ベトナム人経営者の真剣な2週間
ベトナムの経営人材育成支援のODAプログラムとして続けられている「経営塾」は年々実績を積み重ねており、私自身も5年前から研修講師として年に一週間分を担当しています。現在4クラスが同時に時期をずらしながら走っており、毎年4週間はベトナムに講師の仕事で出張しています。この「経家塾」ではベトナムでテーマごとに一週間のセッションが合計8本あり、その後約2週間の日本研修を行って最終的に10か月の長丁場での取り組みになります。ベトナムでの各セッションも朝から夕方まで5日間ぶっ通しで行われますので、参加者のほとんどが経営者であるため、仕事の都合をつけながら10か月の研修に取り組むのですから相当大変なプログラムです。
本人も高額の研修参加費を払うのですが、日本のODA予算も拠出されていることもあり、参加者にとっては日本研修もある割にはコスパも内容もよいことから、多くの参加希望者が相次いでいます。当初は、日本にいけるということで参加していた人も多かったようですが、開催回数を重ねるたびに、日本の経営を学ぶことができ、この卒業生が経営に生かしどんどん実績を上げているという口コミの影響もあり、最初は1クラスだけだったのがここ数年で一挙に4つのクラスが走るようになりました。
ODAを総括しているJICAにとっては、国の予算制約も厳しい中、ベトナム人を育成するために単に日本の税金を使っているというだけではその意義はあまりありません。こういった国際貢献活動の成果として、より高い経営力をもった事業パートナーを創出することにより、日本の企業が海外展開するにあたって有益なパートナーとの関係性強化に資するということにつながります。また実際のパートナーのマッチングにもつなげていきたいという思いもあり、ベトナムでの日本式経営を学ぶ研修という位置づけだけではなく、その知識や学びを生かして日本との取引を拡大する機会を日本研修に入れていこうという要請も強くなってきました。
そこで今年からは、私が担当するベトナムでのセッションにおいて、「日本企業とのビジネスマッチング」に焦点を当てた研修の内容を強化し、いかにしてベトナム企業としての価値を訴求するか、日本企業が大事にしている価値観とは何か、どう自社をアピールするか、といったより具体的に日本企業との関係性構築に向けた実践スキルを入れ込みました。また、日本研修では、JICAが総力を挙げて日本企業とのマッチングイベントをアレンジし、マッチングの仕掛けに実績のある中小機構に全面的な協力を得て、かつてない日本研修を実施することができました。
もちろん一回だけのマッチング商談会ではすぐにB2Bの取引などは成約しませんので、今回はそのとっかかりとしていかにして今後太いパイプにしていくかがポイントになります。
16日からハノイ、ホーチミン併せて30名の経営塾参加の経営者を受け入れ、多くの企業訪問や商談会を実施することができ、非常に充実した日本研修となりました。この2週間は極端に暑い日本でしたが、皆さん真面目に頑張っていただきました。昨日が名古屋で最終日となりましたが、一同満足感いっぱいで今朝中部国際空港から帰路につきました。彼らは大変若いですが、経営の神髄について多くの日本企業や日本人から刺激を受けたようです。今後さらに大きく発展していくことと思います。私もコースリーダーとして彼らについて日本研修の課題設定から成果発表まで細かく指導してきましたが、確実に一回りも大きくなったような気がした2週間でした。