メーカーが、N社やH社などに売り込みをしようとしてもそう簡単ではありません。ところが、海外に展開している自動車メーカーにとっても現地調達は至上命題であり、系列の枠を超えてでも、ソリューションを提供してくれる部品メーカーの発掘に関心が高く、海外での展示会においても部品メーカーの出展内容を細かく調査しています。もちろんH社もN社も同様で、たとえT社系列の部品メーカーであったとしても、現地生産拠点で対応できるとなると積極的に評価して採用したいという動機が高いのです。つまり展示会でうまく訴求できれば、系列を超えて新規の顧客との関係構築に繋がる可能性もあり、海外での承認活動をきっかけに日本側で新たな系列外メーカーへの扉が開いたという事例も聞こえてきます。

海外展示会の活用~新たな調達先との出会い

大手製造組立会社が信頼できる現地での部品メーカーを探していることと同様、下請けの製造会社にとっても、調達先の開発は非常に重要です。これらは単に待っているだけで見つかるわけではありません。売込みアプローチのあった業者とそのまま契約するわけにもいきません。もっと能動的に事業パートナーを自ら求める動きが必要であり、その情報を集める意味でも有効なのが海外での展示会です。

海外での展示会は、通常の売込みをしたい立場からの出展だけでなく、いわゆる「逆見本市」のように「こういう部品の調達先を求めています!」といったバイヤーの立場からの調達見本市も数多く開かれています。こういった展示会に積極的に出展して、最適な調達先との出会いを求めたり、販売代理店を求めたりすることも有効な手段です。もちろん、たとえ出展する予算がない場合でも、時間があれば展示会に出かけて、どのようなメーカーが調達先を求めているのか、また販売先を求めているのかの情報を収集し、来場者として商談の可能性を求めていくのが必要です。

海外展示会の活用~委託生産事業者との関係構築

多くの中小企業から相談を受けることとして、「委託生産先を紹介してほしい」というものがあります。ただ、これはそう簡単にはお応えすることができません。中小企業にとって自社で投資して海外展開を行うほど採算には乗らないので、うまくどこか委託生産を受けてもらいたいとの思いがあります。例えばちょっとしたプラスティックや金属加工品を小ロットで作ってくれるところを探したいというレベルのものです。確かにアジアの新興国では細かく対応できるメーカーは数多くあります。但し、単にOEM調達先として探し求めてもなかなか納期や価格、品質面で対応できるところを見つけるのは難しいのです。

そのためには、委託生産先と一緒に発展していこうというような事業パートナーを探し求める姿勢が必要です。自社工場の代わりになってもらう意識で、求める品質を達成するために、中に入り込んでモノづくりノウハウまで共有するような提携先を探したいという思いがないとなかなか成功しません。アドバイザーが「はい、ここが紹介できる委託生産先リストです」というような情報を提供できるとは考えない方が良いと思います。それよりも、展示会やジェトロの現地事務所での情報ソースや日系企業の事業展開を事前に調べ上げ、その中から自社にふさわしいパートナー選びを進めていくやり方が重要で、そのために選定プロセスでの助言であれば十分お役に立てると考えています。

私が存じ上げているある中小企業では、自社での海外展開は資金的にも体制的にも無理なものの、今まで日本で培ってこられたモノづくりノウハウで委託生産メーカーと関係構築を図り、海外に委託生産先だけで自社製造ネットワークを構築して、販売先の日本持ち帰りだけでなく、海外市場でも新たな顧客を広げられています。こういった新たなパートナーを見つける手段としても、海外展示会の活用は日本以上に有効に働くのです。