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バンコクの変貌を体感

 

今回久しぶりにタイのバンコクに行ってきました。最近ではほとんどベトナムに関連した仕事が多かったため、東南アジアでも他の国に行く機会が減ってしまっていました。今回改めてやはりベトナムと日本だけ見ていては国際経済のダイナミズムな動きからずれてしまうという実感を持ちました。まして日本国内だけで事業をやっている企業にとって、海外事業と直結した成長発展戦略がいかに大事かということを素直に感じてもらうためにも、コンサルタントとして国際的視野の広い経営感覚を磨く必要があることを痛感しました。

3年ぶりのバンコク訪問で感じたこと

振り返ってみますと、仕事で直接タイに関与して何度か訪れていたのは今から3年前になります。そのときは企業の海外展開支援が目的であったため、郊外に行くことが多く、バンコク市内をつぶさに見て回ることがあまりなかったのですが、今回は先週から今週にかけて土日を挟んで結構自由な時間を持てましたので、観光を含めてじっくりと町の様子を見ることができました。

ちょうど今大きな問題となっている新型コロナ肺炎の蔓延が懸念されている時期ですし、あるニュースでは中国国外ではバンコクが一番危険な都市だとも言われていました。確かに王宮や寺院などの観光地や商業施設でも、マスクを着用している人はざっとみて7、8割といった感じでした。でも日中は連日32~34度ぐらいまでに気温が上がるので、とてもずっとマスクをしていられる状況ではありませんでした。それでもあちらこちらで中国語が聞こえてくるので、あまり影響は受けていないのかなと思ったのですが、地元の人に聞くと、中国人の観光客は激減しているとのことです。「実際これで?」と思ったのですが、通常は観光地に来ている観光客のだいたい7割が中国人(少しオーバー気味かも)とのことのようでした。スワンナプーム空港に出迎えに行った時も、確かに中国人の団体客はいなかったですし、到着便のボードを見ても中国からの便が軒並みキャンセル表示となっていました。

最近の動きはこの影響が顕著に出ている特殊な状況かと思いますが、中国の影響の大きさはベトナムを遥かにしのぐぐらいです。シンガポールやマレーシア、インドネシアなどでは歴史的にも華僑による経済に与える存在感が大きいのは頷けるのですが、正直今のバンコク市内を見ると、あらゆる地域がチャイナタウン化しているといっても過言ではないほど中国語があふれていました。ベトナムはそこまでではないですね。

さらに、3年前と比較して大きな変化を感じたことがあります。それは都市の再開発が急激な勢いで進んでいることです。バンコクは以前から巨大な先進都市であることは間違いありませんが、その上と下との振れ幅が半端ではありません。経済発展過程においては、貧富の格差が大きくなるのはある面仕方がないと思いますが、うまく経済運営を行わないと、国全体の秩序が乱れる原因ともなります。日本ほど格差を嫌い妬む感情の持った総中流的な経済構造を持った国はあまりないと思います。その結果、国全体の生産性が低い方へ流れることにもつながっているように感じます。

タイに限らず新興国の経済発展は、急速な勢いで変貌を遂げています。そのリード役となっているのが、ダイナミズムな成長企業であり、巨大資本でもあるのです。ところがそういった先進性のある新興国の企業の発想や行動力に、今の日本企業はまともに戦えていけるのでしょうか? いつまでも日本は新興国を支援する立場ではなくなっていきます。むしろ新興国のトップ企業とまともに競争して勝てなくなってきている実態に気付いているのかと暗澹たる気持ちになりました。

「日本企業はコストが高いから価格では競争できない、我々は品質で勝負するんだ、だから安物の中国製とはまともに勝負しない」と言っていた企業も、もはや中国にはモノづくりでは勝てないどころか、新たな価値創造を生み出す気力もパワーも負けてしまっているのです。今後日本経済は何で勝ち残れるのでしょうか? 大企業、中小企業に限らず老衰で死にかけている企業を生き延びさせるための補助金事業では、国際的にもはや通用しなくなっているのです。

タイのダイナミズム

バンコクの街を歩いていると、あちらこちらで屋台や露店があったり、ナイトマーケットを覗くとすごい数の商店が軒をひしめき合って活気を強烈に感じます。これはベトナムや他の新興国とも共通なところがありますが、確かに売られているものの品質はピンキリではあります。しかし、全体的に安いだけでなく、その集客力のすごさは日本の商業施設とは比較になりません。もちろん商売で大金持ちにはなるのは難しいでしょうが、この国では生きていくだけなら何とでもなるということも感じました。

基本的な活気あふれる商売の現場とは別に、3年前と大きく変貌を遂げているバンコク経済を実感したのが、都市の再開発であり、交通インフラの急速な整備です。以前から高層ビルが林立しているバンコク市内ですが、以前は都心地域がメインでした。今や急速に郊外に広がってきています。しかも大型の複合施設やタウン建設などの再開発が一気に進められているようです。

今から約1年前にチャオプラヤ川沿いにICONSIAMという複合型商業施設がオープンしました。王宮を挟んで反対側にあるので、どちらかというと市内西側の郊外の位置にあります。しかしここには高島屋も入り、川の東側から無料の船でどんどん客を運んでいて、連日多くの客が押し寄せています。正直ここの施設を見て驚きました。高級ブランドの店が多く入っているだけでなく、特徴あるアジアンマーケットから構成されるタウンを作り上げているのです。あまり日本ではこのレベルの魅力ある商業施設はあまりお目にかかれません。一見価値ありですね。

もう一つびっくりしたのがバンコク市内の地下鉄網です。今、バンコク市内は新線が開通し、どんどん郊外へ鉄道網が伸びています。それに合わせて街並みが変貌しています。3年前に出張するときに買っていた2017年度版の地球の歩き方の本は全く役に立ちませんでした(少なくともバンコク市内移動において)。当時は高架上を走るBTSスクンビット線とシーロム線、そして地下鉄のMRTが一本と空港からのエアポートリングができたところでした。当時のMRTの駅の数は18でした。日本からのODA支援もあり昨年一気に西側で延伸されて環状線になっていました。中心部の有名寺院はMRTで行けるようになりました。

びっくりですがこの路線図は将来のバンコクです。すでに鉄道整備計画が進んでおり、2029年までにここまで整備される予定なのです。今は既にドアンムアン空港へも延伸工事がほぼ完成しており、スワンナプームと電車で直結されるのです。総延長整備距離はなんと515キロとなり、東京にも匹敵する規模になるのです。これに合わせて不動産市場も活性化されるでしょうし、地獄といわれるバンコク市内の交通渋滞の状況も大きく変貌していることは間違いありません。

これ、皆さん知ってました?

日本にいてるだけではこのダイナミズムは体感できませんね。