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ビジネスモデルを変えられないメディアの運命

コロナの影響で飲食店業界や旅行業界が大変だという話は連日耳にします。しかしそれを大さわぎして伝えているメディア自身も、劇的な外部環境の変化に追随できなくなって死の淵に追いやられている現実に直面しています。

いまから何十年も前、私が社会人になったころ毎日満員電車に揺られながら通勤しているときの車内風景を思い出します。結構多くの多くの人が新聞を読んでいるか、本を読んでいました。私自身も宅配された日経新聞を手に通勤電車の中で目を通していましたし、帰宅時も夕刊紙を駅の売店で買って、雑学も含めて通勤時の隙間時間を活用して情報を入手していたものです。

ところが今はどうでしょう。新聞を読んでいる人はほとんどいません。だいたい7割ぐらいの人がスマホをいじっていて、2割ぐらいが寝ていて1割ぐらいが本か新聞を読んだりしている感じでしょうか。なかでも新聞自体もだいたい左翼系か宗教系の新聞がいやに目立ちます。

スマホやSNSが完全に情報インフラの構造を変えてしまいました。電車の中の乗客が何をしているのかということだけでも、新たなテクノロジーが私たちの行動様式の変化を起こしていることがわかります。つまり、企業にとってはテクノロジーの進化と消費者の行動様式や考え方の変化に対応するために、いかに提供する顧客価値とビジネスモデルを革新していく べきかが問われます。強い企業、大きな企業ではなく、環境変化に対応できたところが生き残るということについて真剣に取り組まねばならないと感じます。

ところが大きい企業や規制に守られてきた企業ほど、同じ手法で通用していた時代が長くなっていたために、社内風土や行動基準として新しいテクノロジーに対応することに抵抗してしまう業界体質となっています。衰退する道しか残されてないことすら気づいていない悲劇を演じることになります。

転げ落ちる旧メディア業界

新聞を読む人は本当に少なくなりました。いくらネット情報は信頼性が低い、新聞やテレビの情報は信頼できるという人が多いと市場調査の結果を報道して自己満足に陥っているようのがメディアの実態ですが、それならばなぜ発行部数が右肩下がりで年々減っているのでしょうか。なぜテレビの視聴者数が減って広告宣伝費が落ちてきているのでしょうか。

自分たちの報道や番組から消費者がなぜ離れていくのか知らないことが不思議です。提供している情報や番組が消費者を満足させているのであれば、ここまで落ちることはありません。インターネット革新が進むことによって、情報商品のあり方が変わってきているのです。情報をありのままに伝えることよりも、自分たちの思想や主義主張に基づくストーリーありきの偏向記事や、番組づくりに固執する限りは市場を見失うことにいい加減気づいてほしいのですがまず無理でしょう。政府や大企業を批判さえしておれば読者や視聴者は支持すると信じこんでいることが「痛い」のです。メディアの一番の問題は周囲を批判することが自分たちのミッションだと信じ込んでいる一方で、自分たちへの批判については全く反省しない姿勢にあります。

つまりオールドメディア自身には「マーケティング」の発想がほとんどありません。またその発想が貧困であるため「ビジネスモデル」の革新を行うことができないのです。

「そもそも、自分たちの理念は何だったのだろう? 今、利用可能なすべてのテクノロジーと市場機会を考慮したうえで、その理念に生命を吹き込むには、何ができるのだろう?」と自問した自分たちの誌面と番組を振り返らない限り先は見えています。

メディア広告費と新聞発行部数の推移から見えるもの

2019年はメディア業界に激震が走りました。インターネットの広告宣伝費が初めてテレビを追い抜いたのです。テレビが広告媒体としての中心的役割を終えて下落傾向が顕著になってきました。2020年の結果は3月末ぐらいに公表されると思いますが、コロナの影響を踏まえこの傾向はさらに加速したものと思われます。

新聞に至っては発行部数の減少傾向に歯止めがかからず、広告費収入も年々下がり、遂に朝日新聞や毎日新聞は巨額の赤字を出してリストラが加速しています。特に地方はテレビも新聞も見るも無残な経営状況に陥っています。

とりわけ目を覆うのがコンテンツの劣化です。自分たちはその劣化に気付いていないのです。自分たちの主義主張ばかりやっているプロパガンダと広告宣伝が約半分ほどを占めている新聞をカネを支払って読みたいとは思いませんし、朝から晩まで同じような煽りばかりのワイドショウやグルメロケ、タレントをひな壇に並べて喋らせているバラエティ番組など見る気もしません。

発信する情報の質低下が購読者、視聴者離れを起こしました。その結果、広告媒体としての費用対効果面での生産性の低下につながりました。一方でテクノロジーの進化によって、ネットは費用対効果を測定できる一方で、紙媒体や一方向の放送媒体では正確に広告効果を測定できず、かつ時間とコストがかかるという媒体としてのデメリットから逃れられなくなりました。

自分で自分の首を絞め、市場環境に変化に自分たちのビジネスモデルをどう革新していくのかの解を示せない限りもう先はないと思います。このグラフで示している傾向を反転させるための処方箋はどこにも見当たりません。ということは、オールドメディアは情報媒体から駆逐されていく運命にありませす。

顧客が求める商品価値を満足いただく価格とプロセスでお届けして、やっとお金をいただけるというビジネスの基本を改めて思い起こされます。特にコロナで市場環境は劇的な変化を見せています。この変化は自分たちのビジネスにどのような影響があるかを今一度振り返っていきたいと思っています。

リモートで働くことが普通となり、営業のあり方も価値提供のチャネルもオンラインが当たり前になってきました。一か所に集まって仕事をする事務所はもういらない時代となりました。社内コミュニケーションも入手する情報もオンラインで受発信することが主体となりました。コロナが終息したとしてもリモートでの仕事の進め方はもう元に戻りません。

こういった変化にあって、大量の紙を浪費する新聞を刷って宅配するビジネスモデルでは通用しなくなります。しかも記事の信頼性が低下して読者離れを起こした新聞が新規購読者を獲得することはほとんど無理でしょう。共同通信から記事の提供を受けて印刷している地方紙などは媒体としての価値は低下する一方です。そういったメディアに広告する意味がどんどん薄れ、業界として負のスパイラルから逃れる術はほとんどないでしょう。

テレビ局も規制に守られて新規参入もほとんどない中で、電波使用料という対価コストも満足に負担せず、ぼったくりの広告宣伝費収入に安住していました。最近の放送メディア自身の体質と番組の質劣化が視聴者離れを引き起こし、結果としてスポンサーが広告宣伝投資をテレビからネットへ重点シフトしだしました。

新聞もテレビも過去のビジネスモデルはもう限界です。今は規制頼みで必死に抵抗しているようですが、電通もエンタメ業界も業績悪化の影響によって自社ビルの売却などリストラが加速しています。今後生き残るためには、今一度どの分野に特化するのかというメディアとしての立ち位置からの見直しと、自分たちが提供する情報価値を極めることで歯止めをかける以外にはないでしょう。

でも、今までメディア自身の経営苦境を正面から分析した記事や番組すら見たことがないので多分無理でしょうね。