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コロナ禍の今こそ松下幸之助翁の言葉が身に染みる

コロナショックが世界を覆い、外出自粛で人の流れが止まったことで、すぐに影響が出る飲食店や小売、観光、娯楽、スポーツなどで深刻な経営危機に直面しています。テレワークでずっと家にいることが多く、日ごろ目にすることがほとんどないテレビのワイドショウですが、連日朝から晩まで同じコメンテーターが繰り返し国に対して、支援策が遅いだの、額が少ないだのと批判ばっかりでつくづくうんざりしてしまいます。余計気が滅入ってしまいます。ワイドショウ以外の時間帯では、昔のドラマの再放送や、スタジオ録画ストックがなくなって昔の放送の総集編だけの番組ばかりです。本当に電波の無駄遣いだなと感じます。

メディアの本来の役割は、一般国民が知らない世界中の生の情報や、これから生きていくための役立つヒントを提供して社会に貢献していくべきものであると思いますし、それができないのなら、当然のことながら誰も見なくなって、結果的に広告もつかなくなって存在価値がなくなっていくのは必然です。今その足音がひたひたと聞こえてきます。実際、私たちがほしい情報はほとんどがネット空間にあります。メディアの記者や番組制作者も、ネット情報を検索してネタを探して番組や記事の企画をしているのですから、一般人が全く知らない斬新な情報を届けることが最早できなくなっています。私自身も今後世の中のパラダイムがどう変化して、何をしていかねばならないのかということを考えるとき、テレビや新聞、雑誌などから得られる情報はほとんどなくなってきています。

こういった新しい情報をネットから入手する方が旧メディアより遥かに有益で迅速であるのですが、コロナ禍に直面した今こそ先人が残した書籍や言葉を振り返ることによって、改めて今のこの苦境をどうすれば生き残っていけるのというヒントを得られることが多いように思います。

今起きているコロナ禍によって、いよいよこれから製造業や建設業、運輸も含めた大型倒産や大量失業の可能性が現実的になりつつある中、かつてない大不況が起きたとき、先人たちはどう対応したのかということを考えると、私はいつも松下電器の創業者の松下幸之助翁が残した書籍を振り返ることにしています。驚くべきことに今起きている危機を予測していたかのような的確な言葉をたくさん残しているのです。少し長くなりますが、「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」という1980年に80歳を超えたときに書いた本の第二章「経営者の心得」のなかからご紹介します。

引くに引けないという決意が道をひらく

石油ショック以後の商売、経営をとりまく環境には、きわめて厳しいものがあります。刻々に変化する先が読みにくい状況の中にあって、それでも、何らかの手を次々に打っていかなければならない。しかもその打つ手に適切さを欠けば、一瞬の間にいわゆる”港で船を割る”といったことにもなりかねないというわけで、困難といえばまことにたいへんに困難な時代になったものだと思います。今は戦争でいうなら、うっかりするとこちらの敗北に終わるかもしれない、命がなくなるかもしれないというほどの、非常に手ごわい大敵を向こうに回しているような状態ともいえましょう。

しかし、そのような困難というか不況というものは、これまでも五年に一度とか十年に一度とか、大きくは半世紀にいっぺんというように、その時々の社会情勢あるいは世界の情勢を背景にして、何度か起こってきています。その時々に経営者はどのようにして切り抜けてきているのでしょうか。

国々によって、また経済界の情勢によって対処の仕方はおのずから違うでしょう。しかし、いついかなる場合でも変わりのないことが一つあるように思います。それは、経営者としての自覚にもとづいて、最大の努力をもって勇敢に立ち向かい、最善の戦いを進めていくということに尽きます。その勇猛心がなければ敗北してしまいます。

要するに不況というのは、大暴風雨に直面するようなものです。大暴風雨になれば、その中を歩いていかなければなりません。歩かずに退避する、というのもときには一つの方法でしょうが、企業経営において退避ばかりしているというようなことは許されません。やはり最後はいやでも立ち向かって歩かなければなりません。

それには、そのための覚悟をし、用意をすることです。傘なり雨具をもっと丈夫なものにするとか防寒服でも着るとかの用意をすることです。

そして、私の経験からいきますと、落ちついてよく考えさえすれば、雨の強さ、風の強さに応じて、傘をさす方法もありますし、風よけをするような心がまえも湧いてくるものだと思います。それは、このまま退避することはできない、どうしてもこの暴風雨に向かって進んでいかなければいけない、という決意をすれば、そこに道というものはつくものだということです。

いずれのときにも、身を切られるような思いに悩みつつも勇気を鼓舞してやっていく。崩れそうになる自分を自分で叱りつけて必死でがんばる。そうすればそこに知恵、才覚というものが必ず浮かんでくるものです。

もし自分に知恵がなければ、先輩にきくとか、あるいは同業の競争相手にもきく。「弱っているんだが、なんとかいい方法はないか」と、そこまで腹を割って相談すれば、競争相手であっても知恵を授けてくれることもあります。私自身、これまでそうやって道をつけてきたように思います。

そのようなことから、私は、今日の厳しい事態に対処するにも、とにかくまず、引くに引けないという経営者としての覚悟を定め、最大の努力をもって勇敢にこれに立ち向かおうという精神を確立することだと思います。それが今日のむずかしい時代に対処する第一歩ともいえるのではないでしょうか。