24時間テレビにみるチャリティ番組の問題点
毎年夏休みの最終週になると日テレ系列で24時間テレビが放送されます。今年で40回目ということです。「愛は地球を救う」というコンセプトで、24時間ぶっ通しでチャリティ番組を放送して視聴者から多くの募金を集め、毎年10億前後から15億ぐらいの募金が全国から寄せられるようです。集められた募金は障がい者支援のための車いすやミニバンなどが寄贈されてきました。テレビメディアがその影響力を行使して、チャリティ番組を行うことの意義は大きいと思いますし、多くの国民の協力を得るためにタレントをパーソナリティ(この意味は英語で通じるのですかね)として司会させたり、ドラマ番組を作ったり、理由はよくわかりませんがマラソンさせています。
番組の主旨については、メディアの社会的責任を果たす活動の一環として十分理解できます。ただ、国民の有限な資産である電波を使って、わざわざ24時間も行うべきものなのか、また一番腑に落ちないのは、この24時間テレビという番組企画を通じて、放送局自身やタレントが「儲ける一大事業」という本質にチャリティとしての欺瞞性を感じてしまうことにあります。
もしこの番組の制作費すべてを放送局が負担し、かつ出演するタレントもチャリティの主旨に賛同して無報酬で参加することで構成され、番組スポンサーの広告費用と視聴者の募金すべてが寄付されるのであれば、私は心からこの番組に賛同して募金を積極的に行っていたと思います。ところが、いろいろと調べてみると、この放送局はチャリティというよりも利益を上げるためにやり続けているのではないかという疑問が出てきました。しかも、番組企画の中身も、障がい者が抱えている問題を健常者の上から目線で、いかにもかわいそう、お涙頂戴的なものばかりが並ぶようになってから、数年前から全く見ないようになりました。ある年だったと思いますが、足の不自由な障がい者に無理やり何かにチャレンジさせて、頑張って目標を達成させる様子を延々とカメラに収め、本番で感動と涙を呼ぶような番組ばかりが並び、私はものすごく嫌な気分になりました。なぜわざわざ障がい者を登山させたり、遠泳させたりしてする必要があるのでしょうか。番組企画するときには、全国でハンディを抱えて頑張って生きている人を探しだし、無理やり絵映えのするようなことに挑戦させていることを見て吐き気を覚えたものです。基本的にテレビの絵は意図的に作られたもので、チャリティという高邁な精神はどこかに飛んでしまっている欺瞞性を見てとれるのです。
普通、ミュージシャンなどがチャリティコンサートをやったり、外国でチャリティ番組をやるときには、だいたい出演者は主旨に賛同して無報酬で行います。入場料収入やスポンサー料から必要経費を引いた残りが寄付されるのです。ところが、この24時間テレビの実態には大きな疑問があります。そもそも24時間テレビを放送した放送局自身はいったいいくら寄付しているのでしょうか。いろいろ調べてみたのですが、募金金額についての報告はあるのですが、放送局や企業の寄付については全く報告がないのです。他のチャリティでは、マッチングという形で集まった寄付と同額を企業側が寄付に足して、倍金額を寄付するというものがありますが、少なくとも24時間テレビではこのような形にはなっていないようです。
どこまで検証できているかわかりませんが、実際にはこの24時間テレビのスポンサー料は単価が高い、つまり放送局にとっての売り上げが大きいといわれています。つまり通常の番組放送一日あたりに得られる収入よりも大幅に増加するのです。そして、番組制作を担当する下請けも儲けが大きくなり、同じように出演するタレントのギャラも多額の金額が支払われるといいます。24時間テレビに明石家さんまや北野武、タモリといった超有名タレントが出演しないのは不思議だと思っていました。彼らはギャラなしであればいくらでも協力して出演するという意思はあるといっていたようですが、どうも放送局側がビッグタレントが無報酬であれば、他の下のクラスのタレントまでギャラなしになってしまい、番組ができなくなってしまうので実現しないみたいです。実際、タレント個人が無報酬で協力したいといっても、そもそもタレントは芸能プロの商品には違いないので、芸能プロの経営という観点から無償というわけにはいかないのだろうと思います。タレントにギャラを払って番組作りをしなければならないのはある程度理解できるとしても、放送局自身はそれら経費を引いて最終的に得られた営業利益全額を寄付しないと欺瞞と言われても仕方がないと思います。ある一説によると、日テレは24時間テレビを通じて一日で20億もの利益を手にするとのことです。スポンサーもチャリティ番組への広告でイメージが上がるので単価の高いスポンサー料を負担しても元が取れ、高額のギャラをもらえるタレントや芸能プロも仕事が増え、番組制作会社も高単価の制作料を手にして、放送局もウハウハの利益を上げるのです。是非、放送局、芸能プロ、タレント、番組制作会社それぞれの寄付金額を公開していただきたいものです。
結局、視聴者が騙されてもってきた貯金箱と障がい者の不幸をダシにして金儲けしている連中が作っているのがこの番組のリアルな姿ではないでしょうか。最近は24時間テレビそのものを見ることはないのですが、今放送中なので少しチャネルを合わせてみました。今年は何か~告白~というテーマのようですが、あまりにも酷いです。人に言っていなかったハンディキャップを告白するとか、兄の子供を引き取って育ててきた女性がその5歳の子供に自分は本当のお母さんではないと告白するとか、癌をわずらい入院するにあたってその病名を子供に告白するとか、いったい何の意味があるんでしょうか。TVメディアの質の劣化をヒシヒシと感じます。
最近はテレビの劣化だけでなく、新聞、ラジオ、週刊誌など既存メディアが特に若年層から見放されている実態をどこまで理解できているのか、メディアの問題点が頻繁に取り上げられるようになってきました。物事の本質を見る力を養いたいと思います。