ベトナムの変化はフェイズチェンジの段階へ
何か身の回りに変化が起きるときには直感というものが伝わってきます。仕事がら毎年ベトナムに出張で行きますが、そのたびにベトナムの変化をひしひしと感じてきました。特に、ベトナムでの勤務を最後に33年の会社を早期退職し、その直後から独立開業してベトナムに関わる仕事を続けておりますが、ベトナム勤務時代に感じていたベトナムの経済、社会の発展で実感していたより、独立開業してからの5年半の変化は、ずっと生活していないために余計感じるのか知れませんが、出張するたびに階段をステップアップするがごとく、その変化を体感として受け止めてきました。
今年も3月に一週間、そして5月から6月にかけて二週間、ハイフォン、ハノイ、ホーチミンと出張してきました。その後も7月から8月にかけてベトナム人経営者ほぼ100名近くを日本研修で受け入れ、商談会や企業訪問のお世話をしていたので、かなり多忙でベトナムとの接触度合いは普段の年と比較して、結構濃密な関係であったため、ベトナムの発展の度合いも実感としては受けていました。
ところがこの2か月余り、直感としては何か今までとは大きく違っているのです。発展飛躍の度合いが全く異なり、フェイズが変わったという印象を強く感じるようになりました。これはベトナムに実際6月以降行っていないにもかかわらず、日本にいながら何かすごい変化が起きているというのが感覚としてわかるのです。一番大きなインパクトは、米中貿易戦争の影響がベトナムに対して短期的に投資の急増として起きてきているのです。これは単に中国系企業がアメリカへの輸出ルートが事実上閉じられたからということで、製造投資が増えたということだけではなく、香港企業や韓国企業のベトナム投資も目立っているのです。
2019年の1月~9月までの統計によると、ベトナムへの新規投資額だけでなく、企業買収や株式取得なども含めた外国投資を国別に見た場合、香港、韓国の伸び、額が他の国より突出しており、香港は59億ドル、韓国が46億ドルに対し、シンガポールは38億ドル、そして中国と日本がそれぞれ31億ドルという状況です。香港資本の伸びは中国資本とほぼ同じ基盤だと考えても差し支えないと思いますが、韓国の伸びはある意味、韓国経済基盤が危うくなっているうえに、反日反米の政治的動きが経済に与える影響を察知した企業側が海外へ拠点をシフトしていっている様子が伺えます。他国の状況はある程度、政治経済の環境の変化から推察できますが、日本がだんだんと親日国のベトナムでもその存在感が相対的に低下してきているのではないかとの印象を感じるようになってきました。
一方、過去ベトナムといえば、外貨準備高がほとんどなく、いつも貿易赤字構造の中でベトナムドンの低下が恒常的に起きていた国でした。ところが、米中の利下げと元安によってベトナムは一気に外貨準備高を増やしており、過去最高の700億ドルに達しています。また、中国や韓国がGDP成長の鈍化が顕著になってきている中で、ベトナムのGDP成長率も安定的に6%を超え続けており、アジアの中で一番高くなっています。他の経済指標も軒並みベトナムの好調さがうかがわれます。
これらはあくまでデータ上からの印象でしかないので、目で見て肌で感じる感覚というのは、実際に訪問して確認する以外にはないと思っています。今年は今のところ2回しか行けていないのですが、残りの10月から12月の四半期で、ベトナムに4回出張する計画を立てています。来週はホーチミンに診断士の研究会メンバーと視察に行き、日本企業の実際のオペレーションとともに、設備機械の展示会であるMETALEXでの企業の動向を探ってきたいと思います。そして10月にはスケジュールの関係もあるのですが、2回ハノイに出張する予定です。また12月には経営塾講師で―週間三たびハノイです。要件はいろいろ重なっているのですが、実際にこの目で見て肌に感じているフェイズチェンジが正しいのかどうか見極めてきたいと思います。