海外経営責任者に必要な3つの能力
以前のブログ「海外経営人材育成が成長発展の鍵」の続きです。
海外の経営責任者に必要不可欠な能力とはどういうものでしょうか。アメリカの著名なマーケティングコンサルタントのダン・ケネディが経営に必要な3要素として語っているのですが、リーダーシップとマネジメント、スーパービジョン(監督)です。海外経営責任者としてのスキルを考える際にも重要な3要素だと思います。海外経営人材を育成するにあたって、この三要素を実践できる能力を身につける研修や人選の基準を考えるべきではないかと思います。
特に、海外経営では異文化コミュニケーションを前提とした3要素の実践が不可欠です。日本人感覚でのリーダーシップ、日本企業特有の管理体制、性善説を踏まえた監督ではうまく機能しません。しかもこの3要素はバランスが大事です。リーダーシップは抜群だけど、管理体制のしくみ構築には下に任せっぱなしにしたり、忙しいからと監督に力を入れることを怠るなど、どれか1つが欠けるだけでもこの海外事業成功の三角形は崩れてしまいます。
この3要素を実践する能力が、100-50-30ではあっては相応しい経営人材とはいえません。同じ総合計が180点の能力を持った人材でも、60-60-60の人材の方が海外経営には適しているのです。ただ、全ての管理職がバランス人材では経営がうまくいきません。営業部門の責任者はリーダーシップの能力がより求められるでしょうし、経理部門はむしろマネジメントや監督能力が重視されるでしょう。しかし、営業部門や経理部門出身の方が経営責任者になられることもあるでしょう。そのときには、弱い要素の能力をいかにして補完して身につけるか、ここに本人の自覚とともに、会社としての人材選抜と育成のポイントを考えるべきではないでしょうか。
海外で従業員を雇用し事業を立上げても、日々のオペレーションに精一杯で、社内の管理ルールを十分検討して徹底されていなかったり、管理規格を遵守するためのマネジメント研修すらないところが多いものです。例えば電話対応やプレゼンテーションに決まりがあるなら、単に通達を出すだけでなく、文章や図にし、ロールプレイングやリハーサルなどの研修を実施するのは必須です。さらに定期的に業務遂行状況のチェックを行い、ルールが守られているか確かめる必要もあります。経営管理者が全てのルール、プロセスを監督することは時間的にも専門的にも難しいですが、組織を引っ張るリーダーシップ能力とともに、管理体制を緻密に作り上げる能力、そして経営がルール通りに機能しているかモニタリングできる能力、これらの3つの能力をいかに備え、経営を実践できるかに海外経営の成功がかかっていると思うのです。