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ブラックフライデーとプレミアムフライデーの根本的な違い

ブラックフライデーの広がり

皆さん、ブラックフライデーを聞かれたことも多いと思います。「ブラック」というと何か暗いイメージがありますが、元々はアメリカのサンクスギビングデー(11月23日の感謝祭)後の最初の金曜日から始まる一大セールのことです。この日からクリスマスまでのセールスシーズンでは全米で大バーゲンが繰り広げられ、一年の売り上げの半分以上がこの期間に集中することから、消費者向け販売にとっては大変重要な時期になります。今までずっと赤字を続けていても、この金曜日を境目に一気に黒字転換に向かうという意味でブラックフライデーと言われています。

一方、日本でもクリスマス商戦が重要な時期で、だいたい12月初旬からバーゲンが相次ぎます。私も冬物衣料などはバーゲンまで買うのを我慢しています。そこで流通業がいろいろと考えたのです。12月のバーゲンを前倒してアメリカのようにブラックフライデーとして11月23日ぐらいからセール期間を延ばしてみようと、昨年あたりからイオンなどの大手流通やトイザらスがブラックフライデーセールとして仕掛けるようになってきました。日本ではなかなか認知度が上がらなかったのですが、外国人旅行者数もうなぎのぼりに増え、外国発祥のイベントであったハロウィンも、今や日本に定着して、消費を高める効果が出てきていることを考えると、このブランクフライデーも日本でもトレンドになるのではと感じていました。

そして今年です。元々の仕掛人はイオングループであったように思いますが、結構多くの販売業界がブラックフライデーセールと銘打ちバーゲンを展開しているようです。ユニクロはブラックフライデーセールとは言っていませんが、創業祭セールとして大々的に23日から5日間連続の大セールに合わせてきました。その効果ですが、かなり出てきているように思います。昨日の勤労感謝の日に大型小売店舗をうろうろしてみますと、かなりのお客さんが入っていました。ユニクロなどはレジ待ちの列が相当長くなっていましたし、新聞の折り込み広告でもブラックフライデーセールを訴求したものが目立っていたようです。

消費市場を活性化するには、店づくりや商品企画もさることながら、世の中の動きや流行を察知し、流れに乗る仕掛けが大変有効なように思います。ブラックフライデーは何もイオンの専売特許ではありません。多分、この動きを見て大手デパートは来年度以降のセールをおそらく前倒ししてくるでしょう。

現場を知った民間企業の敏感な感度が産業を活性化する原動力のような気がします。例えば、今や当たり前の風景となった正月の福袋セールですが、元々の福袋の由来はいろんな説がありますが、仙台での初売りでお茶屋が始めた福袋という話題がTVで取り上げられ、それがきっかけに多くの百貨店が福袋の販売を始めたと記憶しています。もちろんこんな習慣は外国にはないわけですが、外国でのいろんな習慣を取り入れて商売のきっかけにできそうです。思い返せばクリスマスのケーキや、バレンタインデーのチョコレート、ハローウィンのどんちゃん騒ぎから、そして今回のブラックフライデーまで、仕掛けようによっては消費拡大のトレンドを作れのではないでしょうか。

官製プレミアムフライデーの貧困な発想

一方、同じフライデーの仕掛けでも、プレミアムフライデーは役人の貧困な発想によって失敗したといえるでしょう。もうすでにほとんどの人は記憶から消えているでしょうし、主導した経産省自身も失敗だったというようなコメントをしているようです。もう誰も見向きもしないでしょう。なぜこのような事態になったのでしょうか。

そもそもの発想が間違っています。このプレミアムフライデー導入の目的に「すけべ根性」を入れ込んだことが一番の問題です。関西では「すけべ根性」の言葉がよく使われます。少し嫌らしい響きがありますが、二つの効果を同時に追い求め、結果的にどちらも失敗するという「二兎を追って一兎も得ず」状態になったからだと思います。

その二つの目的とは、「働き方改革」と「消費拡大」と全然違う領域の効果を追いかけたことに問題の根幹があります。働きすぎを少しでも是正しようと、毎月末の金曜日に早く退社することを奨励したのですが、それ自体いろいろ実態とあっておらず、忙しい月末の金曜日にしたのかそもそものの間違いです。企業や職場の実態をわかっていない役人の貧困な発想でこの案を作ったことが問題です。それでも、働き方改革のきっかけにしたい、企業や労働者の意識改革につなげたいという思いは評価できます。

しかし、最大の馬鹿げた施策だったと思うのは、経済界の「すけべ根性」の尻馬に乗せられ、早く退社する人に飲みにきてもらって消費拡大につなげたいという経済活性化の施策の一つに位置付けてしまったことです。労働生産性と消費拡大の課題を無理筋で引っ付けてキャンペーンをやっても効果はでないのは、普通現場で働いている人の常識から判断して当たり前のことではないでしょうか。消費拡大をプレミアムフライデーという形でくっつけて、余った時間で消費してくれるのではということで、少しばかりのクーポンやセール商品を並べても消費が増えるわけはありません。いったい政府はこのくだらない「すけべ根性」のプレミアムフライデーキャンペーンにどれだけ税金を投入したのでしょうか。役人と経団連の年寄だけで話をするのではなく、もっと幅広くビジネスの最前線から意見を吸い上げておれば、こんなことにはならなかったような気がします。

もし、ブラックフライデーを政府が何らかのキャンペーンで支援し、消費を活性化しようとしたらおそらく失敗します。政府は余計なことにかかわって税金を無駄遣いするべきではなく、もっと民間の自由な発想で展開できるよう、規制を徹底して排除することに頭を使ってほしいものです。