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PDCAで効果が出ない原因とは?

ベトナム企業の経営者向けにODAの一環で実施している経営人材育成のための「経営塾」の本邦研修セッションとして、3グループに分けて多くの日本企業との交流や商談、企業訪問を通じて日本経営を学んで帰国しました。合計約70名の経営者や経営幹部が2週間かけて貴重な経験を積むことができました。この本邦研修実施には、JICAや中小機構など公的機関の支援が言うに及ばず、多くの中小企業のご協力があればこそのプログラムでした。

当ベトナム経営塾はすでに12期までがほぼ完了しており、年々本邦研修でも学ぶレベルも上がり、商談会の成果も上がってきています。私は現地で一週間かけて一つの講座を担当しておりますが、昨年から本邦研修でのコースリーダーとして研修生の本邦研修の課題設定と成果に結びつけられるよう総括の支援を行っております。

過去の本邦研修では、どちらかというと日本研修旅行のついでに企業を何か所か訪問して見学するという側面があったので、物見雄山的な意識で来日していた経営者もいたことは否めません。しかし、あくまでODAという日本国民の税金が投入されている研修であり、本邦研修で日本企業の生の経営を体感することで、講座では学べない日本式経営の神髄を活かしてもらうように仕向けることと、やはり日本企業にとってもベトナム企業とのネットワークづくりや具体的商談につながるようなプログラムにするべく改善を重ねてきました。

PDCAをどう実践しているかを学ぶことの重要性

経営塾の本邦研修では、各グループごとに5つのチームを編成してそれぞれ別々の課題を与え、その課題に沿って日本企業経営を学び、最終日にチーム別に取り組み報告してもらうようにしました。その課題を①品質管理の高度化、②国際経営力の強化、③生産管理力の強化、④人材育成の実践、⑤経営理念・ビジョンの実践に分け、チームメンバーが協力してそれぞれ訪問先での質問や見学のポイントなどをまとめ、最終報告でチームを横断して経営のレベルアップのために学び合うということを主眼に指導していきました。

課題は分かれていますが、その共通の視点として強く意識づけしてもらったのがPDCAです。PDCAは講座でも学びますので、その基本ややり方については十分理解しています。日本でも経営者に限らずビジネスに関わる人ならPDCAを知らない人はいないでしょう。

しかし、PDCAをきっちり回して成果を出している経営者もいれば、成果につながらずPDCAサイクルは意味がないという人も多いと思います。経営塾を卒業したベトナム人経営者でも、PDCAサイクルでどんどん経営力を強化して成果を上げている企業が増えている一方で、結局何も成果が上がっていない企業も多いのです。本邦研修で設定している5つのチーム課題は全て経営力強化のために改善していくべき重要な項目ばかりです。全て完璧にできている企業は日本企業といえどもあまりいないのではないかと思います。

ベトナム人経営者は日本企業から多くのヒントを学んできました。訪問した企業では、こんなやり方をしている、こんなシステムを導入してこういう管理をしている、PDCAもこういうやり方をやっていた・・・など、見たことをそのまま最終日に報告していたチームが目立ちました。

私は彼らに伝えたのです。「ならば、具体的に自分の会社との違いは何か? そのギャップを埋めるために、課題について誰がいつまでに何をどう取り組むのか、つまりPLAN、DOの具体化です。そしてどういうスキームでCHECKを行い、どうACTIONまで持っていくのか? これを総括しない報告は突っ込みが浅いです。何を学んできたのですか?」・・・と。

ちょっと厳しめのコメントをしたのですが、「人材育成に力を入れることの重要性を学びました。今後ベトナムに帰ったら人材育成の取組みを強化します」だけでは何の具体性もありません。おそらく効果は出ないでしょう。具体的に誰がいつまでに何をどうするかの打ち出しをして初めてPDCAサイクルに乗るのです。

日本でも具体性のない取組みがPDCAが成果を生まない原因となっている企業をよく見ます。確かにPLAN、DO、CHECKまではきちんと具体的にスキームを作っているところは多いでしょう。しかし、最も重要なのは最後の「ACTION」です。「DO」も「ACTION」の違いはわかっているでしょうか。「DO」も「ACTION」も日本語の意味は「実施行動」です。でも、「DO」は計画に対する実施である一方、「ACTION」はCHECK後の改善に対する取組み行動ですので、明らかにレベルが違います。

PDCAサイクルを回すというのは、同じレベルのところをぐるぐる回しているだけでは経営改善につながりません。次のサイクルに入るときにはレベルをあげていかなければ意味がないのです。しからばどこでレベルアップするかと言えば、それは「ACTION」のステージです。「CHECK」で当初計画に対する実施状況の差異分析を徹底しておこない、その上で次のレベルに上げていくために、何の経営資源をどう見直すのか、つまり人、モノ、カネ、ノウハウといった経営資源のレベルを具体的にどう高めるかを明確にし、その経営資源のレベルアップのための「ACTION」を具体化することが最も重要です。だいたいPDCAで成果が上がっていない企業というのは、この経営資源のレベルアップ「ACTION」の取組みがほとんどされていないか甘いことが一般的です。そしてこの「ACTION」に取り組むべき人は紛れもなく経営者自身であるというのを理解できていない企業ではまずPDCAによる経営力向上は望めません。

PDCAサイクルは意味がない!回していても成果につながらないとぼやいている経営者の皆さん!その原因は経営者ご自身にあるのに気づいていますか? 経営者自身がPDCAの「ACTION」に取り組まず、部下にPDCAをやらせているだけでは、何年たっても同じところをぐるぐる回っているだけに過ぎないのですから。