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AIインターネット革命時代を生き残るには

最近、ICT、AIやIoTに関連したニュースを目にしない日はありません。世の中がどんどん便利になり、今までできていなかったことがいとも簡単に実現するようになっています。現場、現物を見なくても机上というよりスマホの画面でバーチャルに分析、把握、そして実現できるのです。モノづくりにおいては、現場・現物・現実の三現主義そして5Sの徹底が強く求められます。これこそが日本のモノづくりの強さの源泉であると、実際研修の現場でもそう教えられてきました。

しかし私を含めた企業OBのコンサルタントの多くは、ここ数年に起きているAI、IoTによるインターネット革命を現場では経験していません。本当に世の中の最先端のトレンドを踏まえた的確なアドバイスができているのでしょうか。ある特定分野については相応の知見を有している方が多いのですが、グローバルかつ先端技術のトレンドといった視野や能力を持っている人は非常に限られています。どんなにモノづくりや経営管理分野に詳しいOBであったとしても、AIやIoTの知見のない人は今後コンサルタントとしては役に立たない時代になってきたといえます。

私自身も、グローバルとICTのトレンドの把握と、専門性の磨きに一層勉強していく必要を強く感じています。世の中が日々大きく変化している中、ICT化によって私たちの生活や仕事の何が変わっていくのか正しく理解しなければ、ポンコツコンサルになってしまうという危機感を覚えています。そのトレンドを7つのAI革命分野として認識し、企業経営への提案、アドバイスを極めていきたいと思いを新たにしています。

1.車社会のIT化「CASE」

この数年の間に、自動車産業に大変革期をもたらすといわれるキーワードが「CASE(ケース)」です。頭文字となっている4つの領域とは「Connected:コネクティッド化」「Autonomous:自動運転化」「Shared/Service:シェア/サービス化」「Electric:電動化」の進展によって商品構造、バリューチェーン、ビジネスモデルが非連続的に変化し、脅威とチャンスを生み出していくとみられています。自動車業界は、産業構造からも消費者市場からも巨大であり、変化による経済へのインパクトは計り知れません。CASEという意味は知らなくても、毎日の自動車に関するニュースはすべてこの4つの領域のどれかにあたっているといっても過言ではありません。このCASEの基盤になっているのがICT技術であり根幹はAIの活用です。CASEに関するグローバルトレンド、最新技術動向に精通しないと自動車産業界へのコンサルティングなど提案するのも恥ずかしいぐらいです。

2.金融のフィンテック

インターネット革命によって最も現実的に影響を受けるのが金融業界です。感覚的にもわかりますが、今後銀行の存在価値はどうなっていくのでしょうか。振込もATMもコンビニで用が足ります。銀行窓口業務もどんどん縮小してきています。資金需要も銀行からの借入金依存が低下しています。ネットバンキングが進み、送金決済業務はスマホで事足りるだけでなく、現金そのものを使わなくなってきています。税務申告もスマホでできる時代になりました。世界のトレンドを見てもキャッシュレス化が進んでいる中、現金主義の日本は遅れていると言われてきましたが、ここ一、二年のキャッシュレス化の動きは相当進んできています。私もコンビニでの支払いはほぼスマホ決済になりました。

3.放送通信の「3」「4」「5」

数年前から放送と通信の融合ということがトレンドであったのですが、これは一方向でコンテンツを供給する媒体である「放送」そのものが、双方向の社会インフラとなった高速大容量のインターネットにとって代わられる時代になったという変化を感じなければなりません。その意味では、今の放送法は完全に時代遅れです。昨今問題になっているNHKの受信料のあり方についても、多様化する情報メディアにあって、一方的にコンテンツを送り付ける媒体に成り下がったNHKが、いつまでも放送の受信料制度に寄りかかって生き延びるのは最早時間の問題とも思えます。インフラであるインターネット利用者にまで受信料を取ろうと目論んでいる姿勢自体、世の中のトレンドを読めていないと感じます。

今後、放送通信業界のトレンドは「3」「4」「5」に代表されると思います。「3」は3D化、今後放送通信のコンテンツはVRに代表されるように3D化が進むでしょう。それによってコンテンツ制作も映像機器も対応するスピードが上がると思います。そして「4」は4K、8Kに代表されるコンテンツの高精細度化。オリンピックに向けて4K対応TVが売れているようですが、情報のデータ量が一気に増えてきますので、単なるTVだけでなくネットワーク関連情報の通信分野まで拡大していくと思われます。さらに「5」は昨今話題になっている「5G」です。モバイル通信の基本インフラが第5世代になることで情報量は飛躍的に増えます。これによって実現できる社会の情報インフラは根本的に変わるのです。まさしくビッグデータをどう活用するか、ここを押さえることが社会の覇権を握るといってもよく、GAFAの動きであったり、ファーウェイの問題にも直結しているのです。

4.家電のITネットワーク化

今までの家電は、単体機能からの提供価値の範囲から脱却できていません。「機能」と「コスト」といったいわゆるコスパを顧客価値の基準に置いていたともいえます。その中で「お得感」のある商品開発にしのぎを削って競争してきたわけです。しかし、今や斬新な価値を創出できるような単体商品はほとんど出てこなくなってきました。個々の商品から得る利便性の向上は限界に近いとも言えます。顧客は求める商品は家電機器そのものではなく、機器を使うことによって得られる便益である「生涯価値」つまりライフタイムバリューです。TVのチャネルやエアコンのスイッチはリモコンに代わり、それで得られる便益の段階から、今やインターネットを使った便益のネットワーク化の視点なしには成り立たなくなりました。冷蔵庫だけ、エアコンだけ、TVだけといったハード発想の事業では意味がないのです。ITを駆使した家電のネットワーク価値を追求し顧客の生涯価値にどう貢献することができるかの発想が求められています。今の日本の家電メーカーの凋落はこの視点が欠落していることが原因の一つのように感じます。

5.サービスのシェアリング化

これは車のCASEや家電の価値にも関連することですが、市場はハードを所有することよりも、設備や機器を使うことによって得られる便益に対して対価を払っているという本質を考えれば、メーカーに限らずサービス業界においても提供価値のシェアリング化は加速していくと思います。既存業界の反発もあり、シャアリングサービスの代表格であるUBERなどの配車サービスや民泊などは規制されて日本では広がっていませんが、海外では技術的にはどんどん新たなサービスが生まれてきています。昼間に自宅の駐車場が空いていて、誰かが借りたいというニーズがあればそれをつなぐサービスが出てきますし、普段使っていない別荘があれば貸すことで資産の有効活用ができます。

またサービスの経営形態が変わるということだけでなく、就労も労働サービスの提供という考え方に立てば、いろんな働き方の中で、労働力をシェアリング活用することも増えていくという見方もできます。これは副業の拡大であったり、フリーランスも労働サービスのシェアリングという意味で増えており、今後の働き方改革を軸にしたシェアリング社会へ構造変化につながっていくように思います。

6.流通・物流の省人化、無人化

少子化による労働力不足は日々深刻化しています。顧客に価値を提供しているにあたって、物ではなく情報など無形価値については、今後限りなくインターネットを通じた価値提供にとって代わられると思います。皆さんの仕事がなくなるかもしれないのです。しかし、情報価値ではない有形価値の提供については、ネットはあくまで流通の手段として活用することはあっても、価値本体に人の手が深く関わっています。機械化、自動化には限界はあります。しかし、流通・物流は物本体の移動が価値そのものですので、すべてをAIやネットで置き換えられないのです。ただ移動や接客など人手にかかわる部分においては今後相当の範囲で省人化、無人化が加速するでしょうし、その労働力不足を解決する価値に差別化要因が生まれてきます。

7.モノづくりのIoT化

ICT改革とモノづくりは非常に親和性が高く、反面やれているところとやれていないところでは、競争力格差の決定的要因になります。つまりIoT化であったり、AIを活用したモノづくり効率の革新に取り組んでいないメーカーは脱落していくと思います。わが社には誰にもまねのできない匠の技がある、技術力や対応力は大手企業も評価している強みであるとアピールされているところがありますが、いくら良い技術を持っていても、ICTによって外部から一瞬にして参入されて競争力を失うこともあるのです。競合は今見えている同業他社だけではありません。地球の裏側から突如あなたの強みを無力化する商品提案で、一気に市場を奪われることも可能となってきたという認識が必要なのです。e調達や情報システム導入による業務プロセス改革、JIT対応など不断のICT投資によってモノづくりの優位性を高めるためには世の中のトレンドを注視していかなければなりません。

AI、IoT対応は競争力を高めるために必要なものというよりも、世の中のトレンドを方向付けるエンジンになっているという認識を持ち、機動的に未来を読む姿勢が求められているように思うのです。