人を雇用するより業務の外部委託のメリット
人手不足が企業経営にとって深刻な影響を与えています。採用しようとしてもなかなか人が集まらない、仕事があるのに人が足らないため受注することができない、サービスや店舗など人がいないと店を開けることができない。とりわけエッセンシャルワーカーの分野では労働力が確保できなくなることに加え、残業規制が強まったことで、企業そのものが立ちいかなくなりつぶれるところも増えてきています。
しかも円安で物価上昇が進み、その環境下で人手が足らないならもっと賃金引上げをしていかないといけないと、政府の補助金でも、賃金引上げ枠を設定して、従業員の賃金を引き上げた企業が補助金を申請するときに審査を優遇するというような政策を仕掛けています。
一方で働き方改革の名のもとに、残業時間の規制を厳しくすることで労働力不足に拍車がかかっています。さらにインボイス制度の導入で小規模事業者に対する実質増税や税務管理の複雑化によって生産性が下がるだけでなく、社会保険の強制加入の範囲を広げることで、企業の負担はますます苦境に陥っています。
人材を浪費している大企業の罪
ヒトという経営資源は企業経営にとっては極めて重要です。人が確保できないと事業が成り立ちません・・・本当でしょうか? 私自身、経営コンサルタントとして企業経営における人材育成の重要性について説いてきましたし、人を育て事業を次の世代に引き継ぐことこそが企業の社会的責任であると伝えてきました。
しかし「労働力希少社会」が到来している現実を直視したとき、社会全体から人材をどう効率的に育て活用するかという視点が必要であるという思いが強くなってきました。
人口が減少している社会において、生産性を高めていくには、人材を企業一社に囲い込んでいては成長発展は望めない時代になってきたと思うのです。特に大企業は人材の能力をフルに活用できているとはいえません。社員として雇用しているがゆえに、無駄な仕事を作ってはいないでしょうか。
前職で勤務していた企業は大企業で、定期採用で選抜されて入社した社員の多くは確かに優秀な人が多いのは事実です。しかし会社としてそれら優秀な人材を使い切れず、能力があるのに窓際族として追いやられ、結局早期退職で辞めていく人がたくさんいるのです。ところが退職した人が中小企業に転職した途端、いきいきと実力を発揮する事例を数多見てきました。本当に大企業は社会的人材資源を浪費しているのは罪であると思います。
人を雇用するより業務を外注化することのメリット
一般的に仕事が増えて利益を確保するためにどうしても人が必要となるので、特に中小企業は何とか給料を上げても新規に雇用しようとしますし、労働条件の低さや仕事のやりがいなどから離職する人も多いので、常に人材不足に陥りがちです。
しかしここで考えてほしいのが、人を雇用することは経営的に正解なのかどうかということです。
人を採用すると当然人件費がかかります。給料に残業代、賞与、交通費、諸手当、社会保険料の半分、教育訓練費、福利厚生費・・・。問題は直接人件費といった固定費が増えるということだけではなく、給料計算や保険手続き、教育など人がいることで発生する管理業務の膨大さによる生産性の低下の方に着目してほしいのです。
販売する商品を構成する価値の中で、人が生み出す付加価値を例えば一か月30万円だとします。その付加価値を踏み出すための人材に給料を20万払ったとしても、社会保険や手当、福利厚生、教育費を加えると25万の人件費がかかると仮定します。ところが人を使うための管理部門の費用や上司の管理職手当の相当分として管理業務を配賦すると35万になってしまうというのが、今の日本企業の生産性の低さにつながっています。
昨今、業務は専門細分化されるにつれて外注化が進んでいます。間接業務を専門外注するだけでなく、開発や製造、営業まで外部へ業務外注するビジネスモデルで差別化する時代になってきました。社員を採用して一から育てていくよりも、フリーランスや外注を積極的に活用することの方がはるかにメリットが出てきているのです。
例えばある業務を外注したとします。業務に対する契約になりますので、社内の管理業務負担は激減します。残業を管理する必要もありません。社員の労働時間を埋めるために仕事を作る必要もありません。プロと契約するわけですから教育訓練費もいりませんし、福利厚生費も不要です。社内の労務管理から解放されるのです。さらに一番大きなメリットは社員に払っている社会保険料の負担が要らないことに加え、業務委託契約に消費税が含まれますので、仮払い消費税分が控除されるため、企業として納税する消費税が削減できるのです。
人手不足に悩んでいる企業経営者の皆さん、今社員や経営幹部が行っている業務を外注に置き換えることから考えてみませんか。経営コンサルタントも使い方ひとつで大きな付加価値を生み、人件費や管理費を削減することが可能となります。
例えば、経営コンサルタントに顧問料として月額20万で契約したとします。消費税を入れても22万です。ところが新入社員を一人採用しても、専門性がまだ不十分な人材に20万の給料を払い、残業や社会保険料、福利厚生、教育訓練費用だけでなく、社内の管理業務費を含めると35万にもなるとすると、生み出す付加価値という視点で業務だけでなく経営管理の外注メリットも感じてもらえるのではないでしょうか。