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ベトナムで頑張る逞しき日本人経営の中小企業

先週まで2週間のベトナム出張は、ベトナム人経営者の育成プログラム支援がメインの目的でした。最終日に帰国までの時間が空いたこともあり、以前からお付き合いのあるコンサルタントのご紹介で、ホーチミン近郊のビンズオン省にある日系中小企業を3社訪問させていただく機会がありました。

 地場に根差す中小企業の姿

今回訪問させていただいた3社は、地場に根差した事業を展開されている企業で、いわゆる通常の日本企業が海外拠点として経営している法人とは、かなり様相が異なるものでした。ある面、私自身のベトナムでの中小企業に対するイメージを大きく変えてしまうほど、今回の訪問はまさに目から鱗のように大変勉強になりました。

普通、海外展開する中小企業のパターンとしては、日本での本体事業の補完的位置づけから出発しています。日本の技術、モノづくりを海外拠点に移管し、コストダウンして作ったものを日本に逆輸入して国内で販売するか、もしくは日本での得意先の海外拠点向けに販売していくというものが大半です。つまり、大枠は日本の事業と一連托生の事業形態であり、あくまでその事業を拠点にどう販売先を拡大し、現地、日本ともに成長戦略を描くかといったことが主な経営課題です。

私自身も、その視点から中小企業支援の在り方をずっと模索してきました。しかし、今回訪問させていただいた企業は、経営者そのものが完全にベトナムの国、社会に土着(ちょっと言い方まずいですね)していると言うか、事業の発想や経営戦略はほぼベトナムのローカル企業そのものです。もちろん、日本人が経営している企業ですので、5S始めモノづくりの基本はさすが日本企業というようにしっかりしており、日本のモノづくりの神髄を極めておられます。

ところが、普通の日本企業の海外拠点と違うのは、社内は当然ベトナム語、ベトナム人の手先の器用さを生かしたモノづくり、ハンドメイドによる設備機械の自製化など、少しでも低コストで戦うための様々な工夫が会社のあらゆるところで徹底しているのです。ベトナム企業による製品は安いけど品質が問題とよく言われます。しかし、低コストのモノづくりノウハウは、ベトナムローカル企業そのものでありながらも、日本経営の柱である品質や対応の柔軟性といった強みを備えているのです。

いわば日本の中小企業が抱えているモノづくりの困りごとなら、何でも解決できる究極の委託生産先としての能力をもっています。通常、中小企業が海外でモノづくりを行うには、いきなり自社投資で工場を作ることを考える前に、生産を形にしてくれる委託生産先を検討します。しかし、なかなか品質的に、また対応力の点で満足できる委託生産先は見つかりません。したがって日系企業の現地拠点から調達先を探すことになるのですが、「現地に密着した日本企業」ではなく、「現地に土着した日本人経営のベトナム企業」は隠れた外部資源になる可能性があります。

土着日本人経営企業の神髄

またこれらの「土着日本人経営のベトナム企業」は、企業間で密接なネットワークを持っているのを発見しました。そういった企業は非常に対応力もあり、コストのメリットという強みがありますが、フルラインの技術要素を持ってはいませんので、企業間ネットワークが必要です。特に、ホーチミンでは90年代から多くの中小企業が展開していった歴史があり、ベトナムのモノづくりを知り尽くした日本人経営者がいます。そして、彼らがベトナム企業と組んで日本経営を教えたり、相互補完で技術を導入したりしていて、したたかに発展している姿を目の当たりにしました。ある企業の経営者は、元々日本企業の子会社の製造担当の駐在員でした。ところが、ある日その親会社が倒産し、そのまま失業する状況にあったとき、モノづくりのベトナム人の仲間とともに会社を立上げ起業され頑張っておられます。

ただ、全般には経営体力は非常に脆弱です。企業の理念やビジョンをうまくメッセージとして伝える力も弱いです。何でもできるという強みを強調されますが、それだけでは顧客には突き刺さりません。ここをうまくネットワーク化して、日本人経営による委託生産クラスターとして確立できれば、日本企業にとっても大きな発展に繋がる気がします。新たなお役立ちを発見した思いです。