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ベトナムが直面するアフターコロナの課題と日本企業

日本では一部の都道府県を除いて非常事態宣言が解除され、営業自粛要請も段階的に緩和されるところまできました。ただ確実に諸外国の状況から第二波、第三波の感染が起こることが予測されています。国内にずっと引き込まざるを得なかった多くの日本人にとって、なかなか海外の実態がどのようになっているのかという情報は少なく、メディアを中心に感染状況ばかりのものがほとんどであり、海外の現場の経済や産業がどのような課題に直面して、どう対応しているのかについてはなかなか掴めませんし、そういった情報に触れる機会も少ないです。

世界が常にグローバルに日々変化している現状に感度高くアンテナを張り、とりわけ地球全体に影響を及ぼすコロナショックによって、各国でアフターコロナ時代にどうビジネスモデルが変化していくのかを考えていく必要があると思っています。

今ベトナムはどういう状況か

あまり気づいていない人もいると思いますが、ベトナムは水際対策と感染拡大防止に成功した稀な国の一つとなっています。ベトナムはあまり国際社会ではプロパガンダが得意ではない面もあり、感染発生を隠蔽して世界に拡大させた原因となった国や、世界の防疫先進国だと自慢した途端にクラスターを発生している国のように偉そうにひけらかすようなことはしません。

本日時点での累計感染者数は288名で、中国に国境を接している割には非常に少ないです。驚くべきことは、何と死者がゼロということです。感染者数も徐々に上がっていることは懸念されることではありますが、大規模なクラスターを起こすことなく徹底した封じ込めを行ってきました。まだ数名の感染者が確認された1月の旧正月明けから、事実上ベトナムはロックダウン措置を取り続けてきました。学校もまるまる3か月の休校となり、商業施設もほとんどが閉鎖命令を受けて休業を続けてきました。

外国との国境も早期に閉鎖を行い、3月初旬からは外国からの旅客定期便の受け入れをほとんど止めています。外国からのノービザ入国を停止したり、発行済みのビザ無効措置をとりました。外国人、ベトナム人問わず感染地域から入国した人には全て14日間の強制隔離となりますので、事実上観光客だけでなく、現地法人の日本人出向責任者も入国ができない状態が続いています。

ようやく5月4日から順次規制が解除され始めており、学校も再開して商業施設の動きも徐々に動き出しています。一部の情報によれば、中国と韓国からの入国規制を解除する方向で検討がされているようです。日本は残念ながら非常事態宣言が続いていることもあり、日本企業の海外での活動再開について遅れてしまうことが懸念されます。特に問題は、多くの国で入国規制解除の条件として、入国時の検疫において、コロナに感染していないことの医療機関による証明書が求められることです。つまりPCR検査の陰性証明を持ってこないと入国させないという条件です。中国や韓国はじめ、日本以外の多くの国ではPCR検査体制が充実しているのでそういった証明書を用意することはできると思いますが、日本では今の医療検査体制では無理です。このあたりのPCR検査の問題は、結果として日本企業の国際競争力をさらに阻害する懸念を抱えているともいえます。

アフターコロナでベトナム経済はどうなる

感染拡大防止に成功したベトナムですが、足元の経済では深刻な影響が出ています。日本以上に長期間の外出禁止措置が取られたり、商店や工場の休業も指示されたことで、直近のベトナム経済は相当傷んでいます。日本では連日マスコミや国民が、国に対して早くカネを寄越さないと生きていけないと要望や文句ばっかりです。一方、ベトナムは社会主義国ということで、中国のように国民を強権で抑え込んでいるという印象を持ちがちですが、実際、国に対してデモや暴動が起きたということは聞きません。今回の一連の対応でベトナム人がどう感じているのかということを直接聞いてみたところ、確かに経済的には大変で苦しいのには違いありませんが、多くが国の対応を支持しているようです。一般的なベトナム国民は、経済や日々の暮らしよりも「安全や健康を最重要視する」という意識があるようです。日本では学校の休校が続くことによって学力の遅れはどうするんだとか、受験に国はどうするつもりだという国民の意識として、何とかするのが国の責任だというものがありますが、ベトナム人はもっと違ったレベルで物事を考えています。それは家族の幸せにとって何が一番大切なのかということです。「新型コロナウイルスで当分勉強できないからと言って、1年ぐらい留年しても、命や健康を失うことに比べれば、大した問題ではない。勉強はコロナが終息してからすればよい」と考えている人が多いのです。なかなか日本人には理解できないところですが、そういう考え方で生きているベトナム人を羨ましくも感じられるのです。

実際、ベトナムはコロナの影響で、国内経済は大きく傷ついています。4月の自動車販売は前年比44%も落ちていますし、ホンダの国内でのバイク販売も前年比72%減となっています。また観光が主要産業であるベトナムですが、外国人入国が禁止状態となっていますので、観光産業が壊滅状態であることは日本と同じです。商業もようやく再開したところで大変な状況には変わりありません。

国内市場のみならず、輸出を牽引していた海外からの受託事業も急減してます。欧米や日本などからICT開発サービス事業についてはキャンセルで大幅に落ち込んでいます(アジアからは3割減、欧米からは6割から9割減)。また製造OEM受託においても、サプライチェーンが機能しなくなっているため、部品が調達できなかったり、コロナ感染拡大防止のために幅広く休業対応したことに加え、国際間の人の往来が停止しているため、部品だけでなく技術の交流、提携もストップして輸出が急減しているのが実態です。

一方、ここへきて、国際的に中国のリスクが顕著となり、今後急速に脱中国のサプライチェーン再構築の動きが強まります。実際早くも欧米企業が中国からASEANへの移管を進めだしてきており、その一環としてベトナムへの生産拠点シフトの動きが目立ってきました。しかし、日本企業の動きはまだ遅々としていてスピード感に欠けます。但し、このままベトナムへのシフトが拡大加速していくかといえばそうではなく、実際ベトナムの裾野業界からは外資からの生産受入れに不安が示されています。それは地場企業の生産体制の能力であり、要望技術レベルに追随できるかどうかの懸念で、国にも支援を要請しているようです。

ベトナム企業が望む日本企業との取引

欧米を中心に今後ベトナムへのシフトが進むと思われますが、以前より日本とベトナムの産業的つながりや取引は広範囲にわたっている実績がありまので、このコロナによる地殻変動に遅れることなく迅速に対応して、以前にも増してつながりを深めることが必要であると考えています。元々、ベトナム企業は日本企業に対して望んでいる取引とは次の3パターンのどれかにあたります。

1.先端技術、高品質、生産管理、環境対応のノウハウを有している日本企業との取引を通じて自社の技術や管理レベルをアップしたい

2.ベトナム企業が持っているベトナム市場での販売チャネルや商習慣への対応、低コスト生産力のメリットを日本企業に提供したい

3.ベトナム企業が提供できる製品・サービスを日本市場で販売してもらえる代理店を探したい

こういったニーズに対して、日本企業と合弁や出資、技術提携、OEM生産・開発委託、販売代理店契約などWIN-WIN関係の取引が十分成立しうる可能性が非常に高いと思いますし、日越の企業間の架け橋として、双方ともに飛躍発展するようお役に立ちたいと考えています。

ベトナム人は日本企業をどう見ているか

今までも、そしてコロナ後のこれからもベトナム企業と日本企業がお互い信頼関係を高めて協力しあえると思いますし、実際彼らにとって中国企業や韓国企業と取引するよりも安心して取引できる信頼感のある企業が多いとの声を聞きます。しかし、一方でベトナム人は日本企業をどう見ているのかという点にも耳を傾ける必要があります。どうしても日本企業の多くはWIN-WINと言いながらも、彼らがどう感じているのかについて全く知らないという企業も多いように思いますので、自らの反省という意味からも参考になります。

● 先端技術、高品質、生産管理についてはノウハウを有していて、まだまだ足元に及ばない

● 日本企業で働いたり、取引することによって、優れた日本経営を学び自分自身もステップアップできる

● ベトナムの経済・社会発展に貢献してくれていて信頼できる企業が多い

● アグレッシブさがあまりなく何をするにしてもスピード感に欠ける。責任の所在があいまい。

● 失敗を極端に恐れ、前例踏襲主義、融通が効かない。

● 時間、納期に過剰すぎるほど厳しいのに意思決定に時間がかかりすぎる

日本企業の立場からは、時間、納期に厳しいのは当たり前ということになりますが、時間に関する感覚は文化の違いということも考える必要があるものの、指摘事項の多くでなるほどということもあります。お互い相手を理解することで信頼関係を一歩ずつ高めていけるものと思います。