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自動車販売業の経営を考えてみた

最近、自動車の走行距離が10万キロを超えたので新車買い替えを検討していました。そう頻繁に乗り換えるわけではないので、年齢的にもおそらく自身が運転する車の購入は最後になるのではないかと思います。

車というのは人それぞれの価値観によって選択する車種は異なってきます。車に対するデザインや機能に対するこだわりや、通勤や日常使用の状況、家族構成の変化やライフスタイルによって機能性を重視したり、燃費や安全性など求めることは変化します。

当然一生の中でも、おそらく家についで大きな出費項目になります。機能や性能、価格だけでなく、買った後もほぼ毎日日常生活とは切り離せなくなるものだけに、点検や修理、車検などを含めて車のライフタイムバリュー全体から判断しなければなりません。

今回、新車購入の契約を行ったのですが、昨今の半導体不足や認証不祥事問題などから受注停止状態となっている車も多く、納期も半年以上というように消費者としても購入しづらくなっています。そういったいろいろな要因を踏まえて、購入契約に至った経緯から、自動車販売業の経営からEVの将来まで考えてみる機会がありました。

車の価値はディーラーの情報提供力とアフターサービスで決まってくる

私自身は国内外の勤務経験から何台もの車を乗り継いできました。日本と海外では自動車の流通形態はかなり違ってはいるのですが、特に車にこだわりがありませんでした。ただ海外で子供が生まれて家族でキャンプやスキー等で移動するときや、家具などは自分自身で運ぶ必要性があったので、いわゆるステーションワゴン系のような荷物をたくさん乗せられる車を選んでいました。日本帰国後も同じようなワゴン系を今も乗り継いでいます。

車種自体にこだわりがなかったことから、どこのディーラーから買うかを決める際には、もちろん価格等の比較検討を行って決めるわけですが、結局振り返ってみると、ディーラーのセールスによる商談時にちょっとした気遣いであったり、質問に対する迅速な返事や情報提供で、このセールスならと買ったものでした。また納車後の点検や車検の案内などきめ細かなアフターサービスによって、次に乗り換えるときも、お互い信頼関係ができてきたので、現在乗っているプリウスαは、年度末の販売であと一台助けてほしいというお願いがあって、たまたま買い替え検討していたタイミングが合ったことで購入契約したものでした。

ディーラーを切り替えた理由

ところがその懇意にしていたセールスが出世されて2022年の秋に他店の店長で転出されました。そのセールスの引継ぎも十分でなかったのか、その後のディーラーに対する信頼感を失ってしまいました。前払いしている安心パックによる定期点検や車検案内などの予約連絡の電話は来るのですが、そのディーラーの店長もセールスも顧客の顔を全く覚えていないのです。しかも、私はいかなかったのですが、車検上がりのときにいきなりカローラの見積書を何の説明もせず渡してきたとのことでした。

当時、現在乗っているプリウスαが生産終了となり、一番近い後継車種がカローラツーリングということで、もし乗り換えを検討するならということで参考までに見積書を作ったみたいでしたが、これはディーラーとして最悪で、何台も乗り継いできたリピーター顧客と満足にコミュニケーションを取らずに、プリウスαのオーナーにカローラを説明なしに見積書だけを渡されたことで不信感を抱き、その一点でもうここからは買わないと心に決めました。

今回乗り換えを検討するにあたり、候補車種の受注・納期状況はどうなのかということも確認したいので、あえて車で行かずに、近くの駐車場から徒歩でぶらっとディーラーに入ってみました。店長が出てきたのですが、予想通り私の顔を覚えていません。また今受注開始となったのはヤリスだけですといった一般情報のトークのみで、店内には展示車もなく、来客駐車場と同じ場所に2,3台試乗車があっただけで、一度見てみたいと思っていたカローラツーリングもありませんでした。

一応帰りがけに名前と住所を伝えたので、次の日にセールスから電話があって、現物を確認されたいなら、他店から試乗車を準備しますということでしたが、その時点ではカローラツーリングだけでなく、他の車種も候補に入れていたので、不信感を抱いていたものの、検討が詰まればまた連絡するとしていました。

結局決めたのは他のディーラーの誠実な対応

今の車はそのディーラーの以前のセールスへの義理立てがあったので、他のディーラーから買うにしても、その連絡だけはするつもりでした。同じ市内にある別系のディーラーに飛び込みで入ったのですが、そこは私が確認したい実車が全て並んでいて試乗も可能でした。

そのディーラーの対応に一番好感が持てたのは、もちろん車に対する説明もさることながら、昨今の厳しい受注・納期状況について、車種別に本日の納期情報として、玄関ドアを開けた正面に黒板で示してあったことでした。もちろんセールスの方は車種別にどんな状況か、例えば半年以上待ったときには、次のモデルチェンジがある車種については、事実上販売できない背景であったり、現在乗っている車の車検時期までに納車できるものから絞っていくと、こういう車種なら対応できるなど、きめ細かい情報を提供してくれたのです。

また実車でカローラツーリングも確認したのですが、以外と車高が低いのを実感し、今のプリウスαと比較して後席の狭さを感じてしまいました。また高齢になってきているので小さめのアクアも検討候補に入れていたのですが、圧迫感を受けてしまうので最終的に外し、今後親の通院など高齢者にとっては座席の高さがある程度ある方が乗り降りしやすいSUVが適しているように感じたので、カローラクロスに絞り込むことにしました。

そのディーラーは商談後もオプションについてのメールでの質問にも、連日即答してくれたこともあり、今後はここに任せたいと思うようになりました。ただ以前のディーラーにも義理があるので、相見積もりだけは取らせてもらうことは伝えました。

これらの経緯を以前のディーラーに不満も含めて手紙で伝えたところ、セールスの責任者が飛んできました。ただそれでも店長は一切直接接触すらしてきませんでした。セールスに対して伝えたのは、申し訳ないが他店と契約させてもらうが、セールスには何も責任がなく、店長のマネジメントの問題だと明確に伝えました。

それでも見積りだけはさせてほしいというので、すぐに見積書をメールで送ってきたのですが、相当思い切った値引きを提示してきました。ただ、いくら新しいディーラーでの提示価格より10万以上安くでも買わないと決めていました。

同じメーカー系列での比較値引きはするつもりはありませんでしたが、以前のディーラーが出した見積書そのものを、新しいディーラーに見せたところ、これを目にした限りはそのままにしておくことはできないとして、非常に頑張ってくれて結構なレベルの値引きを再提示してくれたのです。もちろんそれでも以前のディーラーが提示した価格の方が下回っていましたが、高い価格で双方満足して契約を行ったのです。

つまり車というのは価格だけで価値が決まるというものではないということです。

自動車販売業にとって一番大事なこと

ほんのちょっとしたことかも知れませんが、店長の稚拙なマネジメントで、何台も乗り継いできていた地域の既存顧客の一人を失ったのです。

販売・マーケティング理論において、もっとも大事なことは既存顧客をいかに大事にするか、つまりリピーターの確保に尽きると思います。車のオーナーは頻繁に買ってくれるわけではありませんが、定期点検や車検などで継続的な接点を有しているのですから、そういった場を利用して、単にオイル交換などのサービスを提供するだけでなく、家族が今どうなっているのか、子供が成長して独立していったのかなど、顧客が今どういう状況で車を使っているのか、他愛のない話から次の購入につながる情報を集められる立場にあります。顧客がいつ買い替えようと考えているのかは、すぐにはしゃべってくれません。しかし、顧客との双方向との関係性が構築できれば、必ずリピート購買につながるのが自動車販売業だと思うのです。

また顧客は点検以外にはそう度々店舗まで来てくれません。であれば店舗は既存顧客リストを日ごろからメンテナンスし、昨今の自動車受注状況や新しい車についての情報をまとめ、一軒ずつ訪ねていくか、パンフレットとともに自筆の手紙を書いて送る地道な営業活動さえ実行すれば顧客は必ずついてきます。

今まで自動車販売業の経営の苦しさを耳にはしていましたし、社員の確保と育成について頭が痛いというような話もセールスから聞きました。でも十分成長発展する鍵は必ずあると思うのです。

ネット販売でEVを買いたいですか?

EVの技術な未成熟さから、今のEVは顧客が求めるレベルには達していません。私も今回の新車乗り換えにおいても、少しはEVについて考えたこともありますが、逆に今のEVでの使い勝手の悪さを直視すれば、そんな大金をどぶに捨てるようなEVを買うという選択肢はあり得なかったです。

しかも外資はディーラー網が十分に構築できていませんし、ネット販売で価格対応して販売拡大を目指しているようですが、EVの最大の問題は買った後であるということまでよく考えていれば、少なくとも現時点ではEVはあり得ない買い物です。

毎日毎日電池の消耗を気にして走り、充電に何十分も行列して待つなんて、皆さんの時間価値を捨ててまで乗りたいものですか? しかもメンテナンス技術体制も不十分で、修理代も保険料も馬鹿高く、タイヤの消耗も激しく、いつどこで燃えるかもわからない車なんて、顧客価値を考えればありえない製造物だと思うのです。