海外現地での「なんちゃってコンサル」には要注意
社会人になって前職から一貫して海外事業に携わってきました。実際に海外赴任で仕事をしてきたのが米国、欧州、ベトナムと合計13年半になり、日本勤務時にも中国展開戦略や東南アジア全域、インド、中近東とも関わってきました。中南米とアフリカ以外はだいたい海外オペレーションについての勘所が働きます。
しかし新興国での海外事業展開においては、長年の経験から共通した要注意すべき点があります。
通常、新興国で海外展開を推進するには、相当の大手企業以外はその国・地域では知見が不足しており、人脈もなく、法制度も商習慣も異なり、人の考え方や文化も異なるため、日本型のマネジメントが通用せず苦労することが多いものです。
とりわけ中小企業が海外展開したときには勝手がわからず、問題が次から次へと勃発して困り果てることがよくありますし、そもそも海外事業のマネジメント人材として育成されないまま赴任することが多いため、いろんな経営管理上の困難にぶつかります。
本来は、海外展開のフィージビリティスタディを徹底して検証して投資決定を行うべきところですが、多くの場合、紹介された現地在住のコンサルの口車に乗って、十分な体制づくりやリスク検証なしに海外法人を設立してしまっているケースを良くみます。
しかも、新興国ではいわゆる「なんちゃってコンサルタント」が跋扈しています。少なくとも私が深くかかわってきたタイ、ベトナム、インドネシア等では質の悪いコンサルタントがいることは事実であり、日本企業にとっては要注意であると思います。
なんちゃってコンサルの特徴
「なんちゃってコンサル」の一番の特徴は、「人脈を持っていること以外に特に売り物がない土着の日本人」であることです。新興国では法体系が未熟なこともあり、運用も恣意的なことも多く、政府役人との関係をもっていることが有益に働くことがあることは確かです。ただ、安易にそういったコンサルに騙されて、スムースに許認可を受けて事業を立ち上げるためにコンサルを頼ってしまうことの結果、コンプライアンスの問題に巻き込まれてしまうリスクも大きくなります。
そういったコンサルほど人脈以外に何ら経営ノウハウを持っていないことも多く、もちろん弁護士や会計士、診断士などの専門資格を有しているわけではありません。だいたい現地に土着している「なんちゃってコンサル」は、元々企業の海外駐在員として赴任期間が終了した後に帰国せずに居ついてしまった人が多いという感じがします。あくまで感覚的ですが、アジアの中ではタイのバンコクが一番多いように思いますが、ベトナムにもインドネシアでも跋扈しています。日本人を騙すのは現地人でなく日本人というケースが多いのです。
ただ、コンサルタントの活用を単にコストの無駄と判断するのは早計です。自社でその地域でのビジネスに長けた人材が育ち、マネジメントノウハウを有している大企業は別ですが、最も効果的なのはそういった人材やノウハウを持ったコンサルタントを海外展開計画の段階からパートナーとして活用することです。コンサルタント費用がもったいないと、全て自社の人材やノウハウだけで新興国展開するのはあまりにもリスクが高く無謀ですし、結局問題を解決できずに海外事業展開計画が頓挫することもあると覚悟する必要があります。
海外展開支援に最適なコンサルタントを探すには
海外事業での経営支援を行うコンサルタントは、会計アウトソーシングサービス会社の活用は効果的です。しかも現地法人として財務会計に特化した支援を行っていますので、税務関係や法律関係の支援には大変有益ですし、実際大手企業の多くも活用しています。
ただ課題もあります。海外展開後の財務面の支援アウトソーシングとしては最適である一方、あくまで現地法人の経営管理業務のアウトソーシング機能に留まります。親元の本社事業と一体での最適な経営戦略を支援することは困難であり、販路開拓や市場調査などの機能はなく支援サービスの範囲外となります。
一方、日系の弁護士事務所や監査法人もサービス拠点として法人を有していますが、主に大企業が顧客であり、中小企業が求めるきめ細かな税務やリーガルサービスを安価に提供できる存在ではないように思います。
本来ならば中小企業診断士のような中小企業経営支援に長けた専門家が、国内本体事業から海外拠点経営まで包括的に支援するのがあるべき姿です。いわゆる国際業務まで中小企業経営を支援できるようなコンサルタントをパートナーとして持つことが最適です。
単に海外法人設立手続きを支援するだけならば、現地に多くある設立コンサルタントに依頼するだけで十分です。しかし、設立後の組織・人事マネジメントや販路開拓・マーケティング支援、リスクマネジメント、外部連携支援、市場調査など、親元の経営戦略と一体となった支援は、会計アウトソーシングサービスや弁護士、監査法人でも難しいと言えます。
ところが、中小企業診断士は経営コンサルタントの国家資格でありながらドメスティック色が強く、グローバルなコンサルタントとして支援している国際派診断士の数は非常に限られています。一方、海外在住の中小企業診断士は近年増えていますし、東南アジアだけでも数十名おり、海外在勤経験のある診断士とともに支援ネットワークを広げつつあります。ただ大半が企業内診断士であり、独立している海外展開支援コンサルタント事業を行っている中小企業診断士はまだまだ少数です。
親元の中小企業経営支援とともに、海外拠点の展開計画立案や海外法人のマネジメント支援を一体で行える中小企業診断士は貴重な存在であり、ジェトロや中小機構などでは海外展開支援専門家を活用できる体制を提供しています。ただ、あくまで国の政策なのでその支援を得られる対象企業の数や支援期間は限られています。
各都道府県にある中小企業診断士協会では、県を超えて国際支援ができる診断士のネットワークも強化しつつあり、ご要望の国や事業に国内外一気通貫でコンサルティングできる最適の専門家を紹介できるように取り組んでいるところです。公的機関への相談を通じて支援要望を受けることも増えてきていますが、まだ具体的な海外展開構想が固まっていなくても、海外でなんちゃってコンサルに引っかからないためにも、経営の最適化の観点からまずは診断士にお問い合わせいただくことをお勧めします。
海外展開支援のパートナーとして活用できるかどうかを無料相談で見極めたうえで、必要に応じて顧問サービスとして双方納得して契約できるので、安易に「なんちゃってコンサル」の轍を踏んだり、相談時間に比例した高額のコンサル料を請求されるような詐欺に合うようなリスクはございません。