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ベトナム人経営者の日本研修プログラムで感じたこと

ベトナム人経営者を対象としたODAプログラムの一つとして実践されている経営塾、もうすでに12年以上続いています。当経営塾にJICA専門家の研修講師として6年目からかかわらせていただいております。

何度かブログなどで研修の様子についても情報発信しておりますが、経営塾はJICAのODAとしても、また現地のカウンターパートであります日本ベトナム人材協力センター(VJCC)としても、内外から高い評価を受けております。この経営塾はODAの一環ですので、日本の税金も投入されており、一期で10か月にもおよびじっくりと経営を実践的に学べるものです。日本でも各地で経営塾的な経営者研修は行われておりますが、ここまで内容的にも充実したものはなかなかないものと思います。この10か月間の研修プログラムは終日月曜から金曜までの5日間を1ユニットのカリキュラムとして、経営理念から経営戦略、マーケティング、人事戦略、生産管理、財務会計と私が担当するビジネスプラン・経営実践ワークショップがベトナムで行われることに加え、約2週間の日本研修が組まれています。この日本研修では、JICAや中小機構など公的機関の全面的なサポート体制によって、企業への訪問も組まれて勉強できるだけでなく、日本企業にとってもベトナム企業との新規事業創出に向けた商談会も設定されています。

先月から来月初旬にかけて二十数名が1グループとなって合計3グループがスケジュールを変えてプログラムが組まれています。私は現地でのビジネスプラン・経営実践ワークショップに引き続いて、彼らの日本研修の成果が上がるよう、日本研修コースのリーダーとして、課題設定から企業訪問での学習指導、ビジネス商談会の準備支援、そして最終日の研修総括も担当しています。

研修生の日本研修での気づきへのヒント

現在、第2グループまでようやく終わったところですが、彼らの多くは日本に来るのが初めてというケースが多く、企業訪問だけでなく、町の様子も含めてすべて目にすること、体験することが驚きの連続です。すべてが時間通りに動いていること、町にゴミが全く落ちていないこと、これだけ多くの人が行きかい、車が多く走っているのに非常に静かでクラクション一つ聞こえないこと・・・。あらゆることが目に焼き付いて帰られます。

彼ら一人ひとりは非常に優秀であることは常々感じているのですが、企業経営になるとどうしてもその実力を発揮できない文化土壌があるのです。日本企業の経営のすばらしさを目の当たりにして、我々が目指す姿がここにあると、「今後、経営管理はこうしていかなければいけない」「品質管理を徹底するために人材育成に力を入れていきたい」「5Sを徹底していく」・・など研修総括ではこうしていくぞという決意を多く語ってくれます。

ただ、私はこうアドバイスします。

「皆さんが日本研修で目にした日本社会、日本企業の姿は大きな刺激となったことは間違いないでしょう。しかし、日本の社会も企業も問題を多く抱えています。決して理想の国や企業の姿ではありません。皆さんが感じた日本は、ベトナムの現状と比較してプラスの面しか見えていないということもあると感じてほしいと思います。ベトナムと日本の対の比較だけでは本質はわかりません。逆に皆さんが見た日本の社会、日本企業の問題点は何か、とりわけグローバルな経営環境の変化の中で、今後日本は何にチャレンジしていくべきなのか、ベトナムからみた日本の課題を見通せることができれば、もっと広い視野でベトナム企業が目指すべきゴールとやるべきことがより明確になるのではと思います。」

確かにベトナム企業には課題は多いです。しかし、近年確実に進化を遂げていることを実感します。できることから一歩ずつ取り組むことの大切さ、何をするにしても具体的に誰が何をいつまでに行うかというプランニングの基本を今後の経営のヒントとして持ち帰ってもらうことができたと思います。

今後のベトナム企業の経営力は着実に強くなると感じた日本研修でした。さあ、あともう1グループが今月末からやってきます。全員がベトナムの講座での教え子たちです。経営実践の力をつけてもらい、日本企業とのマッチングにつながればと念願しています。