外国人採用における履歴書の読み方
以前のコラムでベトナム人採用で地雷を踏まないためにレジュメ(履歴書)をどう判断すればよいかについて述べました。ただ、詳しくは個別相談をいただければとしていましたが、ご要望もありましたので、私がどうやって採用するべき応募者を見極めているかについて少しご紹介します。
レジュメを見ればだいたいわかるポイント
日本の一般的な履歴書は、ある決まったフォームの構成になっており、学歴と職歴そして自分の強みについてのPR、志望動機といったものが一般的です。しかしそれだけではなかなか本人の姿というものが浮かび上がってきません。
ところがベトナムを含む海外でのレジュメは基本自由フォーマットであり、応募者によってつくりが違うので、その人の性格や文章構成能力まで結構浮かび上がってくるものです。しかも、管理部門の人材やマネージャークラスの人材を採用するときには、ほぼ英語で書かれたレジュメをもとにスクリーニング、面談を行いますので、英語での実務遂行能力もだいたいわかってきます。
だらだらと文章を書いている人よりも、きっちりと箇条書きでまとめてポイントがつかみやすいレジュメを書ける人の方が、確実に仕事の遂行能力は高いというのは間違いありません。
またやたらとあれができる、これもできると自己能力の高さをこれでもかとアピールしている人は、だいたい上昇志向が強すぎて、唯我独尊的に物事を判断することが多く、組織から浮き上がってしまう人が多いものです。
もう一つ要チェックなのは職歴での記述です。日本の履歴書では会社名と部署、役職といった情報しか書かれてありません。しかし海外でのレジュメで一番大事なのが、この職歴記述で書かれてある具体的仕事内容です。どのような経験と能力があるのか、どのような責任がある仕事なのか、ここをさりげなくしかもポイントを押さえた記述になっているかが重要です。面談における質問もだいたい過去の職場での仕事の質、レベルを判断するものになりますので、ここの部分を見れば質問してじっくり話を聞きたい人材かどうかがわかります。
ベトナム勤務時も、そしてコンサルタントとして独立して以降も、多くのベトナム人の採用面談に立ち会ってきました。そのため最近では、面談候補者のレジュメをさっと閲覧しただけで、ほぼ外れか当たりかがわかるようになりました。面談前にレジュメをチェックして有望な人かどうかの順番付けをしますが、面談した結果後でもそう大きく順番を入れ替える必要がありません。
地雷を踏まないためのヒント
以前のコラムで次のような応募者が地雷だったと述べました。
「彼女は37歳、日本企業での職歴が4社ほど、そして現在は大手の日本企業で人事総務部門でアシスタントマネージャーをしていて、今回金属加工メーカーの新たな製造会社の人事総務担当マネージャーに応募をしてきたのでした。」
ちなみに彼女の評価は面談者の中では一番、能力面でも職歴からの経験面でも、人事総務担当マネージャーとして合格ラインでした。でも、私は危ないと感じたのです。支援先企業の方は採用内定を出したいといわれたのですが、「いや、もう少し調べたほうが良い」と伝え、人材紹介会社にリファレンスを取ってもらったのです。結果は、本人は現在勤務中の会社で何かの事情で出勤停止になっているということでした。まさしく採用するべき人材ではなかったのです。
経歴も能力も申し分ない、でも臭ったのはなぜだったのでしょうか?それは彼女の年齢と日本企業での経験の長さ、そして現在のポジションのアンマッチにありました。
面談時の日本語も大変流暢でしたし、日本企業での勤務経験も長く、その分日本人の経営者が喜ぶ答え方をよく押さえていました。上昇志向で能力が高いことよりも、チームワークや報連相による仕事の進め方の大事さをよく理解していることなど、ころっと騙されるツボを心得ていました。
彼女は37歳。年齢そのものは問題ではありません。年齢差別という意味ではなく、むしろ、日本企業で人事総務畑の人材として10年以上働いて、今のポジションがアシスタントマネージャーということに引っ掛かりを持ったのです。これは日本にいるとわからないのですが、だいたいよくできるマネージャー人材は、ほぼ間違いなく30歳までにそのポジションについています。まして転職経験があって複数の日本企業を渡り歩いてきた人事総務の経験者で、37歳にもなってまだアシスタントマネージャーというのは普通ありえないのです。はっきりとした年齢と職責の相関関係というのはないのですが、普通ベトナムの日本企業で30歳でまだマネージャーでない人材は、将来経営幹部候補になりうる人材ではないとみて差し支えないと思います。非常に重要なポジションである人事総務責任者を採用するときには、30歳の時点でどのような職責を任されているかという観点でレジュメを見れば大きく外れはないでしょう。
人の採用、育成は大変難しいです。しかも海外で経営幹部をリクルートして採用する際に、日本の常識でだけで判断するのは危険なことが多いものです。せっかく設立した現地法人がうまく成長発展していくかどうかは、現地幹部社員の能力と資質、モチベーション次第ともいえます。短期間に慌てて採用して地雷を踏んでしまいますと取り返しがつきません。できる限り慎重に、かつ時間と専門家の視点も活用して進めるのが成功の秘訣です。