経営塾で学んだベトナム企業の発展度合いがすごい
JICAの新興国経営人材育成支援事で行っているベトナムでの「経営塾」で講師をなってすでに5年になります。私はビジネスプランや経営実践ワークショップ、ビジネスマッチングの領域を担当しておりますが、ベトナム企業の経営者層が塾生として参加し、10か月間のプログラムを通じ、企業理念から経営戦略、人事戦略、生産管理、マーケティング、財務会計、そして日本研修での企業交流なども含め、日本式経営を深く勉強する充実したプログラムとなっております。
日本でも各地域での企業経営者の勉強会的な活動はありますが、ODA予算もかけ、ここまで充実したものはなかなかないと思います。すでにベトナムでの経営塾は13年目に入っており、卒業した経営者は500名を超えるまでになっています。それらの企業はKEIクラブとしてOB会が組織化され、経営塾で学んだことや体験を経営に生かすべくお互い勉強会を継続的に重ねており、さらに経営の研鑽を行うことで、経営力を日々進歩させているだけでなく、OB会企業同士で新たな企業間提携や新ビジネスが生まれるまでに活動が広がっています。
私自身もOB会でのフォローアップセミナーに招かれて企業訪問や講演を行うことがありますが、卒業生企業の経営の高度化は目を見張るものがあり、最近では「あ、ここまでやっているとは・・・」とびっくりすることも多く、日本の中小企業の現場の実態を知っている私としては、「いや、もう日本の企業でもすでに負けてるところが多い」と思うようなこともしばしばあります。
経営理念の徹底であるとか、生産管理の基本である「5S」や「報連相」も経営塾で徹底して学ぶのですが、これらは日本企業であれば当たり前のこととして、「この実践が日本企業の強みだ、徹底的に勉強して早く実践しないと」という必死の思いを持って卒業していきます。
先日、フォローアップセミナーであるOB企業を訪問しました。本当に新鮮な驚きでした。もちろん多くの企業では「企業理念」や「5S」「報連相」をいろんな方法で実践されています。しかし、この会社はあらゆる職場の壁全面に、大きなバナーを張り巡らしていたのです。しかも単なるお題目だけではなく、ベトナム人がよく理解できるように、噛み砕いてイラストを交えながら、徹底的に考え方の定着を図っていたのです。
ここまで徹底している企業は、ベトナムに進出している日本企業でもあまりありません。経営の必死さを強く感じましたし、経営塾で学んだことを信じて、ひたすら実践に邁進している姿を見て感動しました。しかも5Sやホウレンソウだけでなく、経営管理手法の基本であるPDCAまで大きなバナーで図式化して、社員教育を実践していたのでした。もう完全に脱帽でした。
こういった愚直な取り組みを実践しているベトナム企業は、必ずや急発展していくことは間違いありません。実際、ここの会社は、ベトナム製造業の自動生産ラインを設計、製造して、日本企業を含む多くの製造会社をクライアントに持っています。最近話題のヴィングループの自動車メーカーであるVINFAST社にも製造ライン設備を納入したとのことでした。技術力も高く、しかも日本式経営を徹底した学び、顧客価値を一番に考えるこういった企業が伸びないはずがありません。
日本の中小企業の皆さん、もうすでに追い越されてます! 日本製だから高付加価値で高く売れる時代は一気に過ぎ去っています。早く気づかないと世界では戦えません。